週刊新藤第249号 私が領土・主権問題に取り組む理由〜新たな国家体制整備と国策変更を!〜

北方領土、竹島、尖閣諸島などわが国の領土・主権がかつてないほどに他国から脅かされ、揺らいでいます。状況立て直しのために、一刻も早い国家体制の整備と国策変更が必要です。


◆ 領土・主権問題は国家成立の基本

 「国家」を成立させるには 3 つの要素があると言われています。
①国民意識の統合
②領土の保全
③主権の確立
政権交代から 3 年が経過しようとする中、わが国を形成する領土や主権がかつてないほどに他国から脅かされ、揺らいでいます。
現在の日本政府が国家の基本問題をおろそかにし、外交対処能力に欠けている、と他国から評価されることは、わが国の国益を計り知れないほど貶めることになります。
実際、民主党政権になってからの日本は、金融、気候変動、平和構築など重要な国際テーマでリーダーシップを発揮した例は皆無なのです。


◆ ロシア首相が国後島を訪問強行

  7 月 3 日、ロシアのメドベージェフ首相は不法占拠中のわが国領土・国後島を訪問しました。メドベージェフは大統領時代の2010年11月に続き、二度目の訪問です。
同首相は国後滞在中に「一寸たりとも領土は渡さない」「日本国民は怒りで酒も喉を通らないだろう」など、これまでの交渉を無視したわが国に対する侮辱的な発言を繰り返し「日本の反発には全く関心がない」とまで言い切りました。


◆ 中止要請を完全無視された日本

 日本はロシア政府に対し外交チャンネルを通じ、極めて高いレベルから事前に訪問を止めるよう申し入れておりましたが、一顧だにされることなく平然と訪問を強行されてしまったのです。
事態が深刻なのは、これまで日・ロ間に存在した領土問題に関する外交的配慮が、ついに全く発揮されなくなってしまったことです。


◆ 何も対処できない民主党政権

 私は 7 月 4 日自民党・領土特命委員会を開催し、ロシア首相の国後訪問に抗議する決議をまとめました。
①外務大臣声明を出し、国家として抗議の意志を明確にすること
②駐ロシア日本大使を呼び戻し、事情を聴取すること
③予定されている外務大臣のロシア訪問を見合わせること
④北方領土をロシアによる「不法占拠」と呼ばないなどの、対ロシア外交方針を再考すること
7 月 5 日には外務省に出向き、これらの内容を直接玄葉大臣に申し入れましたが、現在までに政府は何一つ行動を起こしておりません。
それどころか外務大臣は、7 月28日に予定通りロシアの保養地ソチに出かけ、日・ロ外相会談を行い、プーチン大統領との面会も期待している、などと発表する始末です。
自国の領土に勝手に上陸されながら、明確な抗議や対抗行動も起こさず、予定通り外交が行われるのであれば、ロシアはさらに手前勝手な行動をエスカレートさせ、北方領土交渉そのものを有名無実化させようとするに違いありません。

○メドベージェフ・ロシア連邦首相の国後島訪問に対する決議<自民党・領土に関する特命委員会>(2012年7月4日)


◆ 「歌舞伎政治劇場」となじられ

 ロシアメディアは日本の反発を「形式的」とし、「領土交渉は発展せず貿易経済関係が拡大するだろう」「両国の批判の応酬は歌舞伎政治劇場だ」など、日本を軽視した報道を流しています。
民主党政権の外交対処は、ロシア側に完全に誤ったメッセージとなって伝わってしまっているのです。


◆ 韓国・国会議員が竹島を訪問

 竹島問題でも許せない動きがありました。 6 月28日、韓国の与党・セヌリ党の代表最高委員など国会議員6 人が竹島を訪問したのです。
党代表国会議員による竹島訪問は、昨年 8 月14・15日に予定されていましたが、私が 8 月 1 日に韓国・鬱陵島を視察しようとして、ソウル金浦空港で入国禁止措置を受けるなどの大騒動をうけて中止されていました。
私は 6 月27日の夜遅くに竹島訪問計画を伝える韓国側記事に気が付き、翌朝、外務省に韓国側へ中止申し入れするよう要請しました。
外務省は午前中に在韓日本大使館より韓国の外交通商部に中止要請を行いましたが、その日の午後、韓国の国会議員たちは予定を変更することなく竹島へ上陸したのです。
韓国は竹島の不法占拠を強化するために、自民党政権時代に計画しながら実行できなかった地上15階建て相当の海洋科学基地の工事を進めており、五千トンの旅客船が接岸できる大桟橋も設計中です。
日本政府はこうしたわが国領土に対するあからさまな侵害にも毅然とした対処ができず、今や韓国は日本の形式的な対応に見向きもしなくなってしまいました。
そして、竹島での大きな動きから目をそらさせるかのように、米国で慰安婦碑の建設を行ったり、日本海を東海と呼ぶべきだ、などという虚構を世界に振りまいているのです。

○セヌリ28日 独島で最高委会議<ソウル新聞【韓国語版】>(2012年6月28日)

○在米韓国人団体 第2・第3の慰安婦碑建立を推進<聯合ニュース>(2012年5月11日)

○米ニューヨークに第2の慰安婦碑 日本の反発必至<聯合ニュース>(2012年6月17日)


◆ 尖閣では中国船が海保に「退去せよ」

尖閣をめぐる状況もさらに深刻さを増しています。
7 月11・12日、2 日続けて中国の漁業監視船 4 隻が尖閣周辺のわが国領海内に侵入しました。
海上保安庁の巡視船が退去するよう無線を入れると、中国船は「ここは中国の領海であり、我々は正当な活動を行っている。妨害するな。日本船は中国の海から直ちに退去せよ」と主張してきたというのです。
中国公船の主張の後半部分「日本船は退去せよ」は今回から使われるようになりました。
中国は、 2 年前の漁船衝突事件を契機に月一回のペースで政府関係船を差し向け、着実に尖閣周辺の活動態勢を強化しています。
2 年前には尖閣諸島の領海周辺の接続水域は 1 隻でやってきて、海保巡視船に追い出されていたのです。
それが今や日本の領海内に日本と同じ態勢で堂々と侵入し、日本が中国に向けた主張と同じ主張を、日本の海保巡視船に向かって言い放つようになってしまっているのです。

○中国漁業局漁業監視船による尖閣諸島領海侵入事案について(海上保安庁資料)


◆ 挑発と威嚇を繰り返す中国

  7 月 4 日には、台湾の民間活動家が尖閣の領海に侵入しましたが、振りかざしたのは中国国旗でした。
中国政府高官の「尖閣は核心的利益」発言に加え、中国海洋局幹部からは「尖閣問題で日本と一戦交えることも辞さない」との発言も伝えられています。
日本政府が従来からの尖閣諸島管理方針を変更できず、手をこまねいている間に、中国は着々と実力行使を重ね、様々な手を使って挑発と威嚇を繰り返しているのです。

○台湾活動家による尖閣渡航活動について(海上保安庁資料)


◆ 次期公約に領土政策の立て直し策が

 外交能力が欠如した政府を持つ恐ろしさが伝わったでしょうか?
現在の民主党マニフェストには、領土・主権問題の項目すらないのです。
私は次期衆議院総選挙で発表する自民党公約に、領土・主権問題の立て直しに向けた具体的提案を書きこみました。
○担当政府組織の設置
・国家として取り組みを強化するために、内閣府設置法を改正し「領土・主権問題対策本部(仮称)」を政府に設置します。
○歴史的・学術的な調査・研究を行う機関の新設
・新機関は研究成果を活用し、国内及び国際社会に対し、法と歴史に基づく日本の主張について普及・啓発、広報活動を行います。
○国境離島の適切な振興・管理に資する「特定国境離島保全・振興法」、「無人国境離島管理法」(国会提出済)などの法整備
○尖閣諸島の有人化と海の有効利用
・安定的な維持管理のための国有化(東京都との連携)
これらの実現には政権交代が必要です。もはや一刻の猶予も許されないのです。
わが国の領土と主権を守り、失われた国際社会からの信頼を取り戻すためにも、領土問題に関する新たな国家体制整備と国策変更を求め、必死で活動してまいります。


新 藤 義 孝