中小企業事業活動の活性化等法律の一部改正法律案(質疑)衆議院商工委員会-7号 1999年12月3日

中小企業事業活動の活性化等法律の一部改正法律案(質疑)
146-衆-商工委員会-7号 1999年12月03日

 

○新藤委員 先生方、きょうは朝から大変御苦労さまでございます。私は、自由民主党の新藤義孝でございます。
 先生方からただいまいただいたお話に、少し質疑をさせていただきたい。ただ、時間が二十分しかございませんので、大体お一人様一問になってしまうかな、このように思うのでございますが、短い時間の中で意は尽くせませんけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、本国会は、小渕総理が大々的にぶち上げておりますように中小企業国会ということでございまして、まさにさきに可決いたしました中小企業基本法と、それに引き続く今回の関連の、中小企業活性化のための関係法案、さらには新事業創出促進法、これは今国会の目玉だと思うんです。
 それは、イコール、先ほど先生方おっしゃっておりましたけれども、日本の中小企業、今回カテゴリーを広げましたから、これでたしか日本企業の九九・六%は中小企業になってしまう。日本の経済を再生もしくは新生させるためにはここの部分が頑張るしかないんだ。そういう意味で、いろいろと実利の上がるように法律をつくろう、こういう趣旨で私どももこれを見ているつもりなんです。
 まず、橋本先生、中小企業政策審議会の議論に参加されて、この法案の一連の流れ、組み立てに絶大なお力をいただいた方だ、このように思っております。
 今回、特に中小企業基本法の中で、要するに数を合わせて、数の論理から、今度はきめ細かくそれぞれの独立した中小企業をつくっていこう、こういう趣旨が今回のポイントかなというふうに私は思っておるんですが、こういう意味で、本関連法案がきめ細かな対策を行ったと言い得るかどうか。社債を発行する、それから中小・ベンチャーに対しては無担保の貸し出しを可能にした、さらには小企業、創業者には無利子貸し付け、一応カテゴリーごとにはそろえたつもりと私は理解しておるんですが、大もとの組み立て人として、まず橋本先生、御意見を賜ればありがたいのですけれども。
    〔委員長退席、小林(興)委員長代理着席〕

○橋本参考人 お答えいたします。
 御指摘のとおり、従来、中小企業というのは業種を対象にして考えてきたと思いますが、今回の法案は企業を対象にしていく、したがってきめ細かい対応が必要だということになると思います。
 ただ、今回の提案されております法案は、先ほども申し上げました金融に限られておりまして、ほかの法案も今後準備されるのではないかと想像いたしますが、そのきめ細かさが十分かというふうなことに関しましては、実は大変基本的な重要な問題点があると思います。
 それはどういうことかと申しますと、どういう政策が最適かということが事前にはわかっていないんだと思うんですね。かつての近代化政策とか高度化政策というのは、ある程度事前にわかっていた。ところが、今回は事前にはわからないわけでして、ですから、信用保証の問題でありますとか、エクイティーファイナンスの問題でありますとか、あるいは税制の問題でありますとかというのを組み合わせていかざるを得ない。
 それで、私の期待しているところは、具体的に政策を、今先生御指摘のとおり、ワンパッケージで一応金融に関しては考えたわけでありますから、そのワンパッケージの政策がうまく機能するかどうかを適切に政策評価して、もしまずい点があったらこれを迅速に変える、あるいは修正していいものに変えていく、そういうふうにお考えいただけると大変いいのではないかと思っています。

○新藤委員 ありがとうございました。
 先ほど、日本の政治に関して、スピードが世界一遅い、こういう御指摘もいただいたり、また逆に、ベンチャーキャピタルの方は今すごいスピードだと。まさに今の先生のお話のように、即時即応していく、そして我々も柔軟に、小出しにしないで大枠でもって方向を定めて、それで必要があればどんどんつくっていく、これでいいんじゃないかと思うんですね。ぜひ今後参考にさせていただきたいというふうに思っております。そして、もっとお話を聞きたいんですが、申しわけございません。
 次に、タカコの石崎社長さん、何か二十九歳から独立されて、先ほど来ておりましたけれども、私どもの仲間の岩永代議士と大変お地元が近いということで、タカコとは実は何かなと私は思ったんですよ。人のお名前だとすると、私のおふくろがたか子というものですから、これはいい会社だなと思っておりましたら、山の名前だそうでございますけれども、しかし、大変に御苦労されて、本当にたたき上げで、そして今、オンリーワンというか、日本でトップシェアで、しかも世界の七五%をお持ちになっている、こういうお話でございます。
 大変御苦労されたと思うのですが、やはり語り尽くせないと思いますが、一点で言えば何が、ここまでうまくいった成功の秘訣というか、キーワードは何かというのがあれば教えていただきたいというふうに思います。
 それからもう一つは、今法案について、まさに今橋本先生からも御指摘いただきましたように、金融面のパッケージをつくったわけでございます。そういう中で、この法案で、この枠組みで中小企業の資金調達がどの程度円滑化されるか、この法案に対する評価をできれば一言お願い申し上げたいと思います。
 それから、蛇足ながら、先ほどの内部留保金課税については、きのう税制調査会で私どもの商工のヒアリングの場がありまして、とにかく連結納税と内部留保を必ずやろうじゃないか、こういうことで、大騒ぎで我々はやっております。
 スピードも遅くないと思いますが、ただ、留保金課税全面廃止かというと、それこそ日栄の留保金はいいのか、こんな話が出てくるくらいでございまして、ベンチャーだとか体質のまだ弱いところを支援するための、しかもアメリカと日本しかとっていない税率ですから、我々も考えているということは御報告申し上げたいと思います。
 では、済みません、何か余計な話になってしまいましたけれども、二点お伺いしたいと思います。

○石崎参考人 どうも失礼の数々を申し上げて申しわけございませんが、ふるさとの山の名前が高香山ということで、よく御婦人の名前かと言われます、奥さんの名前かとも言われるのですけれども、うちの家内は道子といいまして、全然違うのでございます。
 何がというふうにおっしゃられて、ただ一生懸命頑張ってきたわけでありますが、ただ、人の嫌がる仕事といいますか、産業界には人が避けて通るような、あるいは非常に精度がいいとか厳しいとか、安いとか数が少ないとか、そういったふうな、人の嫌がるような仕事というのは世の中にたくさんあるわけでございますが、立派な会社でも、どうしてもできないような問題点も抱えておられまして、そういうものに対してチャレンジしていこうと。
 たまたまオイルショックのときでありましたので、ほとんどの会社が、大手さんがグラウンドの草むしりをしていたのです。そのとき草むしりということが話題になったぐらいでございます。その中で仕事をとっていくには、ありきたりのものをやっていたのではいただけないわけでありまして、そういうことを主眼にして、国内、そして当時会社の売り上げの三カ月分ぐらいのお金を使ってハノーバーのドイツのメッセに出展いたしまして、世界にもそういう問題を抱えている会社もたくさんあるに違いないというふうなことでやりましたのが、大変皆さんのいろいろな協力を得て、一応、あすの日はわかりませんが、きょうまでお仕事をさせていただいたというふうに思っております。
 それから、このたびのいろいろな法案で、我々中小企業や小企業、零細企業にとりましては、資金調達のニーズということに対しましてはこれから本当に助かると思います。そういう面では、利用していけば、従来と違う形で、今まで苦しんでいたことが少しはいやせてくるだろう、こう思います。
 しかし、小規模零細企業にとりましては、例えば社債だとか転換社債だとかワラントだとか私募債だとかいいましても、ちょっとぴんとこないところが実はあると思います。そこそこの規模の会社になれば、それはそれで一つの形になるのかと思いますが、そういった底辺への、すそ野への手当てもこのたびいろいろとしていただいておりますが、それらをどういうふうにして浸透させていくのか。意外に、商工会議所とかいろいろなところからパンフレット等が来ても、会議所に入っていないところすら多いものでございますから、なかなか知る機会というのを知らないケースがありまして、この辺をどうPRしていただくかというのが一つのポイントでないかなというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

○新藤委員 ありがとうございました。
 要するに、今お話を伺うと、人の嫌がること、それから志を大きく世界に、これがキーワードかなというふうに思ったわけでございます。それから、奥様の名前が道子さん、私もおばさんの名前が道子さんでございまして、とにかくみんなつながっているというか、何かそういうところから人柄が非常に今わかって、さすが大きな経営者は違うなという気がいたしました。
 そして最後の、この制度をどう浸透させていくか、これはまさに私もそのように思っています。今回、この関係で国がナショナル支援センターをつくるのです。それから、都道府県単位で広域の中小企業支援センターをつくる、それから全国広域市町村圏でつくろう。国、県、市でそれぞれの事業規模に応じて支援センターをつくろうと。だから、この支援センターが役所的なものだったり、ただPRしたりとかそんなものではだめなので、ここをこれからやろうというのを私どもも今研究しているところなので、ぜひまた御意見をいただければありがたいと思います。
 それから、松田先生、川分先生。それぞれエンゼルとベンチャーキャピタルのまさに専門の方々でございますし、松田先生は大学の方でビジネススクールまでおつくりになられている、このように聞いているのでございます。
 特に、先生が先ほど指摘された、個人の投資が少ない、これは日本の金融の大問題だなと私も思っておりまして、千三百兆個人金融資産があるといっても、半分は貯金ですね、まさに眠っているお金だと。対する個人の市場に対する投資というのは、日本人の場合、私の記憶ではたしか三・六%とかそんなようなものなんですね。要するに、いかに市場が信用できないかということと、それから個人がそちらに目を向けていないかということだと思っています。逆に言えば、これだけ眠っているのですから、私どもがこの市場を開くことができれば、これは日本経済の活性化に大いに役に立つ。そういう意味でのベンチャーキャピタル、私はまことに希望をここに持ちたいなというふうに思っているのでございます。
 ただ、そういう中で、今回はそのベンチャーを何とかしようということでもろもろの法律をつくりましたけれども、これについて、それぞれ御専門の立場から、今までベンチャーだベンチャーだと言っていても、正直申し上げて、いま一つ政府の政策は実効が上がっていないのかなという気も私しているのです。この意味で、今回この法律、我々としては鳴り物入りで、目玉でつくっているのですが、これによってどの程度よくなるのか、評価いただける点があれば教えていただきたいというふうに思うのです。
 それから、日本とアメリカ。アメリカの場合、逆に貯金が全然ないのですから、もしおかしくなったときに本当に大丈夫かしらと私ども思うわけで、別にアメリカのまねをする必要はない、日本には日本のやり方があると思うのですけれども、そういう意味で、今法案でやり残したことがあるとするならば、お二人にそれぞれのお立場でお聞かせを願えればなというふうに思っているのです。
 私は、個人的には、ベンチャーに対してはエンゼル税制がある、しかし、ベンチャーキャピタルに投資する人たちの税制というのはないわけですね。ですから、やはり投資を誘導するのは税制だと私も思っておりますので、その辺も含めて御意見をいただければありがたい、このように思います。

○松田参考人 いろいろ御指摘ありがとうございました。
 まず、制度の評価でございますが、とにかく九五年当時から比べるとさま変わりでございまして、今回私は非常に高い評価をしているわけですが、先ほど先生もおっしゃいました全国に支援センターをつくるということが、ちょっと間違えると、何も役に立たないものを多くつくってしまうということになると思います。
 と申しますのは、先ほど申し上げましたように、シニアベンチャーの方と若者ベンチャーの方とスピード軸が全く違います。三年とか五年、先はもう考えられないという今のインターネットのところと、十年、二十年技術を蓄えていくということは、ビジネスは違います。そうしますと、後半の方は大体対応できる人というのは結構おられると思うのですが、前半の方に対応できるとすると、相当頭のやわらかい若い人たちのサポーターをつけなければいけないかなというふうに思っていますので、そこの運用が非常に大事かなと思います。
 それから、今、ベンチャーキャピタルの税制問題として、業界で、私も日本で最大のところの監査をずっとしていたという関係がございますし、私ども自身が今、大学が何もしませんので、大学の教員がもう動き出していまして、ベンチャーキャピタル会社をつくって、トータルで四億のファンドで、今二十社ぐらい投資を行っております。
 そういうことからも考えますと、債権には貸倒引当金というのがあるのですが、投資に対しては貸し倒れというのが全くないということで、これは、無担保でやるわけですのでリスクがもっと高い、引当金も回収になればより多く後から税金を納めていくわけでありますので、債権と投資というのを同じようなリスクという土壌、リスクが高い方がなくて、リスクが少ない方があるというのも、これも変な税制だと思います。その辺の整合性をぜひとっていただけるとキャピタル業界は助かるのじゃないかなと思っています。

○川分参考人 まず、評価ということについてですけれども、大きな方向性は、現場から見ましても、非常に合っていると思いますので、どんどん進めていっていただきたいというふうに思います。
 ただ、これは時間がかかると思います。恐らくアメリカでも十年、十五年かかっておりますので、余り成果を焦って途中でやめてしまうとかいうことがないように、例えば、この第三次ベンチャーブームと言われる中でいろいろな制度をやっていただいていますが、これが本当に出てくるのはまだ数年かかるでしょうし、今この中小企業国会でやっていただいている施策が実際に効果をあらわすのは恐らく五年から十年かかると思いますので、粘り強くやり、どんどん改革を進めていっていただければ、我々も一生懸命やりますので、見守っていただくというか、世論もそうなんでしょうけれども、じっくり見ていただくということが必要じゃないかなというふうに考えています。
 それから、やり残したことというか、希望といいますか、それにつきましては、確かに私ども、資金調達、ベンチャーキャピタルがお金を集めてベンチャー企業にお金を出すわけですから、私どものベンチャーキャピタルファンドにお金が集まりやすい仕組み、例えば先ほどおっしゃったような、ベンチャーキャピタルファンドに個人が出したときにいろいろな税制の恩典があるというのがあれば非常にありがたいし、さま変わりになると思います。
 それと、今研究しておりますのは、会社型投資信託を使ってベンチャーファンドをつくりまして、そちらに個人の小口資金を入れようとしておりますが、これが若干、ちょっと税制面の不備があるような感じでございますので、会社型投資信託の方はもう少し税制面での工夫が要るのかなというふうに考えておりまして、今研究中でございます。
 あと一つ、ちょっと投資とは違うのですが、銀行の動きについてですけれども、私どもが投資したお金は、成長資金、企業が伸びるために使っていただくはずなんですが、銀行の方が、約弁というんですか、ほっておいても銀行の回収が進んでいきますので、結果的に、私どもが出したお金が一年たってみると銀行の返済に回ってしまっているということが起こっているんですね。
 ですから、銀行が残高を維持するというのでしょうか、ほっておいたら回収になっていくので、それをストップしていただくような何らかの工夫、あるいは、銀行に追加で資金注入されるのはいいのですけれども、そういうお金があったら新しい銀行をつくっていただいて、そのニューマネーでもって新しい融資をしていただくということであれば回収と逆の方向になりますので、古い銀行を救うよりも新しい銀行の創設ということをやっていただいた方が、効果はプラスマイナス逆転すると思いますので、いいと思います。
 以上でございます。

○新藤委員 済みません。ちょっと時間が来てしまったのですが、最後に一点だけ、申しわけございません。
 ただいまのお二人のお話を聞いていて、松田先生と川分先生、ベンチャーファンドというのはアメリカで一兆二千億の市場がある、対する日本が千二百億だということですから、とにかく我々もいろいろ工夫をしてやらなきゃいかぬ。今回、産業基盤整備基金とそれから中小企業事業団、これを合わせても二百五十億ですから、やはりこういうのは政府の金を当てにするのじゃなくて、いかに民間のお金を市場に巻き込んでくるか、これをやらなきゃいかぬ、今回はその支えるための施策だ、私はこのように理解をしております。
 最後に橋本先生、実は今回の側面として、新しい中小企業をつくるんだ、概念を変えるんだというところまではすごくいいのです。ただ問題は、そういいながら、ベンチャーだとかそれから新事業だとか、そういうものばかりではないですよね。むしろ、九九・六%ある中小企業は、これまでのような、やはり下請だとか地場産業、これが圧倒的に多いわけで、こういう人たちに対する施策、今までは組合をつくったり業界ごとにいろいろな指導をする、ここからどう転換していったらいいのかというのが私ら今非常に苦しんでいるところなんです。
 私の川口という地元が、中小企業集積率日本一の町なんです。そこはすべて下請と地場産業なんです。だから、こういう業界の人たちにどうしたらいいんだということを私どもはあわせて考えなきゃいかぬと思うのです。
 そこで、総括的に、橋本先生、時間がなくて恐縮なんですが、御意見をいただければありがたいことだと思います。

○橋本参考人 御指摘の点は極めて重要なポイントだと思います。私が書いた短い文章がお手元に渡っているかと思いますが、中小企業というのは極めて多様な存在である。多様な存在で、それぞれが少しずつレベルアップできるというのが好ましいのではないかというふうに考えておりまして、今回の法案は、その上の方に近いところをいかにつくり出すかということを考えておりますが、御指摘のとおり、下請制が今大きく再編の場にさらされておりますし、それから地場の産地が国際的なマーケットとの連携がうまくいかなくなっているという例がたくさんございます。
 それも、実はいろいろな情報通信の仕組みを支援するようなことをすればよみがえるという事例もございますし、あるいはコーディネーターがうまく入ればよみがえったという事例もございますから、そういう支援策が、今後金融のみならずきめ細かく行われていくことが好ましいのではないかと思っております。

○新藤委員 ありがとうございました。