憲法審査会の海外調査、ウクライナの憲法裁判所長官らと会談し、1991年のソ連からの独立宣言以来、6回にわたる憲法改正の事情を聞きました。(2019年09月26日)

 

20190926_img1只今はリトアニアの首都ヴィリニュスに滞在しています。

憲法審査会の海外調査、2カ国目のウクライナでは首都キエフにおいて、ウクライナ首相、最高会議(国会)議長、憲法裁判所裁判長に面会しました。

ウクライナの三権の長との会談で、1991年のソビエト連邦崩壊後に独立宣言をして以来、自由と民主主義の国家建設を目指し、幾多の困難を乗り越えながら未だその途上にある厳しい状況と、新たな変革を求め国民が希望に燃えているウクライナの状況を改めて確認することが出来ました。

ウクライナでは憲法改正は既に6回行われておりますが、国家の統治形態が大統領制と議院内閣制の中間形態又は混合形態となる「半大統領制」の狭間で揺れており、憲法も未だに不安定な状態です。

現在のウクライナでは、2019年4月に国民の多くの支持を得て選出されたゼレンスキー大統領の下で、7月に最高会議選挙が前倒し実施され、新党「国民の奉仕者」が事前の予想を覆し圧勝しました。

政治経験の無い新議員が大半の国会となり、首相も35歳で政治経験の無い方が就任しています。ウクライナでは、国民の大きな期待を受けて新しい変革の波が押し寄せておりました。

一方で、憲法改正のための国民投票は、2018年4月26日、憲法裁判所より違憲の判決が出て、現在のところ有効な国民投票法は存在していないという状態でした。

20190926_img2憲法裁判所裁判長ほか判事の皆さんとの意見交換では、憲法の安定性の保障として憲法裁判所が設置されており、三権分立の近代化を図り、憲法改正の正当性を担保するために国会より独立した機関として憲法裁判所が位置付けられている、ということでした。

私よりは、憲法裁判所の設立意義と役割り、国民投票法の今後の取り扱い、そして非常事態への対処について問題提起しました。

特に非常事態への対処について、ウクライナではクリミアでの住民投票を契機としてロシアによってクリミアが併合されたり、ドネツク周辺では武装勢力との戦闘が行われるなど、国家的な危機に見舞われている最中です。

こうした厳しい状況の中、国と国民を守る観点から、人権を保障する憲法秩序の維持と、現実的な必要性による人権制限のバランスを取ることが必要と指摘しました。

憲法裁判所からは、
・自分達は2014年2月より非常事態と闘ってきた。
・2018年12月から約1ヶ月非常事態宣言を出した。
・非常事態中は選挙が禁止され、議員の任期は延長される。
・どんな国にも想定外の事態は起きる。なんらかの対処ができるようにしておくべき。
・ウクライナは当然のごとく非常事態を憲法に規定した。
・国民の自由と権利を守るために、憲法裁判所を機能させたい。
との答えがありました。

現実の危機に見舞われ、国家の存続をかけて激しく闘っている厳しさとそれに対処する覚悟を改めて実感する、貴重な機会となりました。