◆ 破局に向かう日本
私は66・67号の週刊新藤で、今こそ我が国の将来のビジョンを明確にすることが政治の責任、と主張させていただきました。その最大の柱が「小さな政府と地方分権」です。
そして、この実現の鍵を握るのが今週号で取り上げる「道州制」です。
私たちの国は現在破綻一歩手前の危機的な状況に置かれています。
仮に、年収450万円のサラリーマンの家庭があるとします。しかし、年間650万円もの生活費がかかっており、おまけに抱えている借金の元利金返済に
170万円が必要なので、結局200万円の赤字と合わせて370万円を新たに借金しなければならない...「早晩この家庭はまちがいなく破綻する」と誰も
が考えることでしょう。しかしこれが、今の日本の財政状況なのです。
国の平成16年度予算の歳入は45.5兆円、歳出は82.1兆円。この差額は毎年、建設国債や赤字国債という国の借金で補っています。この借金の累計残
高は加速度的に増えており、平成17年3月末時点での国の債務残高は781兆5517億円で、過去最高を更新しています。この莫大な借金は未来へと先送り
され、次世代を担う子どもたちに背負せてしまっているのです。
◆ 江戸時代の分権連邦国家
明治以来130年間、日本は官僚主導の中央集権国家でした。「欧米に追いつけ追い越せ」。経済を発展させること、東西冷戦のはざまでアメリカと協調する
ことが国の目標だった時代には、優秀な官僚がその方針に沿って判断し進めて行くほうが効率が良かったわけです。しかし今、我が国の社会構造は大きく変貌し
つつあります。少子高齢・人口減少が目前に迫った今、日本の国体(国のあり方)をもう一度考え直さねばならない時期に来ているのです。
江戸時代は、外交や防衛は幕府の仕事でしたが、税金や治安・教育を含めて領土内のことは各藩がそれぞれ取り仕切っていました。財政負担の軽い中央政府
と、財源を含めた大きな権限を持つ自治体からなる分権連邦国家だったのです。私たちは今、この江戸時代の国のあり方を見つめ直してみる必要があります。
すなわち、政府はできる限り小さくして、マクロ経済や外交、安全保障など国の全体に係わる仕事に特化します。一方で地方には権限と財源を移し、その受け皿として道州制を取り入れる新しい国の統治システムです。
◆ 道州制とは何か?
「道州制」とは、日本国内にたくさんの「政府」をつくる仕組みのことです。道州とは、いくつかの都道府県を合わせた規模の広域的な自治体のことを言います
が、現在の「都道府県」という制度をやめて、例えば関東州や東北州といったように全国を10程度の道や州に再編するのが道州制です。そして、この道州単位
に地方政府を置き、基礎自治体を約1,000ヶ所程度配置し、より地域の特性に合わせた政策を地域住民のニーズに沿って展開できるようにしよう、という制
度です。
戦後の復興から経済大国となり、社会資本が成熟した我が国において、気候から風土、物価や経済活動、そして人口密度も違う北海道から東京、大阪を経て沖
縄まで、一つの政府が一つの法律で画一的に統治すること自体、既に無理があることは皆さんもお感じのことと存じます。
◆ 道州制が実現したら
道州制が実現したら、日本は、そして私たちの暮らしはどうなるのでしょうか?
道州制が導入されると、各地方に政府ができることになります。すると道州という地方単位で、それぞれ独自に固定資産税や住民税などを始めとする法律や制
度を決めて、自分たちの地域に合わせた政策ができるようになります。また、政府が住民生活により近づくため、住民の声が政策に反映されやすくなります。
税制・教育・住宅・医療など、その州に住む人たちの意思による、地域の特性を生かした行政を実施することができ、また、48の都道府県が10程度に、約
2,500の市町村が1,000程度に、しかも規模をそろえて配置されることにより、議員や公務員の削減と行政経費の縮減が図れます。
官僚主導から民間主導となり、諸々の規制が緩和・撤廃され、各方面の既得権が解消され、政官業の癒着もなくなります。
国の仕事量が大幅に減り、財政を縮小することにより莫大な国の借金を減らすことが可能になります。
行き詰まりを見せ、閉塞感あふれる我が国の現状を一新するために。私は、我が国の将来のビジョンを「日本再生(リセット)」と名付け、皆様に提案して参りたいと存じます。
今回は、住民自身が地域のことに関心を持ち、「自分たちが住んでいる街は、自分たちで創っていく」という住民自治の精神を最大限発揮させるための国の骨格を変える新しい取り組みについてご提案させていただきました。
新 藤 義 孝 |