9月23日、憲法審査会の海外調査、ドイツでは、フンボルト大学で公法学の権威であるメラース教授らと面談し、63回に及ぶドイツ基本法にかかる改正案作成、合意プロセスなどについて話を聞きました。(2019年09月23日)

 

20190923_img19月23日、憲法審査会の海外調査、只今はウクライナの首都キエフにおります。

先週末のドイツでは、始めにベルリン高等研究所に行き、フンボルト大学メラース教授(公法学、法哲学)、グリーム元憲法裁判官・元研究所長と面会し、63回に及ぶドイツ基本法にかかる改正案作成、合意プロセスなどについて話を聞きました。

私との間では、
・独基本法改正案作成のプロセスに際し、与野党間の合意形成、連邦議会と連邦参議院間での 調整過程における工夫や苦労する点について。
・日本が戦後70年を超えて一度も憲法改正していない点について、ドイツ憲法学者としての受け止め。
・本年3月に改正した教育のデジタル化に関しては、どれくらいの期間で成し遂げられたのか。
・ドイツ基本法は、本来は東西ドイツ統一までの暫定的なものであったが、現在では基本法が恒久化されている。今後、ドイツにおいて憲法制定の可能性はあるのか、
その際には現在規定されていない国民投票の導入はどのようにとりあつかわれるのか。
などについて意見交換をいたしました。

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メラース教授からは、
・基本法(憲法)改正を政治的なツールとしない。という与野党の自然な合意がある。
・連邦側と連邦参議院、各州議会との綱引きが恒常的にあり、それが良い緊張状態を作っている。
・政治色が強いテーマだとしても、入り口で議論しないとせず、与野党、右派、左派に各々良い意味でのギブアンドテイク力学が働いて、取りまとめにあたる流れが出来ている。
・教育のデジタル化について政府が閣議決定してから、連邦議会に諮り、連邦参議院で一度否決され修正して可決されるまで、約11ヶ月であった。
・ドイツは変えすぎだが、日本は変えなさすぎ(あくまで私見との断りあり)、ちょうど良いのはその中間にあるのかもしれない。
・特に問題提起が国の存立に関わるものについては重い検討が必要だろう。
・ドイツでは、始めは小さなことから始めて、改正のリズムが出来ている。
・日本とドイツの違いはとても興味深い。
との答えがありました。

メラース教授は総括して、現在のドイツは、連邦議会と地方自治体議会を合わせると、全党連立状態といってよく、議会内での成熟した議論が行われている、と言える。

一方で、基本法改正があまりに簡単に行われすぎるという議論もあり、今後の検討が必要とのことでした。

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ドイツの一番人気憲法学者であるメラース教授とは、率直で意義ある議論ができたと、審査会調査団メンバー一同とても喜んでいます。