昨年11月14日(木)~17日(日)、新藤外務大臣政務官はウラジオストクを訪問し、凍結されていた日本の対露非核化協力の今後のあり方を考えるため、退役原潜解体の現場の状況を把握した。
帰国後、新藤政務官は直ちにウラジオストック訪問の成果をもとに日露非核化協力プロジェクトの推進についての提案をまとめ、川口外務大臣、茂木、矢野両副大臣等に説明を行い、外務省の方針とすることで一致した。その後、外務省内で事務当局と詳細を詰め、自ら橋本、森両元総理、山崎幹事長、麻生政調会長、堀内総務会長、安倍官房副長官ら政府・与党の要路に働きかけ、強力な支持を得た。更に、昨年末イワノフ外務大臣とともに来日していたロシア外務省のロシュコフ次官にもロシア側の体制整備を働きかけ、快諾を得た。
なお、新藤政務官は、本プロジェクトを効果的に実施するにはシンボルネームが必要だと提案。新藤政務官が視察をおこなった、退役原潜解体を実施している”ズベズダ(ロシア語で「星」の意味)造船所”から名前を取って、プロジェクト名を「希望の星(ズベズダ・ナデージュディ)」とすることを提言した。
新藤政務官の提案は、1月9日(木)~12日(日)にロシアを訪問した小泉総理大臣とプーチン大統領との首脳会談で取り上げられた。その結果は、両首脳が日露関係の戦略的・経済的重要性につき共通の認識を確認し、両国関係を幅広い分野にわたって発展させていく上での共通の指針となる「日露行動計画」の中に反映された。
更に、小泉総理大臣が11日にモスクワのクルチャトフ研究所で行った講演の中で、退役原潜解体事業を「希望の星」と名付けたいと発言、新藤政務官の提案が日露両国首脳に支持され、今後本格的に動き始めることとなった。
◎新藤政務官の日露非核化協力プロジェクトの推進についての提案(平成15年12月)
1.ロシアへの提言
●非核化協力事業推進のためには、実施面の強化が不可欠。
日 本 側:外務省内に非核化事業推進チーム(調整官及びスタッフ)を設置。
在ウラジオストク総領事館に担当官を配置。
ロシア側:権限をもつ調整官の指名及び関係省庁連絡会議の設置を要請。
日露両国:非核化協力委員会の下に「実施タスクフォース」(両国の調整官で構成)
を設け、日露一体となって、集中的に取り組む。
●当面の重点協力事業は、極東ロシアの退役原子力潜水艦解体とする。
●本プロジェクト名を「希望の星(ズベズダ・ナデージュディ)計画」(仮称)
とし、日露両国の友情と協調の証とする。
2.背景
○非核化協力の枠組(日露非核化協力委)に日本は約200億円を拠出。
約40億円は液体放射性廃棄物処理施設「すずらん」(2001年引渡)に使用。
約160億円が未執行。
○41隻の退役原潜が極東海域に放置されており、日本海の環境汚染の重大な懸念。
○極東支援強化の観点が重要。カナナスキス・サミットにおいて合意されたG8グローバル・パートナーシップ (G8総額200億ドル) が本格化し、明年エヴィアンサミットで我が国の更なる資金コミットが求められる可能性あり。
◎日露行動計画(平成15年1月10日、モスクワ)
(3.国際舞台における協力:「戦略的パートナーとしての対話と行動の推進」(軍備管理・軍縮・不拡散の分野)の中で)
両国は、ロシア連邦における核兵器の廃棄に関する協力のために設置された日露委員会の枠内で決定されたプロジェクトの実現を加速化するため、活動の調整メカニズムを強化する。両国は、ロシア連邦の極東地域の退役原子力潜水艦解体プロジェクトの着実な実施を確保する。
◎小泉総理大臣演説(抜粋)(平成15年1月11日、クルチャトフ研究所、モスクワ)
(「非核化に向けた日露の協力」と題し、20世紀の負の遺産である大量破壊兵器や退役原子力潜水艦などを、世界の平和と安全のため、地球環境を守るために早急に片付けていかなければならないと述べ、G8グローバル・パートナーシップやこれまでの日露非核化協力について触れた上で、)
しかし、その後、退役原潜解体の実施には、困難が見られました。日露双方は、どのようにすればこうした困難を克服し、実施を促進できるかについて、協議を重ねました。その結果、この度、日露合同で実施促進のためのチームを作り、日露が一体となってこの重要な案件にあたる体制を作ることになりました。
私は、この事業を、「希望の星」と名付けたいと考えます。これは、これからの長い道のりの第一歩です。極東海域の環境を守るため、退役原潜解体協力を更に進めていきたいと考えます。