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号では、日本政府の拉致問題に対する外交的取り組みの経緯や、日本政府認定の拉致被害者15人だけではなく、北朝鮮に拉致された疑いのある人が、実に
400人超もいらっしゃるという事実をお話しました。私たちの身近な川口にも、拉致が極めて濃厚とされる人が2名、ほか拉致の疑いのある人が3名もいま
す。拉致問題の真相解明と一日も早い日本への帰還のため、「田口八重子さんを救う会」や「拉致問題を考える川口の会」等が発足し、家族や親族による真剣な
活動が現在続けられているのです。去る5月29日には川口駅頭にて、私もこれら家族会の方たちと一緒に、一日も早い解決を政府に要望するための「署名運
動」を行いました。当日は真夏を思わせる蒸し暑い日にも関わらず、被害者家族の必死な叫びを受け止め、子供さんからお年寄りまで、実に1200名を超える
真心の署名を頂戴できました。
2時間にわたり街頭で署名を呼びかけた。 中央に田口八重子さんの写真、右隣が失踪者の実弟、藤田隆司さん。 |
この北朝鮮による拉致事件は私たち日本民族や日本国家に対する、卑劣かつ凶悪極まる犯罪(テロ行為)であり、絶対に許せません。2度目の小泉首相の訪朝に
よって、蓮池さん・地村さんのご家族5人が日本に帰国できました。これはとても喜ぶべきことでしたが、横田めぐみさんなど拉致と認定済みの10名のご家族
で構成される「家族会」が、小泉首相に激しい怒りをぶつけました。その怒りの背景には、「拉致問題がこのまま国家間の話し合いによって幕引きされてしまう
のではないか?」ということを危惧する、やむにやまれぬご心情の表れであったと思います。
2年前の小泉首相の訪朝以来、昨年まで外務省筆頭政務官を拝命し、直接担当してきた当事者として、私が改めて皆さまにお伝えしたいことは、前述のように拉
致の疑いがもたれている400人を超える失踪者の中に、川口に関係の深い方が5人もいるということです。表紙の写真をご覧になればおわかりいただけるよう
に、新木章さんは「特定失踪者問題調査会」が特に拉致濃厚と認定した28人の中の1人です。また、佐々木悦子さんに至っては、昭和ではなく平成3年に失踪
しています。(ちなみに拉致被害者の田口八重子さんにつきましては、前号でもご紹介しました。)
拉致された疑いが濃い藤田進さんの弟で、「拉致問題を考える川口の会」の代表である藤田隆司さんにお話をお聞きすると、「兄は今年47歳になります。絶対
に生きていると確信していますが、父はすでに80歳を超えました。そんな老父に、『一日でも早く兄の元気な姿を見せてあげたい』という思いが、いつも心の
底から込み上げてきます。また、全国には平成になってから拉致されたと思われる人も大勢います。拉致事件は過去のことではなく、まさに現在も進行中かもし
れない犯罪なのです。この現実を1人でも多くの方に、知ってもらいたいのです」と真剣に語ってくれました。この悲痛な叫びこそ、拉致関係被害者の家族の皆
さんの共通なお気持でしょう。今この時にも北朝鮮で日本からの救出を待っている方々がいると考えて見てください。私たち全国民が一つになって、同胞のために救いの手を差し伸べなければいけません。現在、私のホームページに、拉致問題や特定失踪者に関する資料を掲載しております。また、早期解決を政府に強く要望するための、インターネットによる「電子署名運動」も展開中です。ぜひ、私のホームページをご覧いただき、ご理解、ご協力を賜り、1人でも多くの皆さまのご署名をお待ちしております。そして、政治に身を置くものとして、私が取り組むべき今後の具体的な活動を申し上げます。
第一に自分で出来ることです。今後も街頭での署名活動やチャリティー・コンサートなど自分達で出来る支援運動を継続して展開して参ります。
第二に政府への働きかけを継続します。国が認定した拉致被害者の方々には内閣官房に「拉致被害者・家族支援室」が設置されております。しかし、特定失踪者
問題については、政府・行政内に公式な受け皿がございませんでした。警察や市役所もまったく対応出来なかったのです。このため私は、昨年12月末に川口外
務大臣にお会いし400人を超える行方不明者の家族のための窓口設置の必要性をお話し、ご理解をいただきました。国会でも自民党、公明党が積極的に委員会
でこの問題を取り上げ、その甲斐あって、今年3月、「家族支援室」内に、特定失踪者問題の窓口が設置されたのです。今後も政府の取り組みが充実されるよ
う、働きかけを続けて参ります。
第三に地方自治体に働きかけを行います。現在、川口市役所には拉致被害者家族や特定失踪者家族への活動支援や、市民からの情報を収集する窓口がありませ
ん。そこで、私の仲間の市議会議員に依頼し、6月の定例市議会において市長への質問と提案が行われることになりました。今後、市役所内部で対応が協議され
ることと思います。一日も早い支援室の設置を私からも働きかけて参ります。
最後に拉致問題解決の最も重要なポイントを申し上げます。拉致問題は、これまでの歴代内閣が手をつけられなかった難題であり、小泉内閣で初めて本格的に取
り組みを始めました。解決すべき課題は山積しておりますが、一度に解決はとても出来ません。大事なことは途中で方針を変えないことです。私が外務大臣政務
官時代に政府・外務省内で取り決めた北朝鮮政策の骨子は、①朝鮮半島の安定化のために、拉致、ミサイル、核問題を包括的に取り組む。②外交手段によって平
和的解決をはかると共に、北朝鮮問題を国際世論に訴え、多国間の協力を得る。③必要最大限の「対話」と、必要に応じて法的措置を伴う「圧力」を講ずる。と
いうことであり、この3点を堅持しつつ、「ぶれない」、「妥協しない」、「あきらめない」という強い意志と断固たる決意で取り組むことが大事なのです。拉
致問題を解決しつつ、ミサイルや核の脅威を取り除く朝鮮半島の安定化政策は、わが国の平和と安全を維持するだけでなく、ミサイル、核、そしてテロの連鎖を
排除するという意味で、東アジアのみならず世界の平和に及ぼす影響はとてつもなく大きいのです。日本政府の外交能力と日本人の真価が、今、問われているの
ではないでしょうか。
新 藤 義 孝 |