「川口のまちの悲願」として私が手掛けてまいりました「川口駅の中距離電車停車」が、長年にわたるJRとの交渉を経て、ついに実現へと向かうことになりました。
今号では、これまでの経緯と、なぜ私が川口駅の中距離電車停車をすすめてきたのか、そのねらいと期待される効果、国策と連動し た新しいまちづくりの動きをご紹介します。
併せて、国と地域の連携により推進される「川口の未来を拓く新しいまちづくり」に向けた動きをご紹介させていただきます。
▶川口駅への中距離電車停車、ついに実現へ◀
本年2月、私は奥ノ木川口市長、立石・永瀬両県議、宇田川自民党市議団長らと共にJR東日本本社を訪れ、担当の伊藤常務をはじめ幹部との協議を行い、JR側が示した川口駅に中距離電車を停車させるための計画案に基本的に合意することとしました。
2022年11月に交わした川口市とJR東日本との協定に基づき実施された調査結果が本年1月に示され、川口駅に停車させる路線を「上野東京ライン」とし、ホームの新設、駅舎の改築とデッキ利用の考え方、建設費用の概算などの川口駅再整備計画(案)が明らかになったことを受けたものです。
今後は最終決着に向け、具体的な計画案や事業費等の精査、市が負担する費用範囲の協議などが進められ、今年度内の市とJRによる基本協定締結を目指すことになりました。
▶「まちの悲願!」、川口駅の利便性と通勤安定性向上のために◀
都心に近く、まちの発展が大きく見込まれる川口市において、都市機能上の最大課題が「川口駅の利便性と通勤の安定性の向上」です。
川口駅の一日の乗降客は14万人に達し、大宮、浦和に次ぐ県内第3位です。(浦和駅に湘南新宿ラインが停まるまでは2位)しかし、浦和駅には京浜東北線に加え宇都宮線、高崎線、湘南新宿ライン、上野東京ラインが停まりますが、川口駅には京浜東北線一本のみです。
川口駅の朝の通勤時間帯の混雑は限界を超えており、都内の山手線で事故があっても、京浜東北線はノロノロ運転となり、超満員状態で川口駅は通過、改札口は封鎖され、お客はデッキ上にあふれ出します。
電車の遅延は週に何度も常態的に発生しており、さらに大きな混乱も不定期に頻発しています。
私は、朝の通勤混雑の解消とダイヤの安定、利便性の向上は街の魅力に直結し、交通機能の向上を図ることは、川口市発展に向けた死活的重要事項と考えています。人口30万以上の街で急行電車が停まらないのは川口だけであり、この実現こそが「まちの悲願」となっているのです。
▶川口駅に中距離電車の停車を求め、JR 東日本と交渉◀
このような厳しい状況を何としても改善したい、との想いから始めたのが「中距離電車の川口駅停車を求める」運動です。
川口駅の機能向上は市として昭和の頃よりJRに対し幾度となく行ってきましたが、京浜東北線の川口駅始発、東北・高崎線の川口駅停車などの要望に対し、その都度、工事が出来ないなど技術的な理由で否定されてきました。
私が「湘南新宿ラインなど中距離電車の川口駅停車」に向けて、JR東日本と予備的交渉を始めたのは2005年の秋からでした。当初のJR側の回答は誠につれなく、これまで同様、「出来ません」の一辺倒でしたが、技術的工夫も含め提案し、粘り強く交渉を重ねた結果、「技術的には工事可能だが、列車の運行上、停車は難しい」というところまで問題を絞ることが出来ました。
そこで、2008年には地元選出衆議院議員として正式な要望を申し入れ、2009年と2011年には自民党の県・市議会議員団と共に署名活動を行い、約4万人の署名をJRに提出しました。
2013年に総務大臣に就任した頃より、自民党・公明党議員団と共に国土交通大臣への要望も行っています。2014年からは川口市長に就任した奥ノ木市長も同行してくれ、川口市としてのより強力な意思も示されるようになりました。
そして交渉を始めて15年目の2020年、遂にJRより「中距離電車の川口駅停車は、速達性や混雑の影響が少なからずあるものの、技術面からは川口駅にホームを設けることは可能」との前向きな方針が正式に示されたのです。以上の状況を踏まえ、私は、「川口駅と周辺の活性化のための検討委員会を市に設けてもらうので、JR 本社もぜひ一緒に参画してほしい。」との要請を行いました。
▶「川口駅周辺まちづくりビジョン」策定◀
こうした経緯で始まったのが「川口駅周辺まちづくりビジョン策定検討会」です。その目的は「川口駅に中距離電車を停車させる」ことを前提に、東口の旧そごうビルや旧マルイ跡地など低未利用地の有効活用など、鉄道駅改良と駅周辺のまちづくりを一体的・複合的に利用し、新しい川口の魅力づくりに向けたビジョンを策定することです。
メンバーには、日本を代表する建築家でありオリンピックスタジアムを設計した隈 研吾氏、日本のIT/DX(デジタルトランスフォーメーション)の第一人者である坂村 健元東大教授、日本で初めてまちづくりに関するコミュニティ・デザイン学部を創設した関西学院大学の山崎 亮教授、といった我が国トップの専門家に加わってもらいました。
こちらの3人は、私が総務大臣の時に総務省に設置した「地域の元気創造本部」の主要メンバーであり、かねてより懇意にしているブレーンの方々であり、責任をもって市に推薦しました。
その後、精力的に検討が行われ、2021年10月には、隈 研吾氏、坂村 健氏の両氏に初めて川口市に来訪いただき、まちづくりの方向性について基調講演を行っていただきました。
このような新しい観点からの検討も加えられた結果、2022年3月には「川口駅周辺まちづくりビジョン」が策定され、川口駅への中距離電車停車を念頭に置いた「交通拠点リニューアルプロジェクト」が優先的に取り組むべきプロジェクトの第一番目に掲げられました。
単に電車を駅に停めるのではなく、街の未来を見据えた大きなまちづくりのビジョンが示された結果、2022 年11 月の川口市とJR との調査に関する協定が締結され、本年1月のJR からの計画案や事業費の提示に至っているのです。
▶上野東京ラインを選定。より広域からの集客、インバウンドの獲得へ◀
停車対象とする路線は、川口駅を京浜東北線に並走する形で通過している、湘南新宿ラインと上野東京ラインの2路線が検討されました。
当初検討されていた湘南新宿ラインは、混雑率が高く停車余力が少ないことが確認された一方で、上野東京ラインは混雑率が比較的低く、2031年度の開業を目指す羽田空港アクセス線、(仮称)「東山手ルート」により、羽田空港へのダイレクトアクセスが可能となる等の発展可能性を踏まえ、JRから提案のあった上野東京ラインの停車について市側も合意しました。
川口駅の中距離電車停車は、川口市民の利便性と通勤安定をもたらすものに止まらず、これまで以上に市外・遠方より川口を訪れやすくなり、まちの集客、経済機会を増大させることになります。羽田空港からの直結路線を確保するということは、工夫次第によっては、海外からの観光客を川口に呼び込むチャンスも作れることになる訳です。
この新たな交通機能の強化・更新を機に、さらに住みたい、行ってみたい、選ばれるまちへと川口の魅力を高めてまいります。
▶今後の取組方針 ①JR との調整、国の財政支援と制度の柔軟運用◀
川口市とJR との基本協定の締結のためには、具体的な計画案や事業費等の精査に加え、市が負担する費用範囲や、事業費の支弁方法を決めなくてはなりません。現在、市とJR とで精力的に事務的協議が進められており、協議が調い次第、市議会に、基本協定締結に関連する議案が提出されることになります。
私としては、引き続きJRとの連絡調整を行うと共に、最大の課題である400億円を超える事業費について、市の財政負担をできる限り軽減できるよう、国の補助金を活用した支援や国による資金調達制度の柔軟運用について最大限の努力を傾注し、関係省庁との調整に取り組みます。
▶今後の取組方針 ②バスネットワークの充実、自動運転バス◀
川口駅のバスの運行本数は、市内の他の鉄道駅と比較して大幅に多く、市内随一の交通結節機能を有しております。一方で、隣駅の赤羽駅には多くの路線が停車することから、赤羽駅でバスに乗り換え、新荒川大橋経由で市内外を移動する市民も相当程度存在しています。
川口駅への上野東京ライン停車が実現する際には、川口駅から他地区へのバスネットワークを更に充実させ、交通結節機能を強化し、川口駅周辺に加え幅広い地区に中距離電車停車の効果を波及させて いくことが重要です。
特に、2026年の完成に向け建設が進んでいる「NHKスタジオ」を含む上青木のSKIPシティとの連結は重要です。これに加え、地元企業のサイボー(株)、ネッツトヨタ、イオンモールと川口市が進める、グリーンセンターとイオンモール間の自動運転バス実証事業との円滑な相互利用を図るなど、川口駅とのバスネットワークの更なる充実は、広域から川口に訪れる関係人口の拡大に大きく貢献するものと考えております。
▶今後の取組方針 ③美術館やそごうリニューアルなど新たな駅周辺整備◀
川口駅への中距離電車停車は、駅舎の整備に加え、周辺街区の再開発など集客拠点の整備を進めることで、市内外から駅周辺に訪れる関係人口の拡大をもたらすものになります。
川口駅周辺では、開館から30年が経過したリリアの大規模改修に併せ新美術館の建設が決まり、本年度より着工しています。
また、令和5年11月には、三井不動産の旧そごうビル取得を契機として、市と三井不動産とで「川口駅周辺まちづくりに関する連携協定」が締結されました。
旧そごうビルはまずは商業施設としてリニューアルオープンすることになり、将来的には建て替えが想定されています。三井不動産とのまちづくり協定締結にあたっては、私も旧知の縁を活かし関係者を紹介するなどお手伝いをさせていただきました。
その他、川口駅周辺には旧マルイ跡地やそのほかの街区でも再開発の動きがあり、行政当局と自由な発想を持つ民間事業者との連携の下で、高い居住性と集客力のある施設整備が、まちづくりビジョンで示された「ウォーカブルなまちづくり」コンセプトのもとで大胆に進められていきます。
▶今後の取組方針 ④新技術の社会実装 オンデマンド交通構想◀
さらに私は、市民の交通利便向上のため、新しい技術を使ったオンデマンド交通の市内導入も検討したいと考えています。
あくまで私案ですが、市内各地から交通を利用したい人が携帯電話で希望する行先と時間帯を申し込めば、その時最適な場所にいる車(又は小型バス)が迎えに行くような新しい交通サービス事業です。
最新のデジタル技術を持つ事業者を選定するために、スタートアップを対象とした公募を行い、優れた提案を市として公共調達すれば、スタートアップの育成支援も行えることになります。
▶内閣府「SDGs 未来都市モデル事業」に県内から初選出◀
5月23日、内閣府が選定する令和6年度の「SDGs未来都市」全国24都市の中に川口市が選ばれました。さらにそのうち特に優れた提案を対象とする「自治体SDGsモデル事業」10都市に、川口市は草加市と共に県内から初選出されました。
川口市のモデル事業名は「自走・自立支援型、魅力向上型で進めるSDGs17色の多様で多彩なまちづくり」とし、2030年のあるべき姿を掲げ、様々な取り組みでその実現を図る、としたことが大いに評価されたものでした。
その取り組み施策の第一提案は、「川口駅周辺のまちづくりの推進」と「NHKスタジオ建設と一体的に進めるSKIPシティの整備」であり、まちづくりビジョンと連動した政策となっています。
▶「川口の未来を拓く新しいまちづくり」の総合的推進◀
現在、私は経済再生担当大臣として、経済成長のチャンスを迎えている日本経済を、デフレから脱却させ民需主導の新しいステージに移行させることを至上命題として取り組んでおります。
その実現のカギを握るのは、新たな成長戦略のもと、社会課題を解決し経済を活性化するための「新しい技術の徹底した社会実装」であり、まちづくりビジョンと連動した政策となっています。
私は、産業が集積し、市民活動が活発な川口市は、こうした国が進める政策の実践地として最適な都市と考えています。そのため、川口で取り組む新たなまちづくりは、地域の魅力付けと課題解決に資すると共に、同様の課題を持つ全国各地域に展開できる仕様にしておくことが重要です。
今号でご報告しました「川口の未来を拓く新しいまちづくり」は、国の様々な政策・制度と連携し、最大効果が上がるように総合的にすすめられております。
私は、「少子高齢化、人口減少となっても成長する日本」を目指し、皆さまに造っていただいた国・県・市の強く太い連携を最大限活かしつつ、果たすべき役割に全力を傾注してまいります。