第153号 後期高齢者医療の本当のこと -さらなる説明と改善を-



国政報告会、ミニ集会など色々な機会を通じて、
国政のナマの現状をお伝えしています。


 今号では後期高齢者医療制度について書きます。制度がわかりにくく、また政府の説明が足りないなど不満や疑問の声が大きく上がっています。医療保険制度
は国民の命を守り、暮らしの安心を支える最も大切な制度であり、出来るだけ公平で納得できるものにする必要があります。まず皆様にその仕組みを理解しても
らうとともに、私達政治も街の声に耳を傾け、見直すべきものは見直しを行わなければなりません。


◆ かかりつけ医による総合医療実現

 新制度の目的は、高齢者の一人一人の気持ちと健康状態にあったきめ細かな医療サービスを受けられるようにすることです。高齢者は複数の病院に通ったり、
治療が長期に及ぶことがあります。今度の新制度では高齢者の方が自分でかかりつけ医を選ぶことが出来るようになり、一人の医者が総合的に高齢者の治療の面
倒を見てくれるようになります。
 担当医は、治療方針や検査予定などを説明し、きめ細かい治療をしてくれます。手術や入院が必要となった場合には、設備の整った専門医のいる病院を紹介し
てもらえるほか、退院後の看護や介護も地域の医療機関と連絡しあって見てもらえるようになります。急に病状が悪化した時に救急車に乗ったまま、たらい回し
にされる事例がありますが、そうしたことも減少されるようになると期待しています。新制度になって診療回数が制限される訳でもなく、担当医を選ぶかどうか
も患者の意志です。担当医以外のお医者さんにも自由にかかれます。



◆ 保険料負担を公平に

 高齢者の約8割が加入する国民健康保険では、住んでいる自治体によって保険料に差がありました。最も低い地域は東京都ですが、北海道や高知といった財政
力の弱い地域に住む方は年齢が同じなのに保険料が高くなっています。同じ県内でも市町村単位で差があります。新制度ではこれを県単位で同一料金とし、地域
間格差を解消しました。
 ちなみに従来の川口市の国民健康保険料と高齢者保険料を比較すると、個人の所得や資産状況によって差があるものの、約7割の方の保険料負担が安くなって
います。鳩ヶ谷市も大体同じような状況です。
 また、新制度では高齢世代内でも、所得の多い人には応分の負担をしてもらうとともに、所得の低い人は更に保険料が下がるように配慮がなされました。


◆ なぜ導入するのか

 急速に進む高齢化により高齢者にかかる医療費は今後増加する一方です。75歳以上の人口は現在約1300万人で、医療費は約11兆円ですが、団塊世代が
75歳以上になる平成37年には高齢者医療費は25兆円にも膨らんでしまいます。
 現在の老人保険制度では、75歳以上の高齢者も現役世代と同じ保険に加入したまま医療費をやりくりしているため、不足する高齢者医療費は現役世代が負担
しています。現制度では高齢者と現役世代の負担割合がわかりにくい上、現役世代が払う拠出金に歯止めがかからず、膨らむ医療費を誰が責任を持って抑制する
のかも明確ではありません。
 膨張する医療費をまかなうためには、高齢者にも応分の負担をお願いして、医療費自体の伸びを抑制していくしかないのです。このため新制度では、窓口負担
を除く高齢者医療の給付費を公費5割、現役世代の保険料から4割、高齢者の保険料1割と明確化しました。なお、患者の方が医療機関の窓口で支払う際の自己
負担割合については、ほとんど変わっておりません。


◆ 天引き制度はひどいやり方か

 新制度の批判のやり玉に上がっているのが、年金からの天引き制度です。そもそもこの制度は、保険料を徴収する市町村の強い要望で導入されたものです。あ
る政党のポスターには、年金天引き制度は即時止めさせます、と書いてありました。私にはまるで年金からの天引きを止めれば保険料を払わなくて良いかのよう
に感じられました。年金天引きを止めた場合、高齢者は毎月わざわざ自治体や金融機関の窓口に出かけて保険料を納めるということになります。もし万が一保険
料を納め忘れ、滞納が続けば、保険証が使えなくなり、医者にかかった費用は一旦全額自己負担することになってしまいます。
 政府・与党では現在この年金天引き制度の見直しを始めており、この秋以降、保険料の天引きは希望者のみの選択制にできないか検討しています。天引きを希
望しない人は、自治体や銀行の窓口で保険料を支払うことになります。天引きを止める人が増えれば市町村の事務処理が増えるため、選択制を導入するかどうか
の判断は市区町村ごとに決める方向で調整を進めています。


◆ 制度の改善に向けて

 今回の後期高齢者医療制度は、高齢化社会の安心を創るためのものであったにもかかわらず、国民の理解を得られておりません。説明が足りない所はさらに説
明すべく努力しなければなりませんが、最大の問題は如何に高齢者の負担の軽減を図るかにかかっていると思います。「若い頃に苦労して一生懸命に働いて税金
や保険を納めてきたのに、老後の生活まで心配しなくてはならないのか」という声に真摯に耳を傾ける必要があります。
 政府・与党は、制度の見直しを始めており、6月中にも改善策をまとめる予定です。例えば、年金からの天引き制度の見直しに加え、子供に扶養されていた親
など200万人の保険料免除を10月以降も継続することや低所得者の保険料を更に軽減する案などが検討されています。
 一方、野党4党は後期高齢者医療制度の廃止法案を参議院に提出するといいます。しかし、代わりの制度についての提案は一切なく、野党間の協議もまとまり
ません。今や目の前の現実となっている少子高齢化社会に対し、医療や年金、介護の制度の再設計は絶対に必要です。それには財源となる税制の抜本的な見直し
や道路財源問題のように硬直した予算の組み替えなど、国の運営の根本の議論を深めるべきです。
 私も必死に考え皆様に提案して参ります。


新 藤 義 孝