第79号 夢を追う若者との出会い ~工藤慎太郎さんのこと~


◆ 工藤さんとの出会い

 昨年の夏、心に残る出会いがありました。議席を失っていた私は、あるマンション自治会の夏祭りに招かれました。そこで、アコースティックギターを抱えて切々と歌うステージ上の青年に目を奪われたのです。
 透明感のある素直な歌声に私は心を打たれ、ステージ終了後に挨拶を交わしたときに、夢を追う若者の情熱が強く印象に残りました。
 2度目の出会いは今年9月9日、衆議院総選挙投票日の2日前のことです。審判の日を目前に控え、私は川口駅東口で夜の挨拶運動を行っていました。その同
じ時刻に、彼は西口で、路上ライブを行っていたのです。あまりの人だかりに直接声を交わすことはできませんでしたが、タスキをはずして見ていた私が手を振
ると、工藤さんも私に合図を送ってくれました。


◆ 工藤慎太郎さんのこと

 工藤さんは、川口市朝日の出身、昭和55年生まれの25歳。幼い頃からフォークソングに傾倒していた彼は、16歳でロンドン留学を決意。地元のミュージ
シャンとセッションやライブをする生活を続けていたそうです。しかし日本に帰国してからは、果たして音楽で生活していけるのか自問自答の日々を過ごしてい
たと言います。お父さんからも家業の工場に入らないかと言われ、このまま音楽を続けるべきかどうか、まさに人生の瀬戸際だったそうです。

 そんな彼にひとつの転機が訪れます。川口駅で改札から出てきた仕事帰りの皆さんが、あまりに疲れて、元気がないように見える。自分の歌で、皆さんに少し
でも元気を与えてあげられたら・・・。そう思った彼は、駅前で路上ライブを始めました。昨年9月のことです。当初は立ち止まって聞いてくれる人もまばら
で、2・3人しか人がいないこともあったといいます。
 ところが、毎週金曜日に川口駅西口のデッキで定期的にライブを続けたところ、徐々にファンが増え、今年9月に路上ライブを卒業する頃には、駅前に300人の聴衆が集まり、交通整理の警察官まで出動するほどになりました。
 今年3月から5月にかけて、テレビ埼玉のオーディション番組で10週勝ち抜きという番組初の快挙を成し遂げ、それを見ていた歌手の八代亜紀さんから直接声がかかり、来年1月にプロデビューが決まりました。


◆ 人との出会いを大切に

 
自ら作詞作曲した「シェフ」というデビュー曲は、彼がアルバイト生活を続けていた頃のことを歌ったものです。その一節に「頑張る事が馬鹿にされる世の中だ
から、皆素直になれなくて…」というフレーズがあります。しっとりとしたメロディーとやさしい歌声が、彼のメッセージに説得力を持たせます。頑張っている
若い人たちを応援したい。素直にそんな気持ちにさせてくれる曲です。
 人の縁とは不思議なものです。9月の選挙中の駅のことを覚えていた工藤さんが、ある方にその話をしました。その人は、「週刊新藤」の配布を手伝ってくれている私の支援者の方でした。その方の紹介で、私たちは3度目に会うことになったのです。
 政治も音楽も、出会いや人とのつながりを大切にしていくことに変わりありません。
 私は、この夢を追う若者を応援したいと思っています。

新 藤 義 孝