◆ 地球温暖化と海中に沈む国
石油・天然ガス・石炭などの化石燃料の使用によって、大気中の二酸化炭素濃度はこの100年間に30%増えていると言われています。また、メタンやフロンなどの他の温室効果ガスはさらに急速に増加しています。このままでは21世紀末には二酸化炭素濃度は現在の2倍以上になり、地球全体の平均気温は今より1.4度以上上昇し、海面水位が最大88cm上昇するという予測もあります。
このような急激な気温の上昇は、世界中の気候と環境を変えてしまう可能性があります。低地や島国などの水没、洪水や渇水などの異常気象、農作物への重大な影響、マラリアなどの伝染病の増加など、人類に深刻な打撃を及ぼしかねません。
こうした問題を考えたとき、私は3年前に視察に訪れたモルディブで、子どもたちが言っていたことを思い出します。「今のままでは私たちの国は海の中へ沈んでしまう」と。モルディブはインド洋上に浮かぶ珊瑚礁でできた島国です。海抜1mしかないこの国は、温暖化の影響で100年後には国土の80%が水没してしまうのではと言われています。
◆ 京都議定書とCO2マイナス6%
今年2月、二酸化炭素(CO2)を始めとする温室効果ガスの削減を国際的に取り決めた「京都議定書」が発効されました。日本の目標数値は2012年までに1990年比で6%の排出量削減となっていますが、現状では逆に8.3%増加しており、目標達成が危ぶまれています。
CO2の排出量は、企業努力により削減量を積み重ねてきた産業界では斬減傾向にあるものの、オフィスや家庭などの民生部門では増加する一方なのです。
◆ クールビズと環境への意識
全世界的に深刻化している地球温暖化という問題に対し、国や企業だけでなく、私たち一人ひとりが取り組めることは何でしょうか? そのひとつが、今夏、政府が推進している「クールビズCOOL BIZ」です。涼しく効率的に働くことができるようなノーネクタイ・ノー上着などの軽装で、オフィスの冷房を28℃程度に設定しようという運動です。
6月1日の衣替えの日、小泉総理が沖縄で親しまれている「かりゆしウエア」を着てアピールするなどし、その動きは政府や官公庁、そして地方自治体にも広がっています。
上着を脱ぎネクタイをはずすと、体感温度はおよそ2℃下がるとされています。全国の事業所で冷房温度を26℃から28℃に上げると、原油換算で31万キ
ロリットル(ドラム缶155万本分)が節約でき、ひと夏で約200万トンの二酸化炭素を削減できるという試算もあります。
これは温暖化対策のみならず、エネルギー自給率が4%しかない日本にとって、省エネという観点からも期待が持てます。
かつて、省エネルックという上着の袖を半分にした珍妙なファッションも登場しました。夏場の省電力問題は古くから言われておりますが、なかなか効果を上げることができませんでした。
◆ 日本人のセンスアップのためにも
埼玉県議会では、全国に先駆けてクールビズを取り入れて、本会議場を含むすべての場で軽装を認めています。川口市議会においても、委員会などでは軽装が認められました。
今回のクールビズ運動は、小泉総理が先頭に立って始まりました。国会のテレビ中継を見ると、始めた頃は閣僚の皆さんもあまり居心地がよさそうではありま
せんでしたし、見ている私たちも見慣れないせいかシャツのみが浮いているように感じたものです。しかし、日が経つにつれ、だんだんおしゃれな議員も見受け
られるようになり、サマになってきたと思います。
私は国会議員時代、数多くの国際会議や難民支援のために海外に出かけましたが、その時に気になっていたのは日本人の服装のセンスでした。他国の人たちがカジュアル
な服装をしたり動きやすい格好をしている場所でも、日本人はスーツとネクタイを着用している人が多く、あか抜けないことこの上ありません。国際社会の場に
出ても、日本国内の人間関係や習慣を優先させているのです。被災地の現場を視察するとき、そして暑いときに、無理にスーツやネクタイを着用する必要はない
と思いませんか。
地球温暖化防止対策として大上段から論じるばかりでなく、TPOによって服装を使い分ける、日本人の服装を自然に無理なく場面や環境に合わせていくセンスアップの一環として、このクールビズ運動を活用してみてはどうかと、私は感じています。
◆ 私たちにできること
クーラーの使用過多は、更なる弊害も生み出します。室内を冷やしすぎると、めまいや頭痛などの冷房病を引き起こす場合もあります。また、クーラーの排熱
により屋外が更に暑くなってしまい、都市部の気温が郊外よりも高くなる「ヒートアイランド現象」も生じています。東京や大阪などの都市部では、この100
年間に平均気温が2~3℃も上がっているという調査もあります。
クーラー依存の悪循環から抜け出し、ライフスタイルを改善していくこと。これが、個人で取り組むクールビズの主眼だと思います。「美しい環境を子どもたちに残すこと」- それは私たち大人に課せられた責務です。
新 藤 義 孝 |