第190号 政府による天皇陛下の「政治利用」に断固抗議する~この国に起きていること~

0190-01.jpg

自民党のホームページ上に、ネットメディア局長として私が企画した
J-Station 自民党ステーション(http://www.ldplab.jp/station/)がこのたび開設されました。j-station_logo.jpg 
楽しい動画満載ですのでぜひご覧になってください。


 今、私たちの国が揺らいでいます。鳩山政権が誕生して 3 ヶ月、回復しかけていた景気は政権の経済運営の稚拙さの中で勢いを失い、未だにその対策すら決まらず予算編成もままなりません。
 「混乱と迷走」。これが今の日本を取り巻く情勢を端的に表す言葉になってしまいました。
 しかし、私は最近になって、この混乱は新政権発足直後の不慣れさから来るものだけとは言い切れない、と思うようになりました。
 もしかすると今度の新政権は、国家の基本方針や価値観そのものを変える革命政権を目指しているのでは、と思うようになったのです。
 その危険な兆候は内政・外政両面に見受けられますが、今号では我が国の外交面における変化を皆様にお伝えさせていただきます。


◆ 日米関係の揺らぎと軋み

 言うまでもなく、日本の外交と安全保障の基軸はアメリカとの同盟関係です。日米安保体制があるからこそ、日本は、朝鮮半島や台湾海峡など未だ不安定な要素を抱える東アジアにおいて、社会の安定を保つことができ、政治的経済的な影響力を高めることができているのです。
 普天間基地の移設問題にかかる鳩山政権の不誠実な対応は、日米関係にかつてないほどの揺らぎと軋みを生じさせました。
 米側は日本の現政権との関係構築を、ほとんどあきらめてしまったと私は感じています。
 鳩山首相の度重なる方針のぶれやそのとき限りの軽い言葉に、米国も沖縄の人々も振り回されています。
 なぜこれほどまでに具体的な腹案も無く、結論を先送りしているのか。これまで実務を積み上げてきた日米の外交・安保関係者たちは困惑し、あきれ果てています。
 しかしながらこれを鳩山首相の決断力の無さと考えず、野党時代からの持論である「常時駐留なき日米安保」を模索するための時間かせぎ、と考えたらどうなるでしょうか。
 これは国防を米国に依存し、軽武装で経済を成長させてきた日本のあり方を根本から変えるものです。
 しかし現在の東アジアの状況を考えると、仮に米軍の駐留がなくなれば、その分日本の防衛力を強化せねばなりません。現在の日本の防衛予算 4 兆 7 千億円はGDP比0.9%で世界の上位100位にも入りません。
 韓国並みにするだけでも防衛予算は14兆円まで膨れ上がります。
 ミサイル防衛も情報は米偵察衛星に依存し、自衛隊の運用は全て米軍との共同を前提とする現在の構図を変えるならば、膨大な費用とリスクを覚悟しなければなりません。
 米軍の抑止力を失った日本の東シナ海の防衛線はどう確保するのでしょうか。
 こうした覚悟も無いまま日米関係を軽視する鳩山政権の危険性を、私は強く指摘したいのです。


◆ 中国への傾斜

 一方で、中国への傾斜が目立っています。民主党の小沢幹事長は党所属議員142人など総勢640人を引き連れて中国を訪れ、中国側は胡錦涛国家主席が訪中した民主党議員全員とのツーショット写真の撮影に応じるなど、最大級の歓迎でこれに応えました。
 日中友好を進展させること自体は非常に良いことであり、何の問題もありません。しかし、日米関係がぎくしゃくしているこのタイミングでの大訪中団は、外交センスの無さなのか、それとも日米関係の変節と連動した日中関係の緊密化を狙ったものなのか、注視する必要があります。


◆ 政府による天皇陛下の「政治利用」

 小沢訪中団の直後に来日した中国の習近平・国家副主席と天皇陛下との特例会見は大きな問題です。
 これは、陛下が外国要人とお会いになる際、1 ヶ月前までに文書で正式に申請をするという「 1 ヶ月ルール」を無視した政府の強い要請により強行されました。
 陛下のご会見は、その国の大小や政治的重要性を超えたところで行われており、そこに政府の政治的要請を持ち込むことは、天皇を政治的に利用しようとするものであり、憲法上からも絶対にあってはならないことです。
 しかし、今回の習副主席の場合、日本側への要請は 1 ヶ月前を切った11月下旬に為され、当初日本側は「 1 ヶ月ルール」を理由に断ったにも関わらず、中国の要求を受けた首相官邸が宮内庁の強い反対をあえて押し切り実現させました。
 しかも、この背景には民主党の小沢幹事長側から首相官邸への働きかけがあったとも伝えられています。
 小沢幹事長の民主党訪中団への異例の大歓待との関連が取りだたされるのは当然です。


◆ 小沢氏の不勉強と独裁手法

 小沢氏はこの特例会見を憲法の定める天皇の「国事行為」と断じつつ、「陛下の行為は国民が選んだ内閣の助言と承認で全て行われる」と質問した記者を恫喝するように主張しました。
 しかし、憲法は天皇が行う国事行為として国会召集や衆院解散を記しておりますが、外国賓客との会見は国事行為ではなく、天皇の意思を反映した「公的行為」と分類されているのです。これは小沢氏の不勉強を物語るものであり、唯我独尊の解釈を用いた独裁的政治手法の証ではないでしょうか。このような政治利用を目的とした解釈が許されるわけがありません。
 私も所属する超党派の真・保守政策研究会では緊急集会を開き、政府に断固抗議すべく決議をまとめ、鳩山首相に面会を求めましたが、なんと多忙を理由に首相も官房長官も面会を拒否したままです。
 自民党では17日に、石破政調会長を委員長に「天皇陛下の政治利用検証緊急特命委員会」が設置され、この問題を徹底的に追求し政府を質すことにしています。


◆ 民主党政権による外交の変質を問う

 民主党政権は従来の日米、日中関係を見直し、日本外交の変質を狙っていることがみえてきます。
 また、選挙に勝ちさえすれば、自由に国を動かすことができる、と錯覚しているのではないかと危惧します。
 問題は、このような根本的な外交方針の変化が、国会の議論も、国民への説明も無しに行われようとしていることです。
 私は今後の国会で、このことをしっかりと政府に確認し、議論を深めなければならないと考えています。



 新 藤 義 孝