◆ 世界で6番目の広さを持つ国?
小さい国土に1億2千万人もの人が住む狭い島国、日本。皆さんが抱いている私たちの国のイメージはおそらくそんな感じでしょうか。確かに、国土面積が約38万k㎡、世界で59番目の広さとなる日本は、陸地だけを見れば決して広いとは言えないでしょう。
しかし海に目を転じれば、日本の経済的な主権がおよぶ排他的経済水域(200海里=約370km)は国土面積の12倍、約447万k㎡となり、世界で6番目の広さを持っているのです。
この広大な排他的経済水域(EEZ)における海洋権益を確保することは、四方を海に囲まれ資源の9割を対外依存している私たちの国にとって必須課題です。
そのわが国の生命線とも言えるEEZ付近で、深刻な問題が発生しています。
◆ 東シナ海ガス油田問題
沖縄諸島の北西、中国大陸と向かいあった日中両国のEEZが重なり合う水域の中間線付近で中国が海洋資源調査を行い、計6カ所の天然ガス油田を確認し、採掘の準備を進めているのです。
2004年6月には、中国がガス田の本格開発に着手したことがわかり、日本政府は日中中間線付近の海域を独自に調査しました。2つのガス田は地下構造が
中間線を挟んで日本側につながっており、さらにその他の2つのガス田もそうした可能性があることを確認した上で、中国側に抗議を行いました。
しかし中国は、日本の抗議にもかかわらず採掘施設の建設を進め、2005年9月下旬には、日中中間線から4kmの位置でガス田の生産を開始しました。
昨年の暮れに操業を始めたとみられる別の採掘施設は中間線から1.5kmしか離れていないところにあり、採掘を示す炎も確認されています。
率直に言ってこの問題に関するわが国の出遅れは否めない事実であり、昨年7月には経済産業省が民間の帝国石油に試掘権を付与しましたが、まだ何も動きを示すことができません。
一方で中国は、周辺水域の実効支配をうかがう姿勢を示し、これまでに中国海軍のミサイル駆逐艦を含む艦隊によるガス田付近の警備行動や、日本領海内への中国原子力潜水艦の潜没航行を行ったり、軍事的なプレゼンスを高めています。
わが国は、外交ルートを通じて東シナ海に関する日中協議を続けており、日本側からは
① 中間線をまたがる構造のガス田については共同開発を行う。
② 中間線の西側は中国、東側は日本がそれぞれ試掘や開発を行うことに異議を唱えない。
③ 共同開発について、日中間で最終的な合意が得られるまでの間、中国側は作業を中止する。
という提案を示していますが、中国側からは明確な回答はなく、協議は難航しています。
さらに見逃してはならないことがあります。あくまで私の個人的な見解ですが、中国は東シナ海の海洋資源開発研究を30年前から続けておりましたが、実力
行使を伴う強硬な姿勢はここ数年急に顕著となって参りました。二桁台に近い成長を続ける経済の拡大とともに、軍事費、特に海軍力が著しい増加を示してお
り、最近の中国軍事力の能力と意図には十分な注意を払わなければならないと思っています。
あくまでこの問題は、両国間の外交努力において平和的に解決されなければなりませんが、竹島問題のように相手に実効支配されてからでは話し合いができなくなってしまう恐れがあります。
◆ 海洋構築物の安全水域に関する法律(案)
自民党ではこの問題の解決の一助とするために、今国会に「海洋構築物等に係るの安全水域の設定等に関する法律案(仮称)」を議員立法で提出する準備をし
ております。この法案は、わが国のEEZあるいは大陸棚で、天然資源の探査や開発等を行うことに関連して一定の海洋構築物が設置される場合に、その構築物
あるいはその付近の航行船舶の安全を確保することを目的としています。私も自民党の法案作成ワーキングチームの一員として活動しています。
また、自民党の国防部会長を拝命している私としても、国家の最大の責務は、領土・領海の確保と、国民の生命と身体の安全を守ることであり、東シナ海におけるわが国の海洋権益の確保は、主権国家として絶対に譲れない大課題です。
ぜひ皆様にもこの問題について関心を持っていただき、ご一緒に考えていただきたいと存じます。
新 藤 義 孝 |