週刊新藤第242号 日本の明るい未来☆海は資源の宝庫!〜資源小国から海洋資源大国への道〜

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◆ 日本は世界6位の海洋立国

 日本は四方を海に囲まれた海洋国です。「世界で10番目の人口と、60番目の国土を有していますが、6,852の島々で構成され、東洋の小さな島国といわれています」と子どもたちは学校で教えられます。
 ところが、1994年に国連海洋法条約が発効し日本も1996年に批准すると、沿岸から200カイリ(370.4㌔)までが排他的経済水域(EEZ)として、海洋調査・資源開発・漁業権益 等が他国を排して認められることになりました。
 これにより日本が主張できる海洋国土面積は領海とEEZを合わせ、実に世界第 6 位となったのです。
 海なくして日本という国は語れません。貿易の99.7%は海上輸送です。北は択捉島から南は沖ノ鳥島まで3,000㌔、沖ノ鳥島はハワイやベトナムのハノイよりも南にあるのです。


◆ 資源小国から海洋資源大国へ

 日本は資源小国とも呼ばれ、油田も炭田も金属鉱山も小規模で、大半を海外からの輸入に頼っています。
 ところがこの位置付けを一変させる兆しが、我が国の先進科学技術を投入した海洋資源研究・開発の進展によって見えてきているのです。


◆ 「メタンハイドレート」は94年分

 「燃える氷」「次世代天然ガス」と呼ばれるメタンハイドレートは、メタンガスがシャーベット状になって海底地層に蓄積されたものです。
 これまでの調査でも、日本の使用量の94年分、約120兆円相当が我が国EEZ内に存在している可能性が判明しています。
 ところが、メタンハイドレートは、深さ 1 千㍍の海底からさらに 2 千㍍掘り下げた地層付近に存在します。
 地球深部の高圧と低温状態で安定している資源を、どのように地上で使用できるようにするか、産出方法も未だ確立しておりませんでした。


◆ メタハイ・世界初の海洋産出試験

 日本政府は、国家プロジェクトとして平成13年より研究を開始し、平成19〜20年、カナダで減圧法による陸上産出試験を行い、世界初の連続生産を成功させています。
 そして10年の歳月をかけた本年 2月、地球深部探査船「ちきゅう」が世界初の海底下メタンハイドレート産出試験に挑み、愛知県渥美半島沖で事前掘削が行われました。
 本年度の第 1 回産出試験が成功すれば世界初の快挙となり、日本独自のエネルギー資源確保に明るい希望が見えてきます。

○地球深部探査船「ちきゅう」概要資料

○【動画】地球深部探査船「ちきゅう」視察

 


◆ 「海底熱水鉱床」は80兆円の宝の山

 海底熱水鉱床とは、「海底下に浸透した海水が地下深部でマグマに熱せられ、地球のマントルに含まれる元素を海底に噴出(海底温泉)し、海水で冷却された重金属が沈殿した多金属・硫化物鉱床」のことです。
 ここには銅、亜鉛、マンガンの他金・銀等の貴金属やレアメタルが含まれ、日本近海に80兆円相当が存在している、と期待されています。


◆ 沖縄の海底に巨大な熱水湖が

 沖縄本島の北西、水深 1 千㍍の熱水鉱床には、地層中に巨大な熱水湖(水温300度)があることを政府は平成22年、探査船「ちきゅう」による掘削調査でつきとめました。
 「ちきゅう」はこの熱水湖から陸上と同じマンガンなどの塊を見つけており、沖縄の海の熱水湖には世界最大級の黒鉛鉱床が誕生しつつあることが分かったのです。
 さらに「ちきゅう」は 1 千㍍の海底に人工的に穴を掘り、熱水湖から熱水を噴出させ鉱物や貴金属を効率的に回収することに成功しました。
 高く積もるまでに通常数十年以上かかるチムニー(海底煙突)を人工的につくり、1 年程で高さ11㍍に成長させることが出来たのです。
 この熱水には工業原料として重要なレアメタルが含まれており、レアメタルの主要産出国である中国が戦略物資として輸出管理を強化する中で、日本の自主鉱脈確保の意義は説明するまでもありません。

○海底に開けた穴から噴出した熱水中の鉱物が冷やされてできた11mのチムニー(海洋研究開発機構提供)


◆ 太平洋に陸の800倍のレアアース鉱床

 昨年 7 月、東京大学のチームが太平洋の水深3500〜 6 千㍍付近で、ハイブリッドカーのモーターやハイテク製品に欠かせないレアアースの鉱床を発見したと発表しました。
 埋蔵量は実に世界の陸上埋蔵量の800倍!。大半が公海にあり国際海底機構への鉱区申請が必要ですが、日本は第一発見者のアドバンテージを持つことになりました。
 レアアースは世界産出量の97%を中国が占め、現状日本は輸入量の90%を中国に依存しています。
 一昨年 9 月、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の際に、中国が日本向け輸出を一時停止するなど、レアアースは中国の外交カードになっていますが、そうした独占に風穴を開ける意味は極めて大きいのです。

○「太平洋に夢の泥 東大チーム、レアアース鉱床発見」


◆ 国内の石油・天然ガス田開発も

 「日本では石油は採れない」というイメージがあると思いますが、実は、日本列島を取り囲むように石油・天然ガスの海底油・ガス田の有望海域が広がっており、政府は昭和36年より基礎調査を行っています。
 平成20年には海底に眠る石油・天然ガス資源の詳細なデータを収集する国内初となる三次元物理探査船「資源」をノルウェーから購入し、油田の商業化に向けてより詳細な調査が行われているのです。

○三次元物理探査船「資源」概要資料

○【動画】海洋資源調査船「白嶺」、三次元物理探査船「資源」視察

 


◆ 海洋ロマン議連の活動と役割

 私たちはこうした海洋資源開発を支援するため、自民党内に「国家基幹技術としての海洋地球科学技術を推進する議員連盟(海洋ロマン議連)」を結成し活動しております。
 探査船「ちきゅう」は、世界初となる重要試験を成功させたにもかかわらず、新年度予算は110億円から100億円に10%削減されました。
 政府に改善を働きかけるのが議連の役割であり、政治の理解と後押しがなければ現場は動けません。
 世界のエネルギー消費は増加をたどり、資源価格の高騰は産出国の資源ナショナリズムを高めます。
 我が国は世界第 6 位の広大な海を開発し、他国の資源政策に影響されない国産の資源供給源を持つことが最重要課題となるのです。


◆ EEZ境界画定には領土問題の解決

 一方、日本の海洋政策推進には解決すべき大きな課題があります。
 日本は世界第 6 位の海域を主張できますが、北方領土付近のロシア、竹島付近の韓国、東シナ海の中国との境界画定が合意されておらず、海域利用が制限されているのです。
 これは、私が領土問題に取り組む理由の一つでもあります。

○日本の領海・EEZ図


◆ 国家戦略としての海洋資源開発

 メタンハイドレートや深海底鉱物資源については、世界的に商業生産が行われている例はなく、民間企業にとってリスクが大きい分野です。
 であるからこそ、私は日本が国家戦略として探査・開発に先進科学技術を投入し、一挙に商業化の道筋をつけられないかと考えています。


◆ 新たな産業・人材・雇用の発生も

 そして、これまで需要の少なかった海洋資源開発分野に新たな産業を興し、人材・雇用を産み出していってはどうでしょうか?
 現在は主力である欧米製の設備や機械、クレーン、ドリル、工具も、日本製造業の高い技術力を持ってすれば、部品や工具に至るまで国産開発は充分可能です。


◆ 日本のノウハウを世界中で実践!

 加えて、日本の海で成功したノウハウを世界中の海で日本企業が実践・提供してはどうでしょうか?
 このチャレンジは、日本の新しい明るい未来を創るものであり、大きな夢と志を持って引き続き取り組んでまいります。


 

新 藤 義 孝