8 月25・26日、私は衆議院安全保障委員会理事として視察を行いました。沖縄の那覇基地から自衛隊の飛行機を使用し、東シナ海の洋上にあるガス田とその先にある尖閣諸島を上空から視察、その後に我が国最西端の与那国島に着陸し、町長始め町議会関係者から事情を聞くという内容です。
私自身は東シナ海のガス田も尖閣諸島も過去に訪れておりますが(「週刊新藤」第49号・第115号を参照)、他党の議員も含めて安保委員会のメンバーに現状を知ってもらうことが今後の国会議論のために重要だと考え、理事会で私から企画し、与・野党理事の賛同を得て実施されました。
◆ 東シナ海ガス田開発の現状
まず東シナ海のガス田に向かいました。中国が日中の中間線付近で開発しているガス田は、そのガス層が中間線を越えて日本側まで続いていることが確認されており、我が国は中国に対し単独開発の中止を求めてきました。
度重なる外交交渉の結果、建設途中のガス田「白樺」については2008年に日中共同出資により開発することで合意し、「両国間で条約が結ばれるまで施設の開発は行わない」ということになったのです。
私は当時、交渉の当事者である経済産業省の副大臣を務めており、この問題には直接関わっております。
ところが、条約交渉が中断していた昨年の 7 月と 8 月、日本の衆議院の解散総選挙の頃、政治の混乱を見透かしたかのように、二度にわたり中国側が船で建設資材を運び込みました。当時の自民党政府は中国側に抗議し船を引き上げさせました。
この海域には自衛隊機が毎日飛んで哨戒監視活動を行い、写真を撮っています。中国側の動きは一日単位で把握できるのです。
◆ 事実を公表しない民主党政権
しかし、 9 月以降の民主党政権は、施設工事が進んでいることを国民や国会に公表しないばかりか、鳩山首相や岡田外相は中国に対し明確な抗議を行わず、「白樺」の掘削施設は完成してしまいました。政府は本年1 月の日中外相会談で、岡田大臣がガス掘削に着手しないよう合意遵守を求め、そのことが新聞報道されたことで、私たちも事実を確認することができたのです。
この報道を受け、自民党外交部会では現況写真を見せるよう外務省に要求しましたが、なんと拒否されてしまいました。その理由は「外務大臣と官房長官からの指示により写真を見せてはならない」ということだったのです。
私がかねがね訴えております民主党政権の外交の密室性や独善性が現れたものであり、今回の視察は、政府が写真を見せないなら、国会議員が直接自分の目で確かめるしかない、という想いで行ったものです。
◆ 施設の完成を自らの目で確認
航空自衛隊那覇基地から自衛隊機に乗り込み洋上を40分程度飛行すると、ガス田と掘削施設が見えてきます。問題のガス田「白樺」は、完全にやぐらが組み上がっており、デッキ部分のみだった 2 年前と明らかに違っていることは一目瞭然です。
施設の先端には自らの主権を誇示するかのように中国国旗が掲げられておりました。
◆ 我が国固有の領土、尖閣諸島
次に向かった尖閣諸島は我が国が一貫して平和裏に領有してきました。ところが、1969年に国連の調査で周辺海域に石油・天然ガス等のエネルギー資源が存在することが分かると、中国と台湾がその領有権を主張し始めたのです。
尖閣諸島は日本固有の領土であり、領有権問題は存在しておりません。資源目当ての他国の主張を受け入れることは絶対に出来ません。
尖閣諸島の中で最も大きな魚釣島には、今でもかつて日本が作った住居跡や灯台、水路等が残っています。
上空からの視察では魚釣島の周囲を何度も旋回し、安保委員会のメンバーと共に、改めてしっかりと島を目に焼き付けてまいりました。
◆ 防衛上の要地、与那国島
上空視察を終え、自衛隊機は与那国島に着陸しました。沖縄本島から500キロ、台湾の東約110キロに位置する日本最西端の「国境の島」は、東シナ海の中国海軍の活動活発化を受け、我が国防衛上の重要性が指摘されています。
沖縄本島以南では宮古島に自衛隊のレーダー基地が置かれているのみであり、この地域には防衛力の空白が生じているのです。
2008年には与那国町議会で自衛隊誘致の決議が可決されました。与那国島を含む南西諸島への防衛力配備は私も安保委員会で提案しており、今回の委員会理事による視察は、この実現に向けた強いメッセージになると考えています。
また与那国町議会は外国人参政権に反対する意見書も採択しています。昨年 8 月の町長選挙では、自衛隊誘致賛成派の町長が僅か103票差で当選しました。外国人参政権が付与されれば、日本の防衛力強化を阻止するために母国の意をくんだ永住外国人が住民票を移し、自衛隊誘致反対の町長を当選させることもできることになってしまいます。
◆ 民主党政権の密室・弱腰外交
今回の視察のテーマは資源確保、領有権、防衛力整備といういずれも国家の基本となる問題です。
民主党が政権を取って以来、わずか一年も経たないうちにこうした国の根幹が揺らぎ、弱体化しています。
都合の悪いことは国民に隠しつつ、言うべきことをはっきり言わない稚拙で弱腰な外交は、他国に付け入る隙を与え、我が国の国益を大きく損ねてはいないでしょうか?
東シナ海では中国海軍艦艇による航海訓練が常態化し、日本のEEZ内で中国の資源調査船が勝手に活動していたことも判明しました。
逆に日本の調査船が日中・中間線の40キロも手前の日本側海域で中国政府船に追い出されるという事件も起きています。
7 日には尖閣諸島で中国漁船が違法操業し船長が逮捕されましたが、中国の外務省報道官は日本に抗議しつつ「尖閣諸島はもともと中国の領土だ」と言い放ちました。
中国は東シナ海の実行支配を確実に強めるため、既成事実を重ねる行動に出ているのです。
国政の第一優先事項は国民の安全と豊かなくらしのために、国家の主権と国益を考える事だと思います。
今回の視察はこうした基本を胸に刻む良い機会となりました。自分の目で確かめたことを有効に活かし、精一杯活動してまいります。
新 藤 義 孝 |