週刊新藤第204号 「日韓併合百年」首相談話に反対する~政府の誤った外交への断固たる抗議~

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今回の談話発表に関し、創世「日本」会長の安倍晋三・元総理との動画がホームページにあります。ぜひご覧になってください。併せて、週刊新藤「竹島特集」も発行します。ご一読をよろしくお願いします。


◆ 首相談話の閣議決定と反対署名

 8 月10日、政府は「日韓併合百年」を迎えての「内閣総理大臣談話」を閣議決定しました。私は、我が国の国益を損なうものであるとして談話を発表すること自体に反対していただけに、大変残念であり、また強い憤りを感じております。
 私が参加している保守政策集団「創生日本」は、政府が日韓併合百年にあわせた首相談話を検討しているとの報道があった段階で、これに強い抗議の意を表明し、談話発表に反対する署名運動を行いました。
 8 月 6 日(金)の深夜から11日(水)という短期間に、かつインターネットによる電子署名に限定したにもかかわらず全国から14,178人もの方にご署名をいただきました。この場を借りて皆様のご協力に心より御礼申し上げます。
 自民党では 8 月10日の談話発表当日の夕方 5 時半より外交部会を開きこの問題について議論をしましたが、私はこの場で三つの指摘をさせていただきました。


◆ ①出す必要のなかった総理談話!

 まず一つ目は、そもそも今回の首相談話は出す必要のないものだったということです。
 私は外務省の担当者に「首相談話は以前から外交当局として準備をしていて、どのような政権であっても発表することになっていたのか」と質問しました。答えは、「外交当局として以前から準備をしてきた訳ではなく、本格的な作業を始めたのはここ数週間」というものでした。
 つまり、外交当局として全く想定していなかったにも関わらず、内閣が勝手に出すことを決めてしまったのです。
 しかも与党・民主党内の議論もほとんど行われておりません。国益に直結する政府の外交方針が、議論もなく偏った思想を持つ一部政治家の主導により、乱暴に決定されてしまうことに強い危惧を感じています。


◆ ②従来の政府見解を逸脱!

 二つ目は首相談話の文言に関してです。談話では、日本の植民地支配が韓国の「意に反して」行われた、とされていますが、この表現は明らかに問題です。
 1910年の韓国併合条約について従来日本政府は、条約は合法であり「両者の完全な意思、平等な立場において締結された」との立場に立っています。合法であったものが、1965年の日韓基本条約によって「もはや無効である」と確認されたのです。
 しかし韓国側は、そもそも併合条約は無効だったと主張しています。日本側が「意に反して」という表現を使ってしまえば、このような韓国側の主張を受け入れ、従来の日本政府の立場を変更して、併合条約の違法性に踏み込んでしまう危険性をはらんでいるのです。
 政府は、今回の談話はこれまでの政府見解の枠内において出されたものだと言っていますが、上のような意味で従来の政府の考え方を大きく逸脱しています。
 1998年の小渕総理・金大中大統領による日韓共同宣言で「20世紀の遺産は清算」されたはずですが、日本は自ら再び過去に囚われた不毛な謝罪外交に立ち戻ることになってしまいます。


◆ ③国有(皇室)財産の引き渡し!

 談話の中では、朝鮮半島由来の貴重な儀典書である「朝鮮王朝儀軌(ぎき)」を韓国に引き渡すことも表明していますが、三つ目はこれです。
 「儀軌」は国有財産であり所管は宮内庁です。宮内庁が管理するということは、皇室財産ではないのか?私のこの質問に対する宮内庁の答えは「我々が管理しているが天皇陛下の持ち物という訳ではない」というものでしたが、皇室のお世話をする宮内庁が管理するものである以上、それを安易に他国に引き渡すことは問題です。
 また、植民地支配へのお詫びと関連づけて「儀軌」を引き渡すのであれば、1965年に締結した日韓請求権協定によって完全に決着したはずの請求権放棄問題が再び蒸し返される可能性があります。
 談話では「儀軌」を「返還する」ではなく「お渡し」するとしていますが、引き渡しという行為自体によって、賠償問題を再び外交問題化させたい人たちにその口実を与えてしまうことは否めません。
 そもそも、国が所有する財産の引き渡しには当該国との間に新たな条約を締結し、国会の承認が必要です。
 政府は今回、首相談話によって韓国側に引き渡しを約束してしまいましたが、我々自民党は当然この問題について政府を追及します。
 「ねじれ」国会下で引き渡しが承認されなかった場合、政府は韓国に何と説明するのでしょうか。


◆ 竹島での会議開催の日に発表?

 更に発表のタイミングも最悪でした。談話が発表された 8 月10日は、実は韓国の国会の「独島領土守護対策特別委員会」が竹島に上陸して初めて会議を開催する日だったのです。
 当日は、台風の影響により竹島での委員会は延期となりましたが、もし予定通り行われていれば、韓国が竹島の不法占拠を正当化する行為を行ったその日に、その韓国に対してお詫びの談話を出すという、何とも間抜けなことを、日本政府が行うことになってしまったのです。
 私は外交部会で外務省の担当者に対してこのことを追求しました。しかし驚くことにその担当者は、当日の竹島での委員会開催状況を把握しておりませんでした。現政権の竹島に対する姿勢がよく分かります。


◆ 先人の遺志を受け継ぐ責務

 今年は、戦後65年の節目の年でもあります。我々は悲惨な戦争を二度と起こしてはならず、そのために世界の平和と友好の輪を広げていかねばなりません。しかし、世界の平和は一国だけでは成り立ちません。
 それぞれの国には異なった主張と権益があり、まず自国の主権と国益をしっかり主張しつつ、他国と交わっていくことは外交の基本中の基本です。
 私たちの祖先は家族のため、大切なものを守るために、かつて国の一員として自らを犠牲にすることも厭わずに国家を存続させてきたのではないでしょうか?
 平和な時代に生きる私たちは、この先人たちの思いを受け継ぎ、それを実践していく責務があるはずです。首相談話に反対するのも、竹島の不法占拠を許さないのも、根本は同じです。私は国や領土を軽んじる行為が許せないのです。
 この国にとって大切なものを守り抜くため、今後も精魂込めて活動してまいります。


 新 藤 義 孝