秋篠宮妃紀子さまのご懐妊の報にふれ、心からお慶び申し上げます。
お体をご自愛なされて、元気なお子様をお産みいただきたいと存じます。
2月7日、秋篠宮妃紀子さまのご懐妊という誠に喜ばしいニュースが入りました。秋篠宮ご夫妻にとって眞子さま、佳子さまに続く第3子、天皇皇后両陛下に
とっては敬宮愛子さまに続く4人目のお孫様となります。「皇室典範に関する有識者会議」が昨年11月末に報告書を提出して以来、女性天皇や女系天皇を認め
るかどうかといった議論が盛んにおこなわれてきました。
皇位継承の仕方など皇室の制度を定める法律「皇室典範」では、「皇位は、皇統に属する男系の男子が継承する」とされています。しかし現在、今から40年
前の昭和40年に秋篠宮文仁親王が誕生したのを最後として皇室に男子が生まれていなかったことから、このままでは皇位継承資格者がいなくなってしまうこと
が懸念されていました。
昨年末の各報道機関の調査では8割もの国民が女性天皇・女系天皇に賛成だったものが、最近の調査では6割程に低下するなど、慎重な意見も増えつつありま
す。現在、私のホームページ上の「意見箱」への投書も皇室典範改正に関するご意見がかなりあり、この問題に対する皆様の関心の高さを感じさせられます。
皇室制度の根幹にかかわる重要な問題だけに、国民の間に理解が浸透し、広く合意が形成されなくてはならないと思われます。今号ではこの問題を整理し、皆様とともに考えて行く一助となればと思います。
◆ 有識者会議の結論
総理大臣の私的諮問機関として設置された「有識者会議」が、11ヶ月17回にわたる議論の末に出した結論は、
・女性天皇及び女系天皇を認める。
・皇位継承順位は、男女を問わず第一子を優先とする。
・女性天皇及び女性の皇族の配偶者も皇族とする。
・女性宮家の設立を認める。
というものでした。同会議では継承順位をめぐって「兄弟姉妹間で男子優先」案も検討されましたが、「男子誕生を待つ期間が長くなるのは不安定で好ましくない」とされました。
◆ どう違う?女性天皇と女系天皇
女性天皇とは文字通り女性の天皇のことで、女系天皇とは母が天皇である場合に即位した天皇のことです。つまり、愛子さまが即位した場合は「男系の女性天
皇」で、仮に愛子さまが民間出身の男性とご結婚し、そのあいだに生まれた方が即位すると、男女を問わず「女系天皇」ということになります。
女性天皇はこれまで推古天皇をはじめ8人(10代)が在位しましたが、女系天皇は歴史上ひとりも存在したことがありません。
皇室はこれまで一貫して万世一系と称される男系による皇位継承を行ってきました。男系継承とは、簡単に言うと「今上天皇の父親の父親の……」と辿ってい
くと、最後には初代神武天皇にたどり着くことを示しています。女系天皇の誕生は、これまで維持されてきた男系の伝統を崩してしまうことになります。
◆ 男系か女系かをめぐる意見
男系維持派の主な意見としては、
・二千年もの男系継承の歴史的重みを充分に認識し、戦後に皇籍離脱した旧11宮家の復帰など男系維持のための方策を講ずるべき。
・女系天皇が即位すれば125代にわたり男系で継承されてきたとされる皇統は断絶し、従来とは全く別の血統の天皇となってしまう。
・女系天皇には歴史と伝統に裏付けられた正統性がなく、わが国と国民の象徴となりえない。
・一度途絶えた伝統は二度と元に戻らない。1年足らずの議論で軽々しく伝統を変革すべきではない。
・皇室の存在は世界の中でも極めて希で、諸外国の王室と単純に比較すどう違う?女性天皇と女系天皇有識者会議の結論男系か女系かをめぐる意見べきではない。
というものがあります。
女系天皇容認派の意見としては、
・皇統の意義を男系に限らず女系にも広げてよいと考える国民が増えており、男女平等や男女共同参画社会の形成という現在の潮流にも適う。
・皇位継承資格者を安定的に確保できる。側室制度のない今日では男系継承はいずれ不可能となる。
・女性天皇を容認し継承順位を長子優先とすればルールが単純で、男子が後から誕生すると順位が逆転するという不安定性もなくてすむ。
・既に60年近く一般国民として過ごしている旧皇族の皇籍復帰は、国民の理解と支持を得るのは難しい。
・女系天皇を容認しなければ、男子出生への周囲からの過大な期待が、今後も皇室への重圧となり続けてしまう。
といったものがあります。
◆ 静かな議論と国民的同意を
仮に秋篠宮さまの第3子が男子であれば、現行の皇室典範のもとでは皇位継承順位は皇太子さま・秋篠宮〈討議資料〉さまに次いで第3位となります。
ご懐妊の報を受けて小泉総理は、8日の衆院予算委員会で、皇室典範の改正については慎重に論議するという方針を表明しました。
今回の議論は、皇室制度について広い認知と理解を深めるための良い契機だったと思います。世界に類を見ない我が国固有の歴史と伝統を守っていくためにも、政争の具とならぬことを大前提に、慎重で静かな議論となるよう願っています。
新 藤 義 孝 |