自民党「第10回 経済好循環実現委員会」<経済界より経済好循環に向けたヒアリング>(2015年5月14日)

自民党「第10回 経済好循環実現委員会」(2015年5月14日)を開催しました。
資料を掲載しましたので、よろしければ是非ご覧ください。

(議 題)
経済好循環に向けて経済界からのご意見

(講 師)
佐々木 則夫  日本経済団体連合会副会長
資料 : 「成長戦略改定への期待」

小林 善光  経済同友会代表幹事
資料 : 「経済の好循環を実現するために」

三村 明夫 日本商工会議所会頭
資料 : 「わが国企業の現況と経済好循環実現に向けた具体的施策」

三木谷 浩史  新経済連盟代表理事
資料 : 「Japan Ahead」(1)「Japan Ahead」(2)

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平成27年5月14日党本部で、私が委員長を務める経済好循環実現委員会を開催し第10回有識者ヒアリングを行いました。
[経済好循環に向けて]とのテーマで、講師には佐々木則夫 日本経済団体連合会副会長、小林善光 経済同友会代表幹事、三村明夫 日本商工会議所会頭、三木谷浩史 新経済連盟代表理事をお招きし経済界からのご意見を伺いました。


◎佐々木則夫 経団連副会長からは「成長戦略改定への期待」と題して次のようなご意見を頂きました。
○アベノミクスの政策効果により、日本経済の好循環実現とデフレ脱却が視野に。他方、人口減少・高齢化、財政健全化など円高を除く「6重苦」の残された課題の克服と構造的問題は山積。 
○経団連は本年1月、2030年に向け目指すべきビジョン『豊かで活力がある日本』をまとめ、「イノベーション」と「グローバリゼ―ション」を鍵に、政府、企業、国民が取り組むべき課題を具体的に提案。 
○日本の稼ぐ力の強化のため、新たな基幹産業を育成する必要。日本経済は潜在成長力が0%台と鈍化しているが、100兆円の付加価値創出の可能性を秘めたIoT、人口知能、ロボットなど産業構造を変えるようなフロンティアが存在。共通基盤であるICTのイノベーションが重要。世界経済フォーラムのIT競争力ランキングは前年の16位から10位に躍進したが、行政の効率性、国民の政治参加に向けた情報提供では下位。技術の進歩に遅れをとらないルール整備が必要。
○大学は、役割に応じた機能強化、特色に応じた目標の設定・機能強化が必要。また、運営費交付金の配分ルールの改革をはじめ大学改革を後押しする基盤整備も必要。 
○働き方改革は、人口減少対応とともに、「多様性」によるイノベーション加速の観点から重要。女性の活躍促進は、待機児童の解消・学童保育の充実、女性の働き方に中立的な税制・社会保障制度はじめ、あらゆるライフステージで女性が働きやすい環境を作ることが重要。若者や高齢者にも、キャリア教育の徹底・公的就労支援機関の強化が必要。新たな労働時間制度の早期創設、多様な正社員の普及、能力開発の支援等、多様な働き方を可能とする制度改革が急務。 
○外国人受け入れは「優秀な外国人から選ばれる国になるよう」、高度人材の永住も含めた長期滞在促進、留学生の受け入れ、海外子会社等の従業員の一時的な受入れ等について総合的な検討の場を設置し、産業構造や人口の変化を見据えた総合的な取り組みが必要。
○円高是正で企業の国内回帰が見られるが、国際的なイコールフッティングの観点から法人実効税率を早期に20%台とし、将来的にOECD諸国・アジア近隣諸国並みの25%まで引き下げを。 研究開発税制など国際競争力の根幹に関わる税について、拡充・向上化など見直しを推進。 
○許認可等の負担軽減、行政サービスの利便性を高めることは、ビジネスの活性化に直結。ICTやマイナンバーを所与とした業務改革、手続のワンストップ化、行政手続きの見える化が必要。 
○競争力の確保のため、電気料金は震災前の水準が望ましい。また、新たなエネルギーミックスはS+3Eを確保。
○重要インフラの老朽化が進行中。厳しい財政事情の中でも戦略的・重点的な整備が必要であり、PPP/PFIの一層の活用が必要。 
○世界の成長を取り込むため、TPPやRCEP、日EU・EPAの早期妥結、2020年までにFTAAPの構築、プルリ協定や、日欧米間の規制緩和の推進と新興国等への横展開。これら通商交渉の成果をWTO協定に取り込む必要。 
○インフラシステム輸出は、海外の成長の取り込み、日本企業の海外活動の円滑化の観点からも重要。大きなビジョンに基づくインフラシステム海外展開の戦略策、現地と連携したパッケージ型プロジェクト創出等、官民一体の取り組みが必要。 
○地域の基幹産業である農業・観光は、海外需要取り込みで成長産業となるポテンシャルを持つ。観光は航空ネットワークの強化を含む交通インフラ整備、ビザ発給要件の一層の緩和等が重要。 
○東京オリンピック・パラリンピックを最大限活用し、我が国の技術・システム等のショーケース化、国家ブランド戦略の策定・推進、国家戦略特区を活用したビジネス・ハブの強化等を進めるべき。
○産業界としても、デフレ脱却・景気回復の道筋を確かなものとするため、イノベーションとグローバリゼ―ションをテコに研究開発や投資の拡大による積極経営を進め、収益基盤の強化拡大に努めたい。
 

◎小林喜光 経済同友会代表幹事からは、「経済の好循環を実現するために」と題して次のようなご意見を頂きました。
○まずどのような社会を実現していきたいかお話しする。
○財政破綻の危機、少子化と高齢化、気候変動をはじめとした世界的な問題等様々の問題に直面して、日本は崖っぷちの状況であって、これまでの延長線上に未来はない。
○グローバル化、IT化、ソーシャル化が進み、全てがボーダレス化する中で、発想を転換することができれば、日本が未来の市場経済の主導権を握るチャンスは十分にある。
○1945~2015年までの70年間は「Japan Version 1.0」。2020年からの[Japan Version 2.0]に向けた5年間が勝負。
2020年を転換点の年として、日本の変革に目途をつける。オリンピック・パラリンピックを成功させ、持続的成長のため基礎的財政収支を黒字化。人口減少、地方創生、エネルギー問題などの問題解決に道筋。
○持続可能な社会構築のため、成長と財政再建は同時達成。経済の量的成長(
GDP)と同時に質的側面の本質(新メトリック)を検討。岩盤規制の打破と、経営者自身による決断と実行。 
○以下、経済好循環に向けて、具体的な提案を述べる。
○成長指向型の法人税改革で法人実効税率の25%への道筋を提示。租税特別措置のゼロベースでの見直し。外形標準課税の更なる拡大など。 
○賃金上昇・資産効果による景気好循環の後押し。サービス産業や中堅・中層企業の賃上げ、企業と投資家の対話の促進などによるコーポレートガバナンスの強化、NISAの更なる枠拡大・恒久化が重要。 
○人手不足の解消のため、保育資格の見直し、働く時間・場所・賃金のフレキシビリティの確保による女性の労働参加率の向上、専門的な実技技能の習得を目指す「新たな高等教育機関」の整備による若年層の就業促進等が重要。また、生産性向上のため、AI、ICT、ロボット等などの省力化に向けた設備投資、またそれに対する税制優遇等。 
○観光需要の増加促進と人手不足の解消のため、「大型連休の地域別取得」の実現と通訳案内士法の規制緩和、空き農家・古民家を宿泊施設として利用するための旅館業法・消防法・食品衛生法の規制緩和、ドライバー不足の解消のための道路交通法の規制緩和など。 
○ヘルスケア分野におけるイノベーション促進のため、ヘルスケア・データの活用、グレーゾーン解消制度などを利用した市場開拓等。 
○2030年の最適電力需給構造は、ゼロ・エミッション電源が50 %超(うち原発は20 %程度が下限、再エネは30%が限度)。また、再エネの導入拡大、省エネの強化に向けた政策の実施。
既存住宅・建築物の省エネ性能強化のための優遇税制、中古住宅の省エネ耐
震性能評価・表示の普及、耐震・省エネのための回収・改築への税制優遇等。
一定規模以上の開発プロジェクトについて熱源設備・熱伝導管等の敷設に対
し容積率割り増しを前提に分散型エネルギーシステムの導入の義務づけを。 
○新事業・新産業創出のため、自動走行などの最先端技術実証に向け電波法
・航空法・道路交通法等の特例を特区法に追加。2015年で終了する特区の集中取り組み期間の延長、更なる取り組みの強化など国家戦略特区等を活用した規制改革を。
 

◎三村明夫 日本商工会議所会頭からは、「わが国企業の現況と経済好循環実現に向けた具体的施策」と題して次のようなご意見を頂きました。
○マクロで日本経済は、緩やかな回復基調が持続。円安定着で輸出が持ち直し大企業中心に業績改善。雇用環境の改善に支えられ個人消費は鈍いペースながらも底堅い。これらは設備投資、輸出増など好循環に必要な要件。
○足元では人口の多い地域で回復が先行。販売価格設定動向は、取引先との交渉でコスト増加分を販売価格に転嫁できた企業が全体の2割弱。ICT活用で負担軽減が必要。
○TPPが妥結されれば、電力コスト以外の5重苦は解消されると期待。中小企業の景況は、回復のベースにばらつきはあるものの改善傾向にある。都市規模別で見ると、人口の少ない地域での中小企業の持ち直しのペースが遅い。現時点では2015年度の中小企業の賃上げは昨年を上回る水準。
○資本蓄積の拡大には、国内マーケットの拡大が不可欠。同時に円安メリットを活かすために、国内設備投資を進め、輸出を拡大することも重要。 
○会員の70%が労働力不足で生産を伸ばせない状況。人手不足をどう解消するのか至急検討する必要。
○生産性の向上には、ICT・ロボットの利用・企業再編などあらゆる方策を講じ大胆な規制・制度改革によりこれを後押しすべき。 
○経済好循環に向けて、具体的な施策について以下4つ提案する。
○地方創生を実現する基盤づくりを。地方版総合戦略の策定と地域経済分析システム(RESAS)閲覧の自由化等民間へのデータ解放。地方への人の移動促進のための医療・介護費用の負担、税・社会保障等の自治体間の調整の仕組みの構築。農業分野、古民家の宿泊施設としての活用等「まち・ひと・しごと」を創るための規制・制度改革。地域で施策をスピーディに実施できるよう、ひも付きでない自由度の高い資金の配分。地域の労働力確保のための株式会社の農地保有など。地域活動機能強化のための商工会議所への寄付の全額損金算入化。 
○高付加価値化・生産性向上に挑戦する中小・中堅企業に強力な後押しを。中小企業の8割を占めるサービス産業の生産性向上、成長分野に挑戦する中堅・中小企業のイノベーション活動の促進、生産性向上に向けた規制・制度改革の推進等が重要。 
○女性・高齢者の労働参加のための環境作りを。女性の円滑な職場復帰・再就職に向けた学び直しの機会の充実、就業継続のための多様な働き方を促進する施策の推進、女性の活躍を促す社会保険制度・税制の構築等が重要。 
○社会保障給付の重点化・効率化の徹底と負担の公平化を。商工会議所は消費税の増税に、社会保障の重点化・効率化を前提に賛成したが、どう進んでいるか進捗が不明。税・社会保障の一体的改革が急務。消費税の複数税率は、社会保障財源が毀損し事業者の負担増となることから反対。一体改革により生ずる財源と女性・高齢者の活躍による所得税増加分を若者の環境整備など少子化対策に重点配分。 



◎三木谷浩史 新経済連盟代表理事「Japan Ahead」と題して次のようなご意見を頂きました。
○英・エコノミスト誌は、日本のGDPシェアが2050年に2%未満に低下すると予測。今の日本に必要なことは発想の転換。必要なのはDefenseではなく Offense。
○本日は3つの提案をさせていただく。1つは「インテリジェント・ハブ化構想」、東京をアジアのシリコンバレーに。2つ目は、最先端社会・スマートネイション化。電子化。3つ目は日本を超観光立国へ。これらの実施効果は約150兆円と試算。
○競争力会議でもKPI(重要業績評価指標)の設定を提案したが、トヨタのようなリーダー企業の育成、英語力、海外企業の本社・アジア本社誘致数、法人税率、開業率など施策毎にKPIを設定し責任者を明確に定めて改革を推進すべき。
○世界では、インターネットによるビックバンが起きており、情報を制するものが世界を制する。今後あらゆる「もの・こと」の99.4%がインターネットにつながるとの予想もあり、ビックデータ等がサービスの在り方を変える。 
○インターネット企業の時価総額ランキングベスト10に中国企業が4社、ネット通販の本場米国を超える流通総額になるなどネット世界での中国の台頭。ハードウェアの品質にだけ依存するのは極めて危険。
○社会は所有するエコノミーから、「ゆずりあう」シェアエコノミーへ急速に移行しつつある。具体的には、空き家をホテルとして利用、乗り物を共有、育児・介護・家事等空き時間・人手のシェアなど。
○世界は社会の変化の中でデータに対する戦略を見直している。
○「インテリジェント・ハブ化構想」とは、簡単に言うと「データを制するこ
とが国の経済力を決める」ので東京をアジアのシリコンバレーにすべきとの意味。
通信網・インターネットをどこの国よりも圧倒的に安く速く使える環境整備(インターネットアウトバーン構想)。それに向けて法人税改革や海外からの企業家・技術者などへの大胆な優遇など日本にデータ、優秀な人材が集まる環境の整備。
○イノベーションを起こす人材育成のため、21世紀型素養としてプログラミング教育を小学校から実施、高校の科目「情報」で大学受験できるよう。株式報酬制度の導入等コーポレートガバナンス改革。
○最先端に対応できるよう社会全体を最適化する「スマートネイション」を目指す。シェアリングエコノミーの促進のため道路運送法、旅館業法、労働関連法令等の法環境整備とIT利活用に向けた法制度の整備。「イスラエルの10万円以上の振り込みは全て電子決済」などのような電子ペイメント・キャッシュレス決済の促進。デジタル・ファースト、対面原則・書面交付原則撤廃などIT利活用のための新法制定。
○超観光立国の実現に向けて、「2030年までに訪日外国人1億人」の野心的KPIを設定。横田基地の民間共用、LCC導入支援など海洋国日本の空港政策を抜本的に再検討。移動・宿泊手段確保のためのシェアリングエコノミー、免税等の整備拡充等を進める。