◆ 東北復興の悲惨な実情
去る 3 月11日、国立劇場大劇場で、天皇・皇后両陛下ご臨席の下に東日本大震災一周年追悼式が挙行され、私も犠牲者の追悼と復興をお祈りさせていただきました。
世界最大級の地震と津波に襲われた東日本の各地域では、死者・行方不明者併せて 2 万人(避難中に体調を崩すなどで死亡した方含む)を超え、未だに避難生活を強いられている方々も34万人に上っています。
日本中の誰もが一日も早い復旧・復興を願っておりますが、被災地の現状は私たちの想像を超える遅れと混乱が拡がっています。
◆ 宮城県がれき最終処理は、5.8%!
まずがれきの処理が大幅に遅れており、私が支援に何度か出かけている宮城県石巻市では、106年分の処理しきれない大量のがれきが仮置き場に山積みのままです。
焼却・埋設などの最終処理は、宮城県で5.8%、岩手県で8.7%(阪神大震災では 1 年で48%を最終処理)。このままではがれき処理完了までに20年近くかかることになってしまいます。
最大の要因は他の都道府県に運ぶ広域処理も含め、自治体の処理計画が定まらないことです。
本来こうした処理は国家全体の課題として、国が主体的に計画を立て自治体側に具体的指針を明確に示さなければ進むわけがありません。
野田首相によれば、各大臣たちは出張や会談など機会あるごとに自治体側に何の拘束力も具体性もない「お願い」をしているそうです。
「地域主権」を基本哲学に国家運営にあたろうとする民主党政権の根本的欠陥が処理遅れの要因になっていると私は考えます。
◆ 道路や橋の工事発注は、7%!
岩手、宮城、福島被災 3 県の道路・橋などの被害額は7300億円であり、国土交通省は 1 ? 3 次補正予算のうち「68%」が執行済みとしています。
ところがそれは国が地方への配分計画を決めただけであり、2 月時点で実際に工事の発注や契約を行っているのは、なんと 7 %です。
しかも発注済みの工事ですら受注企業に支払われるのは、5 千万円程度の手付金であり、工事が完了しなければお金は支払われません。
菅・野田と続く政権は、自ら宣言した年間国債発行上限44兆円(自民党政権以上に国債を出さない)の面子にこだわり、緊急・非常時にもかかわらず小間切れ補正予算しか編成出来なかったことが、今、被災地を苦しめているのです。
こうした不手際は道路だけでなく、病院、学校、堤防、鉄道復旧などあらゆる社会基盤(インフラ)整備の遅れの原因となっています。
◆ 宮城・福島の交付金、要望の57%!
3 月 2 日には復興庁が復興交付金の第 1 回配分を決定しました。
3899億円の申請額に対し、認定されたのは2509億円(64%)であり、宮城・福島県は57%、石巻市に至っては申請額の31%・123億円の配分しかありませんでした。
私は谷垣総裁とともに翌 3 日、仙台市で自民党ネットサポータークラブ(J?NSC)の集会を持ちましたが、出席者から「一体政府は何をやっているんだ。云うこととやることがなぜこれほど違うのか!」という、身もだえする程の怒りの声を預かってきております。
復興を迅速かつ一体的に進めるために一年がかりでようやく発足した復興庁は、一元的に権限を発揮するどころか、関係省庁との連絡役程度しか機能しておらず、査定庁と揶揄される始末です。
指揮監督する政治側のリーダーシップ欠如により、役人はどこまで何をすればよいのか指示のないまま動いているのが実情のようです。
◆ 「仕事が出来ない政権」
つまるところ、被災地には予算が届いていないのです。復興の前提となる新たな都市計画も方針すら決まっておりません。
予算も計画も執行体制も不備のままで、復興が進むわけありません。
もちろん広域かつ巨大な被害からの復興は簡単なことではなく、誰が取り組んでも困難があります。
しかし、今問われているのは対策の中味というより、実行方法や処理ノウハウです。せっかく法律や制度を整えても、実のある運用が出来ないことが最大の問題なのです。
国民が選択した政権が実務能力と経験不足の「仕事が出来ない政権」であるならば、その有効な解消手段は「政権の再選択」しかありません。
◆ 国民不在で消費増税法案を議論
消費増税関連法案は、民主党内の結論を得るため、内容が一日単位で二転三転しつつ強引に決定されようとしています。
①消費税増税は、民主党マニフェスト最大の公約破りであり、国民は選挙時に増税を委ねていない。
②2015年10%増税後の追加増税措置を国民に説明無いまま議論。
解説=民主党政権は2020年度までの基礎的財政収支黒字化を国際公約しており、そのためには2016年に消費税を 6 %追加増税する法案を出すことになります。
=追加増税の是非ではなく、法案に時期と税率を書くか書かないか、選挙への影響が議論のポイントで、国民へ説明無しで、5 年後の追加増税措置を決めようとしているのです。
③景気情勢により増税を停止する「景気弾力条項」に数値を明記するか否かを議論。
解説=反対派は景気好転を条件とする条項に経済成長率を明記することで増税阻止を目論み、執行部側は数値目標を外すことで骨抜きを狙っています。ということは、いずれの立場でも民主党は経済成長を実現できない前提で議論していることになります。景気の悪い中、ばらまきによる歳出不足を増税で賄おうとする魂胆が透けて見える議論です。
④これまで議論のない「歳入庁」の創設が突如浮上、法案明記?
このように、国民生活に多大な影響を及ぼす重要法案の中味が、国民への説明も是非を問うことも無いまま内輪の議論で決められようとしています。
どうして民主党はこのような国民不在の議論を平気で出来るのか、私は不思議で仕方ありません。
◆ 「国を守ることが出来ない政権」
政権交代からわずか 2 年半、周辺国から我が国領土や主権への侵害がますます強まり、それに対し有効な対抗策を何一つ打てず、他国からなされるがままの状態が続いています。
韓国の竹島不法占拠強化に日本は抗議せず、韓国は今がチャンスとばかり工事を強行、さらに慰安婦問題や日本海・東海併記問題で国際世論を形成される勢いです。
尖閣諸島海域には漁船衝突事件以降、中国の調査船や監視船が頻繁に出現し、3 月16日の領海侵犯に至っては遂に「定期巡航」とまで中国政府から発表される始末です。
北方領土について、政府は 3 月 2日付の答弁書でこれまでの「不法占拠」から「ロシアに法的根拠のない形で占拠されている」と表現を変更し、そのことをロシアの国営ラジオ放送が日本の表現が後退したと報じました。ロシア政府からは日本と北方領土交渉をする必要はないとまで云われているのです。
◆ 日本立て直しに大手術は待ったなし
内政・外交共に、民主党政権の対処能力は限界を超えている、と私はこれまで繰り返し訴えてきました。
選挙で示した国民への約束を根本から変更するのであれば、政権はもう一度国民に約束をし直さなければならない、とも言って参りました。
国民の信任を得ない政府が運営を続ければ続けるほど、不信と混乱が増すばかりとなります。
こうした状況で自民党と民主党が話し合いにより大連立を組むことで、政治の信頼と能力が回復するとは私にはとても思えません。
今、日本に必要なのは方向を見失ってしまった国の目標と戦略をリセットすることです。
自民党も民主党もその他の政党も、国を建て直すための具体的な約束を示し、国民が納得し期待する政策を掲げた政党に政権を委ねられるよう、国民が政権を再選択すべきではないでしょうか。
場合によっては政策を共有する者同士による政界再編成の可能性もあるかもしれません。
日本という国を病気に例えれば、現在の療法では快方に向かわず、医者を変えるか治療方法を変え、適切な診療計画のもとで手術が必要な状態だと仮定してみて下さい。
今のうちなら間に合うが、放っておくと手遅れになるのなら、何を選択すべきかは明らかです。
日本の立て直しには、政治は国会を解散し、総選挙という国民による大手術を受けなければなりません。
4 月に入りいよいよ政局の緊迫度が増大するものと予測されますが、信念を持ち自らの役割を果たすべく行動して参ります。
新 藤 義 孝 |