週刊新藤第223号 もはや限界を超えている菅内閣~本格政権の樹立なくして、立て直しなし~

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毎週日曜日の午後三時頃より、川口駅東口デッキ上で、国政報告を続けています。よろしければ是非お出かけください。


◆ 進まない復旧事業、決まらない予算

 震災後 3 ヶ月になろうとしているのに、政府の復旧対策の遅れは目を覆うばかりです。
 ガレキの処理はわずか15%しか進まず、破損した190キロにもわたる堤防は全く手が入っておりません。全壊した病院も未だ手つかずのままなのです。
 学校の改修も 5 月に成立した第 1次補正予算で対応できるのは被害の小さな箇所のみで、校舎の建て直しなど大規模なものは 2 補正以降の予算でないと対応できません。
 その肝心の第 2 次補正予算案については、未だ予算規模すら固まらず、各省庁での検討作業は行われておりません。
 報道で、ある官僚は「阪神大震災の時は、2 ヶ月で打てる手は全て打った」と語っています。いかに現在の政府の対応が遅れているか、お判りいただけると思います。
 自民党はこれまで震災対応について 3 次にわたる提言577項目を政府に申し入れ、第 2 次補正予算のベースとなる緊急提言も既にとりまとめ政府に伝えていますが、政権側が取捨選択出来ないのです。


◆ 決算行政監視委員会決議案の遅れ

 何故これほどの遅れが出てしまうのでしょうか?その理由を私は肌身で知っています。
 私が委員長を務める決算行政監視委員会では 4 月27日に原発問題に関する集中審議を行い、それを基に政府に対して必要な措置をとるよう決議を出すことにしました。
 決議案文は 5 月17日の理事会で諮り、5 月23日に採決する日程を理事全員の賛成で決めました。
 ところが、約束の委員会開催20分前に、民主党より決議の党内手続きが終わっていないので採決できない、と申し出があり、委員会は流会になってしまいました。
 民主党理事が明日にでも終わると言った党内手続きは、何とそれから3 週間かかり、委員会は民主党の反対で未だ開く事ができません。
 民主党では決議の案文を承認するのに、党内の 3 つの部門会議にかけなければならず、その次は全体調整の会議、更には、委員会決議とは関係ない官邸のチェックや議員立法調整チームなるものまで通さねばならないというのです。
 自民党だって手続きは大変です。決議案文を総裁、幹事長、政調会長総務会長、関係 3 部会長にそれぞれ決裁を受けなければならず、自民党の理事も 3 日間をかけて、何とか約束の期日に間に合わせたのです。 


◆ 予算や事業執行が遅れる根本的欠陥

 しかし、民主党は現場の理事が合意している案文の党内手続きを済ませるだけで、いくつもの会議を開かなければならず、自民党の 5 倍近くの時間がかかってしまうのです。
 震災関連の本部や会議が政府内に26も作られている、と批判されましたが、民主党内もおなじです。
 民主党という政党には、政権与党でありながら、重要な意思決定の仕組みやルールがきちんと確立されていない、という根本的な欠陥があるのです。 


◆ 領土・国家主権を守れない首相

 さらに加えて、菅首相の資質についても指摘せざるを得ません。
 日本の大震災に同情を寄せつつも、韓国は竹島で不法占拠を強化するための大規模工事を強行し、北方領土にはロシアの閣僚が平然と上陸するだけでなく、韓・ロ政府の連携により韓国国会議員の初めての訪問が行われてしまいました。
 菅首相は、来日中の韓国大統領に事実を知りながら抗議もせず、話題にすらしません。
 またG8サミット中の日・ロ首脳会談でも、首相はロシア大統領に抗議するどころか、静かな環境で話し合いたい、などとこちらから話を持ちかけている始末です。
 東シナ海では、自民党時代の政治合意を無視して、中国ガス田の生産開始が疑われており、尖閣諸島周辺では中国のヘリが海上自衛隊護衛艦に異常接近するなど不穏な状況ですが、菅総理がなにか中国に対策を講じた気配はありません。
 こじれてしまった普天間基地移設問題については、何一つ提案どころか対処行動すら起こせない状態で、米国からは全く信用されず、我が国の安全保障に重大な弱体化を招いたままです。
 こうした国家運営の基本となる外交・領土・安保問題について菅首相は、何一つ手を打てないどころか、事態を悪化させるばかりです。


◆ 思いつき政策を出し続ける首相

 また首相は 5 月26日、OECDでの演説で 1 千万戸の屋根に太陽光パネルを設置することを目指す考えを表明しましたが、担当の海江田経済産業大臣は、これを首相の帰国後に聞かされたと明らかにしました。
 世界に向けて発表された日本の政策を担当大臣すら知らず、首相は一体どのように決めたのでしょうか。
 昨年の参院選直前に突如発表された消費税引き上げや、閣内の合意のとれていない突然のTPP参加宣言など、菅首相の思いつき発言は、国政を攪乱し続けています。


◆ 本当に限界を超えている菅内閣

 私たちが内閣不信任案を出した理由をご理解いただけるでしょうか?
 大震災下の非常時に政治闘争をしているべきではない、政治は何をやっているんだ、というお叱りも甘んじてお受けしたいと思います。
 しかし、前号の週刊新藤で指摘した危うい原発事故対策を含め、眼前で起こっている国政の不手際をこのまま放置することはできません。


◆ 一刻も早い退陣と本格政権の樹立を

 そもそも退陣を表明した指導者が新たな政策決定を行うことが無責任です。また、今後外交交渉を行う他国の首脳がいる筈もありません。
 今必要なのは、有能な指導者と強力な政治体制の構築であり、そのためには一刻も早い指導者の交代と政権の補強が不可欠なのです。
 とは言っても、基本政策の合意なき安易な大連立や、旧い小沢政治との合流は受け入れられません。
 一方、現状では国政選挙の実施はとても出来ません。しかし、9 月22日までには被災地で延期されている地方選挙が実施され、整備される選挙人名簿をもとに、秋以降の総選挙は可能となります。
 私が考える今後のプロセスは、まず菅首相退陣後、期間を区切り、復旧のみをテーマとする短期・暫定的な内閣をつくり、被災地に今すぐ必要な予算や法律を成立させ、復旧事業を進めます。
 本格復興に向けた政策や新年度予算は、秋口の解散総選挙で誕生する本格政権が取り組むこととします。
 その時には、政界再編成を世代交代と併せて行い、衆参のねじれ現象も一挙に解消を図るのです。
 新しい国家ビジョンを掲げ、国民の信を得た安定・強力政権が誕生することになれば、国政の課題は驚くべきスピードで実行されます。
 国民が共有できる目標に向け、みんなで力を合わせてがんばれば、日本をもう一度復活させることが出来ると思いませんか?
 こうしている間にも民主党内の混乱は続き、政治の信頼は失われるばかりです。私は自民党内、さらに志を同じくする他党議員とも連携し、この国の再生にとって最良の道を目指して行動して参ります。



 新 藤 義 孝