![]() APEC(アジア太平洋経済協力)貿易大臣会合(5/31-6/1ペルー)に出席。〔左上〕 会議の合間には、シュワブ・米国通商代表〔右上〕、ソホ・メキシコ経済大臣〔左下〕、 キム・韓国通商交渉本部長〔右下〕ら、各国の閣僚と意見交換を致しました。 |
現在、日本は言いようのない不安と不満に包まれています。それは将来の希望が見えてこないからです。少子高齢化と人口減少社会、消費の低迷はモノ余り現
象となり、お米を作る農家は減反調整を強いられています。このまま、有効な策を打てなければ、私達の国は経済的に縮小してしまいます。
一方で世界は途上国を中心に人口が急増し、中国、インド、ブラジル等では経済が急成長しています。その中で、食糧が足りない、水が無い、モノが足りない
という問題が深刻化し、貧困問題、食糧問題の解決が急務となっています。
◆ 日本の新しい生きる道
日本と世界の流れは正反対になっていることに皆さんはお気づきのことと思います。
私はここに日本の新しい生きる道があると考えています。今や国際社会はグローバル化し、世界中の人やモノ、お金や情報が成長の源泉を求めて国境を越えて
縦横無尽に移動しています。
日本は世界が求めているもの=技術、人、ノウハウ、資金を提供し、日本に足りないもの=市場、消費者、労働力を得ることができれば、日本が抱えている人
口減少、経済縮小の悩みを打ち消し、大いなる希望が見えてくると思いませんか。
その具体化のためには、自由貿易体制の確立と経済連携協定のネットワーク化が必要です。そして、この日本の新しい生きる道を確立するために、外交や貿易
体制の強化、国内規制などの構造改革を進め、併せて国際平和やテロ対策、貧困、食糧問題や、地球環境問題等に私達はより積極的に行動し、国際的な信頼と信
用を得なければなりません。
◆ APEC貿易大臣会合
私は5月31日と6月1日、ペルーで開催されたAPEC(エイペックと呼びます。「アジア太平洋経済協力」の略)貿易大臣会合に出席致しました。この会
議は、北米(アメリカ、カナダ、メキシコ)、南米(ペルー、チリ)、オーストラリア、ニュージーランド、東南アジア各国、それに日本、中国、韓国など21
の国・地域が参加し、域内の貿易・投資の自由化、円滑化を図り、経済環境を整えることが目的です。
私は、日本の代表としてこの会議に臨み、2日間に亘った各セッションで発言し、日本の提案を行うとともに、会議の合間にも、WTO(世界貿易機関)のラ
ミー事務局長やアメリカのUSTR(通商代表部)のシュワブ代表を始めとした、各国の大臣達と会談を行ったり、立ち話ながらも他国の姿勢を確認したり、日
本の提案に対する協力を求めたりしました。昼食会も夕食会も大事な意見交換の場であり、約20時間かかる移動の飛行機の中まで書類を持ち込んで各国毎の課
題の整理を行いました。その資料は分厚く準備は大変でしたが、とても良い交渉ができたと思っています。
APECの将来目標は、全加盟国が参加するアジア太平洋経済連携協定の構築ですが、経済力も法律や規制も違う国々が簡単に一つのルールを共有できる訳が
ありません。問題点を洗い出し、そのための解決策を考え実行していく息の長い取り組みが必要です。しかしAPEC域内では既に二国間や多国間による経済連
携が進んでいます。
北米地域では、アメリカ、メキシコ、カナダが北米自由貿易協定(NAFTA)を結び、この3カ国間の貿易には関税がかからず、国内と同じ条件で他国へモ
ノやサービスが流通しています。
◆ EPA(経済連携協定)の効果
日本は二国間の経済連携協定(EPA)を各国と交渉し、既にシンガポール、メキシコ、タイ、インドネシア、マレーシア、ブルネイ、フィリピン、チリの8
カ国とEPAを締結させています。
EPAは日本と相手国の経済関係全般のルールを決めるものであり、関税撤廃をはじめ、投資ルール、サービス貿易の自由化、人の移動など、様々な分野にお
ける二国間協定等をカバーするものです。
例えば、2005年4月に発効したメキシコとのEPAでは、日→メキシコへの輸出額の98%が無税、メキシコ→日への輸入額の87%が無税となります。
自動車や鉄鋼製品に係る関税負担が劇的に軽減されるとともに、メキシコはNAFTAによりアメリカへ無関税で輸出ができることから、日本はアメリカ市場向
け製品をメキシコで生産し競争力を持つことができるようになったのです。EPA発効前と比べて、日本企業がメキシコで新工場や販売会社を設立するなど日本
の投資は242%増加となり、新規・追加投資案件が拡大しています。私もペルーでの会議の合間や、その帰りにメキシコに立ち寄って、大臣や経済界の方々と
いくつか会談を行いましたが、EPAの有効性は両国ともが強く認識し、より緊密な関係を作ることで合意致しました。
◆ 9番目のEPAに障害が・・・
昨年11月のASEAN首脳との会談で、福田総理は東南アジア10カ国による「アセアン」とのEPA協定に合意し、日本政府は3月28日、締結のための
署名を行いました。国際条約の一種であるEPAは国会が承認しないと発効しません。6月11日現在、国会は野党が参院にて首相の問責決議案を可決し、以降
の国会審議は全てストップしています。この日本・アセアンEPA協定は日本が10年以内に輸入額の93
%、ASEANも全体で91%の関税が無税化されるなど、我が国の経済発展に極めて重要な政策です。
衆議院では5月22日に可決して参院に送付いたしましたが、参議院外交委員会の民主党委員長は、一切の審議に応じず、議題として取り上げてこなかったた
め、このままではEPA協定は宙に浮いたままになってしまいます。
憲法の規定により参院送付後30日目の6月21日午前零時に国会開会中ならこのEPAは自然承認となるため、これを大きな理由として国会は会期を1週間
延長することになりました。
皆様には政局優先の野党の国会運営の実情を是非認識いただくとともに、政策本意の国会審議が一刻も早く復活することを願っています。
新 藤 義 孝 |
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