“Yes, Virginia, There is a Santa Claus…” from THE NEW YORK SUN. 1897 |
私
が園長を務める川口ふたば幼稚園では、毎年12月に園児たちによる演劇発表会を行います。私は毎回サンタクロースの扮装をして登場するのですが、子どもた
ちは大喜びで私の周りを取り囲みます。中には「サンタさんは園長先生なんでしょ?」と聞いてくる子どももいますが、私は「違うよ」と笑って答えます。とて
も嬉しく思ったのが、小学5年生になった卒園児が私を訪ねてきてくれたときのことです。その子はひとしきり幼稚園時代の思い出話をしたあとで、「あの時の
サンタさんは、やっぱり先生だったんでしょ?」と私に尋ねます。しかしそこでも私は「違うよ」と答えると、その子は「えー?」と言いながらも嬉しそうに
にっこりと微笑みました。
皆さんはお子さんに尋ねられたことはありませんか?「サンタって本当にいるの?」と。
現在でも語り継がれている有名な新聞社説があります。このお話は今から100年以上も前、ニューヨークに住むバージニアという女の子が、学友にサンタの存
在を否定されたことから始まります。バージニアはお父さんのすすめにしたがって、新聞に投書してみました。その新聞社、ニューヨーク・サン紙は、小さな女
の子からのたどたどしい手紙を社説で取り上げ、こう答えたのです。
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1897年に掲載されたこの心暖まる社説は、以後幾度となくクリスマスが近づくと世界中の新聞雑誌で取り上げられてきました。日本でも新聞やテレビで紹介されたり日本版の絵本にもなっているので、ご存知の方も多いでしょう。
こ
の手紙を送った少女、バージニアは後に教職に就き、晩年はブルックリンにある長期入院児童のための公立学校で校長を務めました。その生涯にわたって、幼い
彼女が書いた投稿についての手紙を受け、その全てにこの社説のコピーを添えた返事を書いていたそうです。彼女が81歳で亡くなったとき、ニューヨーク・タ
イムズは、「サンタの友だちバージニア」という記事を掲載、「アメリカのジャーナリズムにおいて、もっとも有名な社説が書かれるきっかけとなった少女」と
その死を悼んだのです。
夢や希望、人を思いやる気持ち、信じる心。目には見えなくても確かにある大切なもの。そういったものをサンタクロースと呼ぶなら、現代ほどサンタクロースが必要とされている時代はないのかもしれません。
皆さんはこの社説を読んで、どうお感じになったでしょうか? 最後に、アメリカのある児童文学評論誌に掲載された文章の要約をご紹介させていただきます。
「子
どもたちは、遅かれ早かれサンタクロースが本当は誰かを知る。知ってしまえば、そのこと自体は他愛のないこととして片付けられてしまうだろう。しかし、幼
い日にひとたび心にサンタクロースを住まわせた子どもは、その心の中にサンタクロースを収容する空間をつくりあげ、信じるという能力を養う。私たちは、サ
ンタクロースその人だけでなく、サンタクロースが子どもの心に働きかけて生み出すこの能力をこそ大切にしなければいけない」
新 藤 義 孝