週刊新藤第229号 野田政権は言行不一致内閣! ~改めるべき無責任体質と独断専行体制~

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臨時国会が開かれましたが、実質審議なしで閉じられてしまいます。
衆議院・決算行政監視委員長として、野田新政権での一刻も早い本格的な国会審議の開始を願っています。


◆ 正当性に欠ける野田新政権

 菅首相がようやっと退陣し、新たに第95代の内閣総理大臣に野田佳彦氏が就任しました。
 平成に入り23年間で17人目の首相です。自民党政権末期より続く一年おきの首相交代という悪い流れは断ち切らなければなりません。
 しかし、民主党は与党の党首が替わる時=すなわち首相の交代の際には国民に信を問うべき(解散総選挙)と強く主張してきました。
 にもかかわらず民主党政権は 2 年で 3 人目の首相を誕生させたのです。新首相候補を選任する民主党代表選挙はわずか 2 日間、しかも国会議員のみの投票です。
 国民に開かれた政策論議と丁寧な手続きを無視し、数合わせで誕生した野田政権は、そもそも正当性を欠いていると言わざるを得ません。


◆ 平然と言行不一致する新首相

  9 月13日の臨時国会冒頭で野田新首相は所信表明演説を行いました。「[正心誠意]を基本とし、「議会制民主主義の要諦は、対話と理解を丁寧に重ねた合意形成にある」と説き、「ねじれ国会の制約は議論を通じて合意を目指すという、立法府が本来あるべき姿に立ち返る好機でもある」と訴えました。
 ここまで高らかに自らの主張を謳いあげながら、国会会期を 4 日間で閉じると決めてしまいました。
 私はあまりの言行不一致に呆れ、開いた口がふさがりませんでした。


◆ 独断専行色がさらに強まった新体制

 この所信表明に猛反発した野党は、新政権発足後の基本方針と懸案処理のため28日間の国会延長を申し入れました。
 民主党は強硬に拒否していましたが、閉会日当日の朝、輿石幹事長より唐突に14日間の会期延長が提案され、 9 月末まで国会は延長されたのです。
 突然の方針転換は、民主党の国会対策担当幹部にも知らされておらず、就任したばかりの松本国会対策委員長代理など 3 名が民主党執行部に辞表を提出しました。
 国会の会期決定という重要な基本事項が、党の代表である首相と輿石幹事長ら少人数・密室で決められ、強引に実行されたのです。
 これは野田新体制が首相の気持ちとは裏腹に、独断専行色がさらに強まっていることを意味します。


◆ 臨時国会で継続法案審議の約束

 野田新体制はさらに重要な約束違反をしています。菅内閣末期の 8 月25日、自民党と民主党は、二重ローン救済法案、私学復旧助成法案、原発事故調査委員会法案の継続 3 法案について「次期臨時国会で速やかに成案を得る」という確認書( 8 月25日付け)を取り交わしました。
 今開会中の臨時国会は、新首相の所信を聴くだけではなく、約束した継続 3 法案について審議を行い採決する約束になっているのです。
 首相の替わる臨時国会で、継続法案の審議を行うためには、
①まず首相の所信に対する衆参両院の本会議質疑に 1 週間。
②新内閣の方針に関する衆参両院での予算委員会の質疑に 1 週間。
③衆参両院の各委員会での新所管大臣の所信と質疑に 1 週間。
④衆参両院での所管委員会による法案審議に最低でも 1 週間。
と最低 1 ヶ月間の会期が必要です。
自民党が主張した28日間の延長には、こうした根拠があるのです。


◆ 14日間の延長は実質ゼロ回答

 しかし、延長は 9 月30日までの 2週間のみであり、首相がニューヨークの国連総会で不在の 1 週間は民主党の拒否で国会は開かれず、残りの1 週間は衆参の予算委員会が開かれるだけで閉じられてしまいます。
 そもそも 4 日間で国会を閉じた後、閉会中審査で予算委員会を開く、というのが民主党の提案でした。
 野党の要求に形だけ応じたふりをして、実質ゼロ回答だったのが今回の国会延長の真相です。
 どこに野田首相の云う「正心誠意」や「丁寧な合意形成」があるのか、言葉面だけのご都合主義としか云いようがないのです。


◆ 復旧の遅れは2次補正が原因

 野田新政権が一刻も早く取り組むべきは、被災地支援のための第 3 次補正予算です。自民党はすでに 7 月、総額17兆円規模の補正予算が必要と具体的な提案を発表しています。
 ところが菅内閣は自らの延命を優先し、財源問題を解決できないまま、前年度の決算剰余金 2 兆円弱を使った小規模の 2 次補正予算しか編成しませんでした。被災地の学校や病院等の本格復旧が遅れているのは、民主党政権の能力不足と稚拙な財政運営が大きな原因です。
 しかも、 2 次補正編成で作業が中断してしまったため、 3 次補正編成は着手が遅れ、国会に提出されるのは早くとも10月後半です。
 国の第 3 次補正予算が成立しても、実際に地方で使うためには地方議会の歳入受け入れが必要です。
 被災地支援は待ったなしなのに、現地に予算が届き、事業が発注できるのは12月議会か来年の 3 月議会以降です。それでも新政権は本格国会を開こうとしていないのです。


◆ とてつもなく心配な来年度予算

 さらに問題なのは、来年度の当初予算です。 3 次補正予算の編成作業が遅れたことにより、新年度予算編成作業が大幅に遅れています。
 しかもマニフェスト関連予算や社会保障費の自然増を加えると、来年度の歳出は今年度を大幅に上回ることが予想されます。
 一方、歳入はいわゆる埋蔵金の「その他収入」をほぼ使い切っており、税収も落ち込む中、果たして予算を組むことが可能なのかどうか、極めて危うい状況です。
 歳出を抑えるにはマニフェストの見直しが不可欠ですが、民主党内でマニフェスト見直し派と堅持派の対立が続いている状況では、どうなるかは全く予測不能です。
 しかも政府は来年度に発行する国債を44兆円以下とする閣議決定を行いました。これにより今年度と同様、補正予算での国債発行の余地がなくなり、言うなれば来年度に景気が極端に悪くなっても、再び大災害が起きても、思い切った財政措置がとれない、極めて硬直的な国政運営をあらかじめ宣言したといえます。
 これは、民主党政権の予算編成が「始めに増税ありき」であることを意味することにもなります。


◆ 3次補正後、速やかに解散すべき

 私には、こうした乱暴で稚拙な国政運営しかできない民主党が、国を建て直せるとはとても思えません。
 野田首相とは同世代であり、これまでの議員個人の発言には共感できるところもあります。しかし総理大臣としての言動は、党内融和や政治的妥協が過ぎ、言っていることとやっていることがあまりに食い違っているのです。
 野田首相は震災復興のため 3 次補正を早急に成立させた後、速やかに解散・総選挙を行うべきです。
 国民の信を得ないまま政権に就いていても強いリーダーシップは発揮出来ないことは明らかです。何よりこのままの予算・経済・外交方針では国がもちません。
 この国の将来に責任を持つのは今を生きる我々です。これを肝に銘じ、一人でも多くの方に想いが届けられるよう精一杯活動してまいります。



 新 藤 義 孝