◆ 早急な対策が望まれる尖閣諸島問題
私の韓国・鬱陵島視察については、たくさんの皆様から激励やご心配をいただき、文中より厚く感謝申し上げます。
また今回の行動は一過性のものであってはならず、竹島領土問題の解決と日韓の真の信頼構築に向け、今後もしっかり活動して参ります。
竹島問題と同様に早急に対策をとらなければならないのが、尖閣諸島問題です。尖閣諸島は我が国固有の領土ですが、中国が領有を主張し、昨年 9 月の漁船衝突事件に代表されるよう、その動きを強めています。
◆ 中国側の動き:千隻の船が尖閣に
昨年暮れには、日米沖縄返還協定調印40周年を迎える本年 6 月17日に1000隻の中国船で尖閣諸島を取り囲む、という計画が明らかになりました。
東日本大震災の被害を考慮し実施されませんでしたが、活動家を乗せた中国や台湾の船が、尖閣めがけて近づいてきたことは事実です。
また昨年 9 月の漁船衝突事件以降、尖閣諸島周辺の日本の接続水域(領海の外側約22キロ)で中国の漁業監視船が確認された例は実に12回にのぼります。
8月24日には、行政監視委員会による上陸視察報道を受けたかのように、2隻の中国漁業監視船が接続水域を越え、初めて我が国領海に侵入しました。日本の抗議に対し、中国大使は、尖閣諸島は中国の領土だと主張しています。
中国海軍は 3 年前より沖縄を通過して外洋訓練を始めました。今年の春も計11隻からなるミサイル駆逐艦などの中国艦隊がこの付近を通過し、西太平洋で訓練を行っています。
◆ 中国軍機が尖閣・与那国へ飛来
報道によれば 6 月29日、中国軍の戦闘機が尖閣諸島から与那国島上空を飛行したため、沖縄の航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)を行ったことも明らかになっています。中国軍機がこの海域まで飛来したことは初めてのことであり、海に加え空にまで中国が圧力をかけ始めているのです。
◆ 「日本と闘い主権守った」と総括!?
中国の2011年版外交白書では昨年の尖閣諸島沖漁船衝突事件について「中国は日本による中国漁民、漁船の不法拘束に対して断固として闘い、国家主権を守った」と総括しました。
この中国版白書では、尖閣諸島について「古くから中国固有の領土で、争いのない主権を有する」と主張し、「日本は中国の領土、主権と中国人の人権を深刻に侵害した」として謝罪と賠償を求めています。
中国は南シナ海に続き東シナ海を「核心的利益」と位置づけ、それを確保するための行動を「確信的」に取っていることがご理解いただけると思います。
◆ 上陸を認めず、無人島政策の日本
一方、我が国は尖閣諸島を法的・歴史的に領有し、固有の領土として支配しております。民間人が所有する魚釣島外 3 島は政府が賃借し、大正島と 3 つの岩礁は国の所有です。
しかし限られた政府関係者以外は何人の上陸を認めておらず、無人の島となっています。
今のまま領有権を主張するだけで何ら島を活用せずして、今後も尖閣諸島を安全に守っていけるのでしょうか?
私は日本の島としてこれらの島を有効利活用し、目に見える形で実効支配を示し、我が国の主権と領土を守る意志を国内外に明確にしなければ、尖閣諸島を守り維持していくことは到底出来ないと考えています。
◆ 島の有効活用のための上陸調査を
自民党の領土特命委員会ではこれまで何度も尖閣諸島の利活用について政府に提言を行ってきました。(尖閣諸島に関する2回の決議はこちら)
本年 2 月16日の決議では、荒天時の漁船の避難港整備、灯台の改修、気象観測所の設置、漁船に情報提供を行う無線中継所の設置、監視レーダーサイトなど、有人施設の設置を求めています。
そして、政府に島の利活用の推進を促すと共に、国会においても国政調査権に基づき尖閣諸島に上陸し、実地調査を行うべきとしました。
また、地元自治体である沖縄県石垣市も政府に対し尖閣諸島上陸の要請書を提出しています。
尖閣での昭和20年疎開船遭難事件慰霊祭の実施、固定資産税課税のための実地調査、自然環境・生態系の現状把握、の 3 つがその理由です。
しかし、政府は「島の平穏かつ安定的な維持・管理」を理由にことごとく拒否し、日本の島ながら誰も近づけない状態が続いているのです。
◆ 行政監視委員会による上陸視察
このような政府の対応を質すため、7 月14日の決算行政監視委員会では、自民党の下村博文議員より尖閣諸島の上陸視察を委員会として行ってはどうか、との提案が委員長の私に対してなされ、それを受けて私は委員会の理事会で対応を協議することにしました。
8 月10日の理事会で議題として取り上げたところ、 8 人いる民主・自民・公明各党の理事より政府から現状を事情聴取すべきとの意見が出されました。
8 月23日には理事懇談会を開き、政府からの説明を聞きました。
島には灯台の維持管理補修のために海上保安庁が年 1 回上陸するだけです。絶滅危惧種に指定されている生態系が24種生息し、センカクモグラなど10種が尖閣諸島固有の種であり、これらが島で繁殖した300頭のヤギによって壊滅する恐れがあるそうです。
政府はこれらの現状を衛星写真の分析で把握していると言いましたが、日本生態学会からは、厚い樹木で覆われた島の地表の詳しい状況は衛星写真では分からず、上陸調査が必要との要望が出ていることも確認しました。日本ほ乳類学会からは野生ヤギ駆除の要望も出ています。
◆ 32年前の調査、3年前の上空視察
政府はかつて、尖閣の利用開発のための調査を実際に行っています。昭和54年の大平内閣で、当時の沖縄開発庁の調査団30人が魚釣島に上陸し、仮設ヘリポートを建設した上で 7 日間にわたってボーリング調査等を実施したのです。
また、平成20年には、決算・行政監視委員会でも当時の枝野幸男委員長らにより尖閣諸島の上空視察が行われております。
◆ 国政調査権の発動による実地調査
現在、政府は政府関係者以外の尖閣上陸を認めていません。しかし、国権の最高機関である国会が、国政調査権による尖閣諸島への実地調査を意志として示せばどうでしょうか。政府も国民の代表である国会の意志は簡単には拒めないはずです。
決算・行政監視委員会は衆議院議長より委員会審議に当たり、国の行政全般を監視するための国政調査要請を受けており、委員長の私は審議を深めるため、現地に赴き状況を把握する必要があると考えています。
尖閣諸島に対しては、賃借料だけでも約10年間に 2 億 5 千万以上の国費が投入されており、国の行政がどう施されているかも確認しなければなりません。それが決算行政監視委員会の役割なのです。
◆ 「国民の声」をお願いします!
理事会での協議は結論が出ず、継続しています。各理事からは「現地事情や生態系情報が不足していることから積極的に上陸調査を行うべき」、「新内閣の外交方針を見極める必要がある」などの意見が出ており、私は 8 月31日の国会会期末までに委員会の意見を集約し、政府に対し私たちを現地に運ぶ手段を確保するよう要請したいと考えています。
ぜひ皆様には、委員会の意見集約がよい方向にまとまるよう、かつ政府が立法府の委員会による尖閣諸島上陸視察を受け入れるよう、「国民の声」を上げていただきたく、お願い申し上げます。
新 藤 義 孝 |