◆ 東シナ海のガス田
私は先月、自民党の国防部会長として、自衛隊の那覇基地から海上自衛隊第5航空群の哨戒機P-3Cに搭乗し、東シナ海の中国のガス田を視察しました。日本周辺の海上に、巨大なクレーンのような天然ガスの採掘施設があり、火を灯し実際に稼動中であることを確認しました。
中国の採掘施設は日中中間線のぎりぎり中国側にありますが、海底にある天然ガスは、日本の排他的経済水域に及んでいると考えられます。中国は、次々と採掘施設を建設し中国本土までパイプラインをひき、採掘した天然ガスを送っています。
さらに、中国は、昨年9月、このガス田付近で、最新鋭のソブレメンヌイ級駆逐艦をはじめとする5隻の海軍艦艇を周回させるなど、国益を考え着々と既成事実を積み重ねています。
◆ 日本の海洋権益
我が国は、原子力を含まずに計算した場合、そのエネルギー自給率はわずか4%に過ぎません(詳しくは「週間新藤」第106号で述べました)。一方で、日本を取り巻く海には、石油、天然ガス、ニッケル、コバルトといった海洋資源が多数存在しています。
最近では、メタンハイドレードや海洋深層水のエネルギー利用など海洋資源は大変注目されています。エネルギーと天然資源は国家の生命線であり財産です。領土や領域は、海洋権益を確定する上でも、そして、私たちが安全で豊かに暮らすために、絶対に外せない大切な問題です。
国際的には、領土問題や海洋権益の確保には、実効的な活動や事実の積み重ねが重要となります。東シナ海に目を転じれば、海洋資源の「宝の山」と言えるこの海域で、日本は未だ天然ガスなどの採掘を行うにいたっておらず、手をこまねいているわけにはいきません。
政府も平成16年7月から海底資源のデータを収集するための調査を開始しました。
また国会では、今年5月、国際法にも則ったかたちで、海洋で採掘施設などを設置する場合に安全が図られるよう、私も賛成議員の一人となって、「海洋構築物等に係る安全水域の設定等に関する法律案」が議員提出されました。
◆ 日本周辺の海の状況
日本周辺の海には、領土や海上権益を守る上で様々な懸念があります。日本は国土面積では世界で60番目の広さですが、排他的経済水域を含む海洋面積は世界第6位の海洋大国です。
北の海には未だ北方領土問題があり、今般、日本漁船への銃撃事件があり犠牲者が出るなど緊迫した状況があります。ロシア太平洋艦隊には、今も核を搭載した原子力潜水艦が配備されており、その動向には日々注目する必要があります。
日本海では、平成11年に能登半島沖で北朝鮮の不審船事案があり、今も海上で、工作船を用いた不法取引が行われている可能性も否定できません。また、先月、北朝鮮が弾道ミサイルを撃ったのもこの日本海です。さらに、北朝鮮の問題だけではなく、竹島の問題もあります。
東シナ海では、尖閣諸島の問題に加え、近年、中国が活発な活動を行っています。中国の海洋調査は、かつては日中中間線付近が多かったのですが、最近で
は、太平洋側へと移行しています。これは、中間線付近の海洋調査はほぼ終わったことを意味し、中国が自国の潜水艦の活動などのため太平洋へと関心を持って
いることを示しています。
16年11月には、先島諸島で中国潜水艦による領海侵犯も行われました。潜水艦が潜没したまま他国の領海に侵入するのは明らかな国際法違反です。また、
東シナ海上空での自衛隊機のスクランブルも急増しました。中国機と考えられる航空機へのスクランブルは、16年度は13回でしたが、翌17年度は107回
となっています。
◆ 日本の海を守れ
このような日本の海を、自衛隊は、日々、監視を行い守っています。正月もお盆も悪天候であろうと、必ず毎日、海上自衛隊の哨戒機P-3Cは、北方海域、日
本海、東シナ海の3海域を飛行し、不穏な動きがないか空から監視しています。日本の空も、24時間態勢で全国28カ所のレーダーサイトが目を光らせていま
す。いつどの地域でもスクランブルができるよう、航空自衛隊の戦闘機は即時緊急発進ができる状態で待機しています。自衛隊だけでなく、海上保安庁も、常に
尖閣諸島周辺に巡視船を配するなど領海の警備に当たっています。こうした、直接には見えにくい苦労の上に、日本の海域、領土、権益が守られています。
私も、日本が将来、安全でより豊かな国であるよう、日本の海の守りと領土問題には、今後とも、こだわりを持って取り組んでいきたいと考えています。
新 藤 義 孝 |