週刊新藤第237号 尖閣諸島を洋上視察しました。~国境の島や海を有人・有効活用する必要性~

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尖閣諸島の洋上視察の動画をHPで公開しています。灯台や水路など明治の開拓跡など島の現状や、荒れた海の様子をぜひご覧ください。
          


◆ 尖閣諸島の洋上視察

 尖閣諸島を洋上視察してきました。インターネット放送局「チャンネル桜」の水島社長から誘いを受け、民主党・向山好一衆議院議員や、松浦芳子・杉並区議会議員、地元の石垣市議会議員、日本の国境をとり続けているカメラマンの山本皓一さんなどと共に行ってまいりました。

 


◆ 尖閣諸島の現状

 我が国・国境の最先端である尖閣諸島は、大半が個人所有であり政府が借り上げ残りの国有地と共に管理しております。
現在まで政府は尖閣諸島の「平穏かつ安定的な維持管理のため」を理由に、政府機関以外の上陸を認めておりません。
一方、約40年前に国連機関調査で海底油田等の資源可能性が報告された後、それまで主張したことの無かった中国が突如として領有を主張し始めたのです。
特に一昨年の中国漁船の衝突事件以降は、毎月のように中国の漁業監視船が我が国領海に近づき、時には領海侵犯を繰り返しています。
海だけではありません。中国軍用機による日中中間線付近の監視飛行が頻発し、昨年 6 月には戦後初めて尖閣諸島から与那国島上空を中国軍機が領空侵犯し、自衛隊機がスクランブルをかけ排除するという事態も発生しています。
尖閣諸島が歴史的にも国際法上からも日本の領土であることは、全く疑問の余地がありません。
しかし、自国の領土・領海でありながら上陸を認めず、海域も含め国民の生活が営まれていないことは不自然です。
私は、かねてより尖閣諸島の有人活用を提唱し、その前段として国会議員による上陸調査を許可するよう政府に働きかけを続けております。

 


◆ 荒れる冬の海

 1 月20日深夜11時、石垣島の港を出港しました。出港後 1 時間もすると冬の東シナ海には 3 メートル近くの波が立ち、9 トンの漁船は暗闇の中で激しい縦揺れ・横揺れを繰り返しました。
船酔いを心配してくれた人もおりましたが、あまりに揺れが激しいと船酔いしている暇も無いことがわかりました。

 


◆ 灯台の灯り、明治からの水路・住居

 そして 7 時間後、170キロを航海し21日朝 6 時過ぎに尖閣諸島最大の島である魚釣島に到着です。まだ暗い中、尖閣諸島唯一の灯台の灯りが、小さいながらも力強く 5 秒おきに点滅していました。
明るくなってからさらに近づくと、明治時代に手堀りで開削された今も唯一の上陸用水路が見え、その奥にある鰹節工場や住居の跡が確認できました。整然と積み上げられていた壁面部のレンガは、写真で見るよりもさらに激しく崩れています。
最盛期には200人以上の人が住んでいた場所を直接自分の目で確認し、開拓者の情熱と苦労を改めて偲びました。

 


◆ 釣り体験で、豊富な漁業資源を確認

 島の南側に回りますと、あれほど荒れていた波もやや静まり、私たちは視察目的の一つである漁業活動調査の一環として釣りをしました。
これがまさに「入れ喰い」状態で、疑似餌のみで針を下ろすと、素人の私でさえ、たちまち当りがきます。漁船の船長さんたちや石垣市の市会議員さんたちがどんどんカツオなどを釣り上げていきます。他の海で取れる魚よりも一回り大きく、身が締まっており、船上でさばいた刺身の美味しさは格別でした。

 


◆ 崖と洞窟の北小島、南小島の住居跡

 次に、船で20分ほど離れた北小島と南小島に向かいました。島影を出るとまた大きな波となり、船は大きく揺れます。
崖のみの北小島には、アホウドリがたくさん巣を作り悠然と飛んでいます。人工の洞窟も見えました。
わずかな砂浜がある南小島には、魚釣島よりもきちんとレンガが残った住居跡と、打ち上げられ壊れた難破船を確認できました。
小さな島にも人の営みの跡がしっかり残り、先人のたくましさに感動しました。

 


◆ 尖閣諸島に必要な施設・施策

 今回の視察で改めて確認できた、島と海に必要な施策を提案します。
①避難港
石垣島がなぎでも、外界は大波です。海が荒れた時に一時的に避難できる港を整備すれば、船舶の安全性と漁業の安定性が飛躍的に高まります。
②電波中継管理所
石垣島をでて、半分くらい過ぎると遠すぎて無線が使えなくなります。私たちは孤立してしまうのです。エンジン故障や何か不測の事態が起きた時を考えれば、電波中継管理所の整備は早急に行うべきです。
③気象観測所
石垣島から170キロ離れた尖閣の詳細な気象予測は現状出来ません。気象観測所の必要性は説明するほどもなく重要です。
④漁船の燃料代支援
尖閣諸島往復には、燃料代が10万円ほどかかり、海が荒れ不漁になると回収が難しいとのことでした。離島の燃料代は本土より割高であり、支援制度の拡充が望まれます。
尖閣諸島周辺のかつての漁業水揚げ高は10億円を超えていましたが、現在はほとんどゼロという状態です。地元漁師の皆さんは、海域の安全性や経済性を考え尖閣周辺に行けなくなっているのです。

 


◆ 特定国境離島保全・振興法案の提出

 私は自民党内で、こうした国境の島と海を守り、経済活性化を促すための「(仮称)特定国境離島保全・振興特別措置法」を議員立法で国会に提出すべく準備を進めています。
島の保全、活性化に必要な施設整備を国が主体的に整備したり、漁船の燃料代を支援できる枠組みを作り、必要に応じ島の国有化も可能とする仕組みも入れればよいと考えています。
我が国の国境周辺で経済活動を行う人々を支援し、離島の活性化を図ることは、一方で最も平和的かつ効率的な防衛施策になります。

 


◆ 名前のない国境起点が4か所

 我が国は世界で 6 位となる広大な排他的経済水域(EEZ)を保有しますが、その起点は185か所・99島あり、そのうち 8 か所が尖閣諸島にあります。まだ 4 か所には名前が付いておらず、政府は 3 月末までにそれを決定することになっています。
自国の権利を主張する上で、該当地点の整備・保全は重要な行政事務です。今回の視察はその地点を確認することも目的でした。

 


◆ 15年振り、国会議員で2人目の訪問

 私はこれまで 2 度、航空機から尖閣諸島を上空視察しておりますが、自分の目で真近に確認できた意義は、とても大きかったと思います。
我が国の国境をつくってくれている尖閣の島々は、とても美しく気高いものでした。
ところが戦後、島を訪れた国会議員は私で二人目、15年ぶりのことであり、これまでのハードルはとても高かったのです。
尖閣諸島の島と海にもっとみんなが普通に訪れられるようにしなければなりません。今後はより多くの人が出かけられる企画を考え実行してまいります。
もちろん、決算・行政監視委員会による国会議員の尖閣諸島上陸調査は、何としても実現できるようさらに努力します。
海に囲まれた我が国は、海を活用し国力を高めてきました。尖閣諸島を無人島から有人島に、豊かな海を危険な海から安全な海とし、多くの人に開放すべきです。政府に決断を迫るべく国会でしっかり活動してまいります。


 


 新 藤 義 孝