「国政の停滞は菅首相と民主党の能力不足による人災」とまで報道されていますが、内政の混乱を衝くかのように、我が国の領土や主権がかつてないほど危険にさらされています。今号では今、起こっている日本の危機をご報告します。
◆ 尖閣諸島を守る石垣集会に参加
6 月18日、私は自民党を代表して石垣島に出張し、「中国の尖閣不当上陸を阻止し、尖閣諸島を守る石垣集会」に参加してきました。
昨年 9 月の尖閣諸島沖で我が国巡視船に体当たりしてきた中国漁船・船長の釈放は、中国の圧力に屈した日本政府の弱腰外交を世界に印象付けてしまいました。
このことは、歴史や国際法を無視し、勝手に領有を主張している中国の野心をかきたてることになり、最近も尖閣周辺に度々武力を備えた中国船が現れるなど、脅威はさらに増大しているのです。
石垣集会は、日米沖縄返還協定の調印40周年の節目を迎える 6 月17日に、この協定を無効だと訴える「世界華人保釣連盟」という団体が、当日に1000隻の船で尖閣諸島に押し寄せるという計画を阻止するために催されたものでした。
この中国人や台湾人による行動は昨年秋より香港で報道され、具体的な準備も行われていました。
東日本大震災後の弱った日本に追い打ちをかければ国際非難にさらされる、との判断で中国側が見送ったとの情報もありましたが、改めて「我々は尖閣諸島を日本の領土として守る」という強い意志を内外に示すために行われたのです。
これまでは、海上保安庁が最大警戒態勢を敷き、事務方による外交対処を徹底行使した結果、中国活動家の船が台湾や香港で出航の動きを見せたものの、尖閣周辺に近づくことは阻止しています。
しかし、このように警戒を強化し阻止するのは、一時的な対処療法であり問題解決にはなりません。
◆ 尖閣諸島の有人化へ踏み切るべき
私は集会での挨拶で、尖閣諸島について、
①自治体の上陸調査や魚釣島戦時遭 難者の現地慰霊祭を認めるべき。
②周辺海域の漁業活性化のため、漁 船燃料費の支援、海保による安全 操業支援を行うべき。
③島の有人利用を解禁し、気象台、灯台など有人施設を整備すべき。
そのためには、まず政府による「島の利活用調査」を実施しなければならないが、今の政府にやる気がないなら国会議員の我々が島に上陸し「国政調査権限に基づく調査」を行う、と訴えました。
尖閣諸島は「我が国・固有の領土」と主張しても、無人島のまま誰も寄せ付けず、経済的活用をしていなければ、ただの岩と言われる可能性も国際法上はあり得るのです。
本年はさらに中国の野心を実現する圧力活動が活発になることが予想されており、日本は一刻も早い国策変更を決心することが必要です。
◆ 止まらない竹島への韓国閣僚訪問!
尖閣諸島に止まらず、竹島でもヘリポート、海洋科学基地、住民宿泊所など新たな構築物の建設工事が堰を切ったように進められ、さらに、これまで控えられていた韓国閣僚の竹島上陸が平然と行われるようになってしまいました。
4 月 1 日に教育科学部長官、4 月12日に大統領特任長官、5 月25日に女性家族部長官、そして 6 月15日には行政安全部長官が竹島を訪れています。韓国大統領の竹島上陸も時間の問題ではと心配しています。
また、 5 月24日には韓国の国会議員が公用旅券を使い、ロシア政府の支援を受けて北方領土へ初めての上陸を許してしまいました。
私たち自民党は領土特命委員会や国会の委員会で、この計画を中止させるべく韓国への申し入れを強く迫りましたが、首相や外務大臣は何の手も打てませんでした。
日本政府は、事態発生後、形式的な抗議を行いましたが、韓国から反論されただけであり、菅首相に至っては、この間に韓国大統領との首脳会談を持ちながら抗議はおろか話題にすら取り上げませんでした。
◆ 竹島に韓国の住所を勝手に付与!
6 月15日の日本の総務大臣にあたる行政安全部長官の上陸は、ただ訪問しただけではありません。
竹島に韓国政府による新たな住所を付与し、道路名板と建物番号板を設置し、除幕式を行ったのです。
道路の名前は、東島がイザブ道、西島がアン・ヨンボク道としたそうです。
実はこの名称は2008年に国民公募で決まっていましたが、自民党政権時代には実行することが出来なかったのです。
◆ 歴史歪曲、ウソを塗りつぶした名称
しかも「イザブ」は「今の鬱陵島と独島である『于山国』を占領した新羅(シラギ)の将軍」であり、「アン・ヨンボク」は「李氏朝鮮の時、鬱陵島と独島が朝鮮領であることを日本の幕府が認めるように活躍した漁師」だと韓国は主張しています。
ところが、「イザブ」は鬱陵(ウツリョウ)島を征服しましたが、竹島を占領した記録はありません。
「アン・ヨンボク」は密航人で対馬藩に捕らえられた人物であり、朝鮮に送還された後、朝鮮役人の取り調べを逃れるために、江戸幕府が竹島を韓国領だと認めた、などというウソの証言をした人物です。
こんなデタラメで歴史を歪曲した名称をよく恥ずかしげもなく付けられるものだと思いますが、それを我が国の領土に勝手につけることなど、許せるわけがありません。
◆ 本当のことを公表しない外務省
日本政府は、行政安全部長官の竹島上陸について「遺憾、受け入れられない」と外務事務次官が駐日韓国大使に「電話」で申し入れ、国内へ報道発表しました。
ところが道路名や住所の付与については、抗議しておりませんし、日本国国内に公表もしておりません。
急きょ開いた自民党の領土特命委員会にも説明・資料提供もなく、韓国側インターネット報道をチェックしていた私が指摘するまで事実を明らかにしませんでした。
韓国が勝手に付与した住所であっても正式に抗議しておかなければ、後に国際司法裁判所で竹島を争う際に、日本はこれを認めていたことにもなり兼ねません。
◆ 韓国の民航機が竹島上空を初飛行!
6 月16日、今度は大韓航空が導入する旅客機「エアバスA380」がメディア向けデモフライトを行い、竹島上空を飛行したのです。
竹島上空を民航機が飛ぶことは、私が知る限り初めてのことですが、日本政府は韓国へ全く抗議をせず、国民に公表もしていません。
我が国の領空侵犯につながる事態ですが、政府はまったく無反応状態です。実は竹島は、日本の防空識別圏に含まれず、航空自衛隊のスクランブル対象とならないのです。
竹島上空に他国の飛行機が勝手に飛来しないよう、これまで我が国が細心の注意で積み上げてきた外交は、無残にも崩れ去りました。
◆ 国民・領土・主権を守るために
こうした対中国・尖閣諸島問題の無策、対韓国・竹島問題対処の失敗は、ロシアの日本向け北方領土対処方針の変更・強硬化を招いてしまいました。
ロシアの副首相は 6 月のアジア安全保障会議の質疑の中で、「日本との間に平和条約は不要=北方領土交渉は行う必要がない」とまで言い放ち、再び北方領土を訪問することを明言しました。
こうした状況を招いた原因を全て民主党政権の責任にするつもりはありませんが、世界と日本周辺の情勢変化に、現政府が全く対応できていないことは厳然たる事実です。
日本政府には国家運営の基本である、「国民の統合・領土の保全・主権の確立」を如何に実行・担保するかという命題が課せられています。
私は政治の責任を何より痛感しつつ、この厳しい状況を乗り越え、国力の挽回に向け、必死に打開策を探ってまいります。
新 藤 義 孝 |