週刊新藤第253号 復興予算の使途に大きな疑問〜衆院・行政監視委、民主の反対で開かれず〜

10月11日、衆議院の行政監視に関する小委員会は、民主党の理不尽な欠席により開催することが出来ませんでした。
東日本大震災復興予算の使途に大きな疑問があること、その解消のために国会が果たすべき役割をご報告します。


東日本大震災復興予算の使途について、国会閉会( 9 月 8 日)後の報道等で、復興事業の中に被災地外や全国対象の事業、直接被災地・被災者支援とはつながりのない事業がみられるとの指摘がなされています。


◆ 復興予算の財源は国民の増税

 震災復興予算は、当初の 5 年間で19兆円程度を想定し、そのうち10.5兆円を復興増税で賄うことに。
・所得税は2013年1月〜25年間、2.1%上乗せ。
・個人住民税は2014年 6 月〜10年間、年 1 千円上乗せ。
・法人税は2012年 4 月〜実効税率 5 %引下げを 3 年間凍結。
このように国民が特別に増税までして作った復興予算は、被災地に出来るだけ早く、集中的に使われることを前提にしたものである筈です。
私が委員長を務める衆議院の決算行政監視委員会では、こうした観点から予算のチェックを行いました。
すると2011年度第 3 次補正予算9.2兆円のうち被災地外に回った予算が 2 兆円に達する可能性をはじめ、復興予算の使途として疑問を持たざるを得ない数々の事業が浮き上がってきたのです。


◆ 調査捕鯨補助と反捕鯨団体対策費

 農林水産省の予算では「鯨類捕獲調査安定化推進対策費」として、23億円が盛り込まれています。
このうち18億円は調査捕鯨をする研究所への補助金であり、5 億円は反捕鯨団体「シー・シェパード」の妨害活動に対する監視船のチャーター代です。
農水省は、被災地の石巻市は鯨肉加工が主要産業であり、調査捕鯨に出ないと鯨肉を供給できないと説明していますが、11年末の鯨肉の国内在庫は石巻の使用量の10倍以上あるとのデータもあります。
そもそも年度毎に継続的に行われている事業に、補正で予算を追加する理由がよく分かりません。


◆ 北海道と埼玉県の刑務所に復興予算

 北海道の月形刑務所と埼玉県の川越少年刑務所での職業訓練経費2765万円が計上されていました。
小型油圧ショベル購入費や受刑者の受験手数料などの予算が復興とどのように関係するのでしょうか?
法務省からの答えは、技術を身につけ出所した受刑者が、更正して労働需要の高まっている被災地で働くかもしれない、とのことでした。


◆ 外国との青少年交流事業を復活

 外務省予算では、アジア大洋州・北米地域との青少年交流事業として72億円が計上されました。
しかし、この事業は民主党の仕分けで縮減されたもので、震災に対する海外の理解を得るとの名目で復活されたとしか考えられません。


◆ 被災地に交付されない設備補助金

 経済産業省が民間企業の設備投資に補助金を交付する「国内立地推進事業」は、2950億円あります。
ところが、補助対象510件のうち岩手、宮城、福島の被災 3 県で事業採択されたのは30件のみであり、岐阜県のコンタクトレンズ工場など被災地に直接関係しない企業や、トヨタ自動車、キャノン、東芝など大企業が補助を受けているのです。
一方、「グループ補助金」事業は岩手県内だけで1496億円の申請に対し、交付額は577億円、予算不足が指摘され、拡充要望があります。


◆ 沖縄の国道整備を復興予算で

 国土交通省は、沖縄の国道整備事業に 6 千万円を充てました。
沖縄は被災地から遠いが、災害に備えて整備する防災対策として必要と答えがありました。


◆ 被災地以外の官庁改修に120億円

 財務省と国土交通省による被災地以外の庁舎耐震改修工事には、2011年度、2012年度の復興予算から約120億円が計上されています。
全国的な防災対策としての必要性があるにしても、被災地支援よりも優先して支出するべきものなのか、国民理解と政治判断が必要です。


◆ 委員会開催を反対する民主党

 こうした政府が行う行政を監視し、必要な是正・改善を申し入れるために衆議院に設置されているのが、決算・行政監視委員会です。
私は 9 月中旬、各党委員と連絡をとり、国会閉会中の委員会審査を相談しました。
すぐに自民党、公明党、国民の生活が第一、の三会派は委員会審議の緊急性・重要性で一致し、早期開催で合意したのです。
ところが民主党は、代表選挙の最中であり、緊急性も低いので、委員会審査には反対だ、と主張し各党協議にも応じようとしません。
私は 9 月25日、民主党代表選が終わるのを待って委員会の理事懇談会を開きました。今度は党内人事が決まっていない、という理由でまたもや民主党は欠席です。
私は各党合意なしでの委員会開催を避け、10月 3 日には担当省庁との勉強会を開きました。しかし、ここでも民主党のみが欠席です。
この間、断続的に自民と民主の国会対策委員会による交渉も行ってもらいましたが、民主側は、人事が固まっていない、という理由のみでかたくなに交渉を拒み続けるのです。


◆ 小委員会は、民主の欠席で流会

 日を追うごとに報道も増え、国民の関心も高まる中、私はこれ以上待ちきれないと考え、10月 9 日監視委員会の下に設けられた「行政監視に関する小委員会」の幹事会を開き、11日の小委員会開催を委員長職権で決定しました。
しかし、14名で構成する小委員会のうち委員 8 名の民主党が欠席したため、野党議員 6 名が出席した委員会は流会となってしまいました。


◆ 政府は議論に賛成、党は議論反対?

 復興予算の取り扱いは、政府と与党の取り扱いが全く逆です。
国会では民主党が委員会審議を拒否し、問題に取り組もうとしませんが、民主党政権は、野田首相が代表選の最中に復興予算の横流しを認め、平野復興大臣はTV番組で使途に問題を認め、「きちんと精査し、被災地に特化した予算としたい。」と述べています。
そして、政府は行政刷新会議で復興予算の使途を見直し、11月中に事業の妥当性を判断するようです。
ところが行政刷新会議は法的な設置根拠がなく、何の権限も持っていません。そもそも与党のみで構成され、決める人とチェックする人が同じ立場というお手盛り会議です。
与党・民主党の国会委員会の審議拒否は、国会軽視、責任放棄以外の何物でもなく、政権を担当する資格が問われる行為です。


◆ 国会審議で復興予算の適正化を!

 政府=行政府の行う事業予算をチェックするのは、国会=立法府の根源的な役割なのです。
決算・行政監視委員会は、国会法に基づき設置された機関であり、必要に応じ予算の組み替えや縮減などを政府に「勧告」や「決議」をできる権限を有しています。
民主党はこれまでの国会軽視を反省し、可及的速やかに復興予算の国会審議に応じるべきです。
被災地の復興は遅れ、必要な予算が充分に手当てされていない状態が続いています。
私たちが問題にしている復興予算の不適切な使途計上は、2011補正予算に止まりません。
執行中の2012予算や2013予算の概算要求は、同様に誤った方針のまま計上されているのです。
まさに「過ちを改むるに憚ることなかれ」です。
未だ苦しみと悲しみの中にいる被災地の皆さんに、増税してでも復興支援しようとする国民の想いがしっかり届くよう、与えられた国会の権能を活かし全力で取り組みます。


新 藤 義 孝