2003.11.14 【希望の星】関連 日露非核化協力委・第19回総務会開催

11月14日、モスクワにおいて第19回日露非核化協力委員会総務会が開催され、日露間でヴィクターⅢ級原潜解体事業実施のための資金供与契約及び請負契約が認証された。
ここに改めて、新藤義孝・前外務大臣政務官が推進する「希望の星」プロジェクトの概要を掲載いたします。

1.日露非核化協力の経緯

(1)91
年12月のソ連崩壊を踏まえ、92年7月のミュンヘン・サミットにおいて、旧ソ連諸国における核兵器の廃棄の結果生じる核物質の平和利用を確保するための
努力を支援することが合意された。これを受けて、旧ソ連非核化協力を実施するため、93年から94年にかけて、我が国はロシアを含む旧ソ連4ヶ国(ロシ
ア、ウクライナ、カザフスタン、ベラルーシ)との間でそれぞれ二国間協定を締結し、国際機関たる「非核化協力委員会」を設置した。

(2)我が国は、これら4つの非核化協力委員会に対して、93年度と99年度の二回に分けて、合計約250億円の拠出を行った。このうち、日露非核化協力委員会に対しては総額約200億円を拠出した。

(3)日露非核化協力委員会の最初の事業として、ロシアによる放射性廃棄物の日本海への海洋投棄を防止するため、ウラジオストク近郊に低レベル液体放射性廃棄物処理施設「すずらん」を建設した。(建設費約40億円。2001年11月供与式典実施)

2.退役原潜解体協力事業の経緯

(1)
現在、ロシア極東地域(ウラジオストク近郊及びカムチャッカ)には、41隻の退役原潜が未処理のまま係留されており、うち36隻は自力浮上が不可能な状態
にある。同地域では、これまでに臨界事故や放射能漏れなど3件の原潜事故も発生しており、環境汚染の重大な脅威となっている。これらの安全かつ迅速な解体
は、核軍縮・不拡散の観点に加え、日本海の環境保護の観点からも緊急の課題となっている。

(2)極東ロシアの
退役原子力潜水艦解体事業等に関する我が国の協力については、事業実施上の様々な困難により円滑に進まなかったが、昨年11月、新藤政務官(当時)がウラ
ジオストクを訪問し、直接ロシア側関係者と協議したことが契機となって、再び加速への決定がなされた。

(3)
極東における原潜解体協力事業は、本年1月の小泉総理の訪露時に日露首脳により採択された「日露行動計画」にも盛り込まれた他、右訪問時に行われた小泉総
理の演説の中でも同事業の重要性が指摘され、同事業を「希望の星」と命名した。同事業は、昨年のカナナスキス・サミットでG8により合意された「G8グ
ローバル・パートナーシップ」の一環としても位置づけられる。

3.現状及び今後の見通し

(1)
上記2.の経緯をふまえ、本年2月、両国政府は「希望の星」第一弾として、ウラジオストク郊外ボリショイカーメニ市のズヴェズダ造船所に保管されている
ヴィクターⅢ級原潜1隻の解体実施を決定した。4月の「日露非核化協力委員会」総務会において、ヴィクターⅢ級原潜解体事業に関する基本文書(実施取決
め)案に概ね合意に達し、事業開始の目途がついた。

(2)これを受けて、6月7日、新藤政務官がウラジオストクを再訪し、解体の対象となる原潜の現状を把握するとともに、事業の開始に向けた式典(於ズヴェズダ造船所)に参加した。

(3)6月28日、川口大臣のウラジオストク訪問の際、上記ヴィクターⅢ級原潜解体事業に関する基本文書(実施取決め)に署名がなされた。

(4)11月14日、「日露非核化協力委員会」第19回総務会において、実際に解体を行うための具体的な契約(資金供与契約及び請負契約)が認証された。近日中に解体作業に着手する予定。

(5)本件事業の重要性は、本年5月末のサンクトペテルブルグでの日露首脳会談でも取り上げられ、プーチン大統領より、非核化分野での日本の協力が他国に
比しても進んでいることを評価しているとの発言があった。また、本年6月のエビアン・サミットにおいても、「G8GP」をフォローアップする「グローバ
ル・パートナーシップG8行動計画」が採択され、本件事業の進展が評価されている。