
◆ 日本株一人負け
衆議院総選挙から 1 ヶ月が経過しました。民主党連立政権の経済政策の基本は、高速道路の無料化や子ども手当の大幅拡充、ガソリン税の暫定税率廃止や農家への戸別所得保障などにより、国民の負担を減らし国から国民へ直接支給を増やすことにより、国内の消費を刺激して経済成長を目指すというものです。
景気を良くして、経済成長を実現できなければ、国民の負担を減らし支給を増やすという政策は、絵に描いた餅になってしまいます。
10月に入り東京株式市場の日経平均株価は一万円を割り込んだ状態が続いています。衆院選直前の8月26日には今年の最高値を付けましたが、新政権発足後の混乱と日本企業の競争力を弱めるような主要閣僚の発言がその原因と思われます。
世界の主要国の株価指標( 8 月28日と 9 月29日の終値比較)は、
日本=▼3.8%、米国=2.1%
英国= 5.1%、独 =3.5%
となっており、日本を除くいずれの国もプラスで、3 カ国の市場とも年初来の最高値を 9 月に更新しています。株価の世界では日本が一人負けの状態にあるということを私たちは認識しなければなりません。
業種別の下落率が大きいのは、証券、銀行などの金融株です。亀井金融担当大臣が、中小企業の資金繰り対策として打ち出した債務の返済猶予制度の創設は、不良債権の増加懸念となり、銀行株の売りが集中しています。
鉄鋼株は、鳩山首相の「温暖化ガスを2020年までに1990年比で25%削減を目指す」という発言をきっかけに大きく下落しました。鉄鋼業のガス排出量は製造業の33%を占め、ガス削減のための企業負担が増大するとの懸念が拡がったからです。
輸出関連株であるトヨタ自動車やパナソニックなどの下落は、海外との取引想定レートを超えて円高が進んでいることが、企業の収益を圧迫するとの見方からですが、藤井財務大臣の円高容認発言が発端となっています。
株価は半年ほど先の経済の状態を示すと云われておりますが、今の状態は先行き不透明な日本経済を表すものとして、私はとても心配しております。
◆ 予算の執行停止の意味
政府は10月 6 日、総額14.7兆円の21年度補正予算のうち2.5兆円の執行停止を決定しました。執行停止で生み出した財源を、民主党が22年度予算で実行を公約した政策に充てるためです。
しかし、民主党の選挙公約全てを実行するためには約7.1兆円の財源が必要であり、鳩山首相は各省に対しさらなる上積みを指示、来週までに 3 兆円超の予算の執行停止を目指すとのことです。
このことは実体経済にどんな影響を及ぼすことになるのでしょうか?
主な凍結事業として、厚生労働省は失業対策である緊急人材育成・就職支援基金のうち4359億円、文部科学省は全国の小学校・中学校に設置する太陽光発電パネルや電子黒板の導入など2814億円、農水省は農地を貸出した零細農家などを支援する基金のうち4763億円、国土交通省は高速道路の 4 車線化の取りやめなど公共事業のうち8875億円を執行停止としました。
新政権は前政権が編成した予算のムダ減らしのためにこうした作業を行うと主張しております。しかし、民間シンクタンクの試算では、3 兆円分の予算を執行停止すると、我が国の21年度の国内総生産(GDP)を0.4%押し下げるとしています。
その影響はこの10月から翌 3 月までの半年間に集中することになり、景気への影響が懸念されます。
これまで景気を引っ張ってきた定額給付金やエコポイント制度、エコカー減税といった景気対策の効果が薄れる頃に、その次の対策として予定していたのが今回執行停止となった公共事業やスクールニューディールといった事業なのです。
では、今回の新政権の措置が地域経済にどんな影響を及ぼしているのか、検証してみましょう。
21年度補正予算は 5 月29日に国会で成立しています。成立した予算を地域で実際に使うためには、各自治体の議会で補正予算の受け入れの議決を行わなければなりません。
◆ 川口・鳩ヶ谷の補正予算
川口・鳩ヶ谷両市では先月開催した 9 月市議会で、国からの景気対策予算を市に歳入として受け入れるための補正予算が議決されました。
その額は川口市で約 9 億 3 千万円円、鳩ヶ谷市でも約 2 億 6 千万円となります。その使い道は、経済危機対策臨時交付金や学校情報通信環境整備費として、学校給食で使用する陶磁器製の食器を購入したり、学校へ地デジのテレビや電子黒板等を購入設置しようとするものです。
これらは、景気対策として主に市内の事業者やお店への工事発注や物品購入を前提に、広く細かく地域経済に効果が発揮されるように計画されておりました。
◆ 執行済み額は0円!!
ところが今回、新政権の補正予算の執行停止方針が打ち出されたことにより、川口・鳩ヶ谷両市の予算は、執行出来なくなっているのです。
市議会で補正予算の議決をしたものの、実際にいつ入金されるのか、金額の変更・減額もしくは執行停止があるのか、現状では国からの連絡が一切ないため、1 円の契約も行っていない状態なのです。
我が国の景気対策事業は、次に打つべき具体的な計画もなく、すでに成立済みの予算も執行されておりません。
埼玉県内の企業倒産件数は09上半期で前年比28%増となり、建設業に加え製造業の景況が深刻になっているなど、景気は先の読めない不気味な展開になっています。
一刻も早く国会で景気対策や予算執行の議論を行い、実体経済を動かすべきだ、何をやっているんだ、と皆さまからのお叱りの声が聞こえてきますが、審議の場となる臨時国会を新政権は10月末まで開こうとしておりません。
新政権へは、予算のムダ減らしをしているつもりが、予算の執行停止により地域経済を止めてしまっていることを強く訴えてまいります。
新 藤 義 孝 |