サミット会場の近くには、日本のエネルギー・環境技術の粋を集めた、 近未来型住宅「ゼロエミッションハウス」が建設されます。 |
いよいよ北海道洞爺湖サミットが間近に迫ってきました。7月7日から3日間、各国の首脳は、世界が直面する様々な課題について真剣に議論することになります。今回のサミットの主要テーマの一つは、気候変動・環境問題です。
◆ 日本の技術を導入すればマイナス66%
私の持論は、「経済活動と地球環境問題の両立こそが世界を発展させる。そのカギを握るのは日本の環境技術である。」ということです。この週刊新藤でもこ
れまでに何度か取り上げて参りましたが、私達日本人が思っている以上に、我が国は世界最高の省エネ技術を有する環境技術大国です。
エネルギー効率は、日本が1のエネルギーで産み出すGDPを、米国では2倍、韓国では3.2倍、なんと中国では8.7倍、さらにインドでは9.1倍のエ
ネルギーが必要となります。
仮に日本並みのエネルギー効率を持つ機械やエアコン・TVなどの製品を世界の各国で導入したとすれば、エネルギー消費量は現状よりもマイナス66%!に
なります。
もちろん机上の計算ですが、日本の環境技術は、資源の無い国の必然とはいえ、それくらいものすごいパワーを持っていることを、もっと皆様に知ってもらい
たいと思います。
◆ ゼロエミッションハウス
今回のサミットには、主要国の首脳が集まるとともに、世界各国のメディアが洞爺湖にやってきます。そこで我が国の世界最高水準のエネルギー・環境技術の粋を投入して近未来型住宅「ゼロエミッションハウス」を建設いたします。
ゼロエミッションとは、「排出が無い」という意味で、省エネだけでなく、生活に必要なエネルギーを、太陽光発電や小型の風力発電など新エネルギーで発生させることによって、CO2の排出量ゼロを実現した家のことです。
◆ 自然エネルギーや新素材の活用
太陽光や風力など自然の力を活用する技術の分野では、ガラス窓に貼れる超薄型の太陽電池があります。太陽電池は、その生産量も世界トップレベルで、日本
が技術革新で世界を牽引しています。これまでの100分の1、わずか2ミクロン(ミクロンは、1000分の1ミリ)の薄さの電池をガラス窓に張ることで発
電ができ、世界中のビルでの活用が期待されているのです。
住宅建材では、4分の1の薄さで従来と同じ効果のある新型の「真空断熱材」を壁材として用いたり、断熱ガラスを使うことによって、暖房や冷房の効率を向
上させます。また、屋根や屋上は緑化することにより、室内の温度上昇を防止します。実験では、通常に比べて2度程度も温度低下効果があると認められていま
す。
ハウスの中には、省エネのために、エアコンや冷蔵庫、テレビ、パソコンなど省エネ家電による「グリーンIT」を随所に配置するだけでなく、蛍光灯に代わ
る次世代型の高効率照明である「有機EL照明」、照明の代わりに、鏡の原理を利用して太陽光を建物の暗い所にまで取り込み大幅な省エネを実現する「光ダク
トシステム」などを取り付けます。照明や音響を自動制御する寝室環境システムも設置します。
◆ 新しいエネルギーシステム
エネルギーを生み出す新しいシステムとして、家庭用の燃料電池技術やヒートポンプ技術に、注目が集まっています。家庭用の燃料電池は2009年度に世界
初の商品化を目指しており、従来に比べ、CO2排出量が45%も削減されます。
この燃料電池は稼働させると電力と同時に、温水も生み出します。これを利用し、ハウスの軒先では足湯のスペースを設けます。
また、ヒートポンプ技術は、空気中の熱を圧縮して冷却や加熱を行うシステムで、ガス給湯器など従来のシステムと比べて、CO2排出量が半減すると言われ
ています。
このハウスは、サミット期間中、洞爺湖から車で30分程のルスツに設置される国際メディアセンターの隣に建設します。太陽光発電や燃料電池などを生産す
る日本企業50社の協力を得て、経済産業省が建設します。週刊新藤を発行する6月30日に開館披露式典を行い、経産省を代表して私がテープカットを行うこ
とになっております。
◆ リスクをチャンスへ
環境を守る取り組みは、我々の暮らしからはじめることが重要です。このハウスを通じて、地球環境問題への対応と快適な暮らしを同時に実現できることを世界に示したい、と私達は意気込んでいます。
日本の環境技術に世界が強い期待を抱いています。そして、これら環境技術は我が国産業の強みでもあります。地球環境問題というリスクをチャンスに変える発想で、世界の持続的な成長と我が国の産業の発展を同時に達成できるシナリオは決して夢物語ではありません。
今回のサミットが大いなる成果をあげられるよう、皆様も是非注目していただきたいと思います。
新 藤 義 孝 |