今号では最新の経済状況をご報告します。
企業部門は引き続き、経常利益・営業利益ともに過去最高を更新し、投資意欲も旺盛であるなど好調であることに加え、家計部門についても、4‒6月期のGDP速報を見ると、実質雇用者報酬が約3年ぶりに前年比プラスに転じ、実質個人消費が5四半期ぶりの前期比プラスとなるなど、個人消費に持ち直しの動きがみられること、などを踏まえたものです。
2024年4‒6月期の名目GDPは、年率換算で史上初めて600兆円を超えました。我が国経済を振り返ると、名目GDPは、1973年度に初めて100兆円を超えて以降、約5年ごとに100兆円ずつ増加してきました。
しかし、1992年度に名目GDPが500兆円を超えてから、我が国経済は、長引くデフレや金融システム危機、リーマンショック、東日本大震災、新型コロナなど、様々な困難に見舞われてきました。この結果、長期にわたり、名目GDPは500兆円台での推移が続いてきました。
アベノミクスを開始した2013年1‒3月期には502兆円であった名目GDPは、2017年度には550兆円を超え、さらに、岸田内閣の「新しい資本主義」の取組を進めた結果、今回、32年の長きを経て、600兆円を超えるに至りました。これは新しい経済ステージの実現に向けた一里塚であると考えています。
また、名目設備投資額については、昨年の1‒3月期に100兆円を超え、今年の4‒6月期には106兆円と、1991年以来33年ぶりに過去最高を更新しました。
こうした設備投資のうち、約2割は研究開発投資です。企業の研究開発投資額は、2024年度の計画でプラス8.7%と、引き続き高い投資意欲がみられます。
研究開発は、将来の成長の源泉です。OECDの調査によれば、日本のこどもの15歳時点での数学的、科学的リテラシーは、男子・女子ともに、OECD加盟国中1位であるなど、研究開発のポテンシャルは高いと言えます。
こうした潜在的な能力の高い人材が存分に力を発揮し、研究開発投資が成長やイノベーションにつながるよう、AI時代に対応した高等教育における高度専門人材の育成、企業における組織マネジメントの改革や経営者のリ・スキリング等を進める必要があります。