週刊新藤第252号 「尖閣諸島を守るための方法」〜国家・国民の覚悟が問われている〜

9月25日には、尖閣諸島領海に台湾漁船40隻と巡視船10隻が順次侵入し、退去を通告する海保巡視船と放水しあうなど、緊迫した激しい応酬がありました。日本の島と海は、どんなことがあっても守りきる決意と行動が必要です。


政府は 9 月11日、尖閣諸島(以下、尖閣)の魚釣島・北小島・南小島 3島の購入契約を地権者と結びました。私はその日の昼、領土特命委員会を開催し、政府を質す中で判明したことをご報告します。


◆ 決定はたった1回・20分の会議で!

 尖閣購入に関する政府内の正式な会議は、 9 月10日の関係閣僚会合 1 回のみであり、わずか20分で終了しています。しかも出席したのは官房長官・総務大臣(代理:副大臣)・外務・財務・国土交通の各大臣 5 名であり、首相はおらず、防衛大臣は呼ばれておりません。
これに先立ち、民主党内で尖閣国有化の検討会議が開かれたとは聞いたことがなく、報道もありません。
尖閣国有化という我が国の重要な国策変更は、議論の経過も解らず、国会の議論も無いまま、一握りの人の判断で決められたのです。


◆ 20億5千万円の価格根拠なし!

 領土委員会で私は、地権者と合意した購入額20億 5 千万円の根拠も尋ねました。政府側は算出根拠を説明できず、鑑定評価書もない上に総合的・政治的な判断で決めたという呆れた答があるだけでした。
固定資産税の評価額や賃借料から推測すると 5 〜 6 億円という話もありました。政府には、20億円もの国民が提供するお金の根拠をきちんと示す責任があります。


◆ 中国による対日要求 3条件

 中国政府筋の話として 8 月28日に興味深いネット記事が出ています。尖閣をめぐり中国政府は、
①上陸させない ②調査をしない ③開発しない の 3 条件を日本に要求する、という報道です。
これは国有化にあたり野田内閣が示した尖閣の管理方針である
①上陸は認めない ②船だまりなどの施設は作らない ③利用計画は定めない と合致したものであることが分かります。
民主党政権は、この対日 3 条件を守っている限り=国による島の管理を強化し、無人島政策を続ければ、国有化について中国の理解を得られる、と考えていたのです。
しかし、この判断は全くの誤りであり、中国につけ入る隙を与えてしまったのです。国有化に反発した中国側は、いくつもの対抗措置を矢継ぎ早に打ち出してきました。


◆ 準備されていた中国側の行動

 まず、中国国内で過激な反日デモが起こり、日本企業や在留邦人が襲撃されました。
また中国は、国連に尖閣周辺を中国の領海とする海図を提出、併せて大陸棚の拡張申請も行いました。
さらに、海洋観測衛星を打ち上げ尖閣周辺の監視を強化することを決めたり、東シナ海での軍事演習を活発化させたり、尖閣の天気予報まで始めました。
1000隻にも及ぶ東シナ海への漁船団のうち、尖閣周辺に出漁する漁船には補助金が出るようです。
二年前のように領海内で違法操業を行う恐れは十二分にあります。
日本への不法行為は絶対に許さず、厳しく罰しなければなりませんが、問題は、中国側が事前にこれら一連の行為を準備しており、何かの口実を見つけ次第実行するつもりだったということです。
中国の尖閣強奪の野望は彼らの核心であり、日本はあらゆる事態を想定し、外交的・物理的対抗措置を講じなければなりません。
野田首相の「国有化に対する中国の反応は想定を超えていた」とのコメントには、呆れるしかありません。


◆ 尖閣諸島実効支配の現状

 国有化直後から尖閣周辺海域では中国の海洋監視船「海監」など10隻を超える公船が接続水域や領海への侵入を繰り返し、海上保安庁の巡視船とにらみ合いました。
以前は 1 隻でやってきて排除されていましたが、今年の 7 月から領海に接近・侵入した中国の公船は、海保の退去勧告に対し、「ここは中国の領海だ。日本船は中国の海から直ちに退去せよ」と逆に言い返すようになっているのです。
25日には台湾漁船40隻及び巡視船10隻が順次領海に侵入し、退去を通告する海保巡視船と放水しあうなど、激しい応酬がありました。
尖閣海域では日・中・台湾の船が入り乱れ、各国は「ここは自国の海だ。ただちに退去せよ」と同じ主張をしているのです。
この上、もし無人島である尖閣の島々に外国人が上陸し居座ったならば、日本の実効支配は破たんしてしまいます。


◆ やるべきこと①決意を行動で示す

 まずわが国がやるべきことは、「尖閣の島と海を断固守り抜く決意」を行動で示すことです。
外国人が尖閣に上陸や違法操業すれば、「即時逮捕、国内法による厳正処罰する方針」を政府が宣言し、中国や台湾へ申し入れるべきです。


◆ ②国際広報の強化・積極展開

 尖閣は歴史的にも国際法上も我が国固有の領土です。
○1895年、当時の明治政府は約10年かけて島を調査し、他国の施政下にないことを確認した上で我が国に編入しました。この時にどこの国からも抗議は来ていません。
○1951年のサンフランシスコ平和条約で、日本は戦争によって拡張した領土を放棄した上で主権を回復しましたが、尖閣は放棄した中に含まれていません。中国も台湾もこれに異議を唱えませんでした。
○1972年の沖縄返還協定では、米国から日本に返還される施政権の範囲を緯度経度で明示し、尖閣はその中に含まれています。
○台湾・中国は1969年の国連アジア極東経済委員会の海洋調査により、尖閣周辺に石油埋蔵の可能性が報告された 2 年後、1971年になって突然領有を主張し始めたのです。
○中国は尖閣は「日本帝国主義により戦争で奪われたもの」と歴史をねつ造し主張を正当化しようとしています。
日本は尖閣領有の歴史的・法律的正当性、正義の主張を国際社会に広く訴えなければなりません。
私は、外務省にホームページを充実させるとともに、世界中にある日本の在外公館のホームページに、その国の言葉で尖閣資料を載せるよう、領土委員会で要請しました。


◆ ③実効支配強化=公務員の常駐

 尖閣が無人島である限り、隙を突いて外国人が上陸し居座ってしまう可能性も排除できません。
わが国の実効支配を強化するためには、島に海上保安官及び警察官を常駐させ、常時警戒態勢を敷くべきです。私は沖合の巡視船を支援拠点とすれば、水や食料供給など対応可能では、と政府に提案しています。


◆ ④海保・自衛隊の連携強化

 海保だけでは対応しきれない事態には、自衛隊に海上警備行動が発令されます。即時・切れ目のない対応を可能とする連携強化が必要です。


◆ 国家・国民の覚悟が問われている

 尖閣に何人も上陸させないという方針は、元々自民党政権時代に始まったものです。
日本は30年にわたりこれを守ってきましたが、その間に中国は経済力をつけ軍事力を増強した上で、領土への野心を満たすための行動に出ているのです。
日本は自国の領土を守るために、国策変更すべき時を迎えています。
私は自民党において、既に無人国境離島の管理のための法案を国会提出し、特定国境離島の保全・振興法案は部会審議を終えています。
さらに次期総選挙の自民党公約には、尖閣の有人利用と海の有効活用を盛り込みました。
今後中国はさらに圧力を高めてくるに違いありません。
わが国固有の領土・尖閣を守るためには、断固たる決意と行動が必要です。
何より「国家・国民の覚悟」が問われているのです。


新 藤 義 孝