第194号 予算審議に抵抗する理由~政権担当能力無き政府~

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学生団体ivote(アイボート)の企画により、大学生の皆さんと国会で懇談を行いました。
若い人たちが将来に希望を持ち、明るく誇りの持てる国づくりを進めることが私の責任です。


 平成22年度当初予算の衆議院通過を巡り、政府・与党と自民党は先週より激しく対立しました。自民党の審議拒否については賛非両論さまざまなご意見を私も頂戴しました。
 今号では、なぜそこまでして政府を追及しているのか皆さまにご報告させていただきます。
 その理由は大きく 2 つあります。第一に、予算編成を行う政府・与党の信頼性の問題です。政治とカネを巡る重要な疑惑を一切払うことなく国民に責任ある政策を実行できるわけがありません。
第二は、予算が本当に適切な編成となっているか、という点です。国会の最も重要な仕事は予算編成です。その編成と執行の全責任を負う政府は、みんなのために公平・公正で効果的かつ持続可能な予算を編成しなければなりません。
 今回の政府提出予算案はあまりにもずさんで場当たり的です。これを是正しなければ我が国の財政運営は今後、極めて危機的な状況に陥ることになってしまうのです。


◆ 鳩山首相の巨額脱税疑惑

 鳩山首相の母からの政治資金提供問題は全く解明されておりません。首相が 7 年間のうちに提供を受けた12億円のカネは、贈与であれば脱税になり、寄付であれば政治資金規正法違反になります。このような重大な問題にも関わらず、首相は未だに詳しい説明をしません。母からの毎月1500万円の「特別子ども手当」は、国民の眼にどう映るでしょうか。


◆ 小沢カネまみれ疑惑

 小沢幹事長の資金問題もまだ終わっていません。土地に関する政治資金収支報告書の虚偽記載疑惑に加え、政党解党時の公金横流し疑惑、そしてゼネコンからの裏金疑惑と、解明されていない問題が山のようにあるのです。
 小沢氏は国民の前での説明を避け、未だに政権与党の最高実力者として権力の中枢にいます。
 疑惑まみれの権力者が裏で采配を振り編成した予算を、どうして信頼できるのでしょうか?


◆ 日教組からの裏金疑惑

 また先の総選挙において民主党の小林千代美議員が北海道教職員組合から1600万円もの違法な闇資金の提供を受けていた疑惑も出てきました。日教組が支援する民主党議員の選挙を丸抱えしていたのでは、と指摘されております。
 日教組が受け取っている組合費は公務員の給料から支払われており、国民が払う税金がその原資です。
 このような疑惑を解明せずに予算審議を進めることは出来ません。


◆ 箇所付け漏洩問題

 道路などの公共事業の箇所付け漏洩問題もあります。自民党政権下でも箇所付けの連絡は、4 月に予算が成立した後に行っておりました。
 しかし今回は、予算審議が始まる前の 1 月末に国交省の政務三役から民主党各県連に内示され、一部は自治体にも流出しました。
 しかも、民主党組織を通じて陳情が上がった事業は予算が増額され、自民党との関連の強い事業は減額されているという極めて恣意的な操作が行われていたのです。
 これは、予算審議をないがしろにする行為であり、民主党が公共事業による利益誘導政治を裏で行おうとしている証拠でもあります。
 政・官・業の癒着の打破を掲げていた民主党の看板は、偽りだったのでしょうか?


◆ 予算編成の原則を知らない?

 予算の中身そのものにも問題点がいくつもあります。まず、そもそも鳩山内閣は予算編成の基本原則を無視しています。もしかすると知らないのかもしれません。
 毎年続ける恒久的な政策は、当初予算を組み恒久的な財源でまかなう。一方、景気対策など一時的な政策は補正予算を組み臨時的な財源でまかなう。これが国家予算を組む時の大原則であり、我々自民党はこれにのっとって予算を編成してきたのです。
 しかし民主党政権はマニフェストの目玉である子供手当てなどの政策を、恒久財源を示せないまま実施しようとしています。
 無駄の削減と埋蔵金の活用はまさに画に描いた餅であり、今回の予算編成を認めることは、我が国の財政運営路線が際限のない国債発行に頼る路線になることを認めることになってしまいます。
 国家の財政規律を守るために、これまで政府は予算編成する際に、財政運営に関する中期財政プログラムを策定してきました。


◆ 中期展望なき財政運営

 5 年程度の期間の中で歳出・歳入の全体枠を設定し、調達する国債発行額の限度を設定してきたのです。
 この国の長期債務残高は先進国最悪の863兆円であり、これ以上悪化させないことが至上命題であることは誰もが知っています。
 しかし、民主党政権は予算編成にあたりこの中期財政プログラムを作成しておらず、現在審議中の予算案は先の展望のない、いわばその場しのぎのご都合予算になってしまっているのです。
 今回の予算編成を認めることは、今後政府によって続けられるであろう放漫財政と恒常的な赤字体質を認めてしまうことになるのです。


◆ 自ら提案した予算の無駄を自ら仕分け?

 更に決定的におかしな点があります。民主党が来年 4 月に事業仕分けの第二弾を行うとしていることです。
  4 月に事業仕分けを行うということは、自ら提案し現在審議している来年度予算案に無駄があることを自ら認めていることになります。
 提案者が「非がある」と認めている予算を、どうして審議することができるでしょうか?


◆ 政権担当能力なき政府

 鳩山内閣の政権担当能力には大きな疑問があります。財政・経済・外交など国家運営の実務能力が著しく欠如しているのです。
 自民党は、野党だから反対しているのではありません。私も審議拒否には強い違和感があります。この国の財政、この国の将来に強い危機感を抱くからこそ、現政権と対峙せざるを得ないのです。
 来年度予算案の審議は、単年度の審議にとどまらず、民主党政権による国の予算編成や財政運営の方針転換を認めるという点において、今後の日本の方向を決める重要なターニングポイントになります。
 私は国を想う心と政治的信念に基づき、国家運営が少しでも改善されるよう、与えていただいた職責を精一杯果たしてまいります。


 新 藤 義 孝