週刊新藤第225号 新しい中学校の教科書採択せまる~この国の将来のために、良い心の種を~

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私のホームページには自民党がまとめた、中学校の公民・歴史教科書7社の比較調査資料を載せてあります。是非ご覧ください。
埼玉県知事選挙による政治活動制限のため、7月中の週刊新藤はお休みします。


◆ 新教育基本法で初めての教科書採択

  「子どもは国の宝」と言いますが、国家の基本は人であり、良い人材を生み出すための教育は、まさに国づくりの柱です。
 教育の充実のためには、より良い制度、教員の質と量、教育への財政支出の増加など、取り組む課題が多くあります。
 しかし、最も重要なことは子どもたちに教える教育内容です。どんなに教育体制を整えても、内容が間違った方向を向いていては何の意味もありません。子どもたちに示す教科書の選定は、極めて重要な教育の根幹事項となるわけです。
 本年は、平成18年の教育基本法改正を受けてつくられた「新・学習指導要領」に基づき、新しい中学校の教科書が選定される年です。
 我が国の教科書選定は、国の検定制度に合格したものの中から、公立学校では県・市町村の教育委員会が、国立・私立学校では校長が採択する仕組みになっています。
 現在は、本年 3 月に検定合格となった複数の教科書の中から、市・郡単位で定められた採択地区毎に選定作業が進められています。
 一般向けの教科書展示会や、学校長・教員による教科書選定委員会の調査研究を経て、地区毎の教育委員会が開かれ、8 月31日の採択期限までに新教科書が決まるのです。


◆ 「歴史」「公民」教科書採択の心配

 新・教育基本法が示す教育目標には「豊かな情操や道徳心」「公共の精神」「伝統と文化の尊重」「愛国心」などの育成が掲げられ、学習指導要領にも同趣旨が明記されています。
 ところが、歴史や公民という社会科の検定合格教科書の中には、これらの趣旨からかけ離れた「問題ある記述」を含むものがあります。
 私は59年振りであった「教育基本法の改正」に関わった者として、法の求める教育理念・精神が十分に反映されていない教科書の採択がなされることを心配しております。


◆ 「公民」教科書の問題記述

 以下に、私が問題と思われる部分や、その記述を抜粋で紹介します。
○国旗・国歌
東京書籍の教科書では、日の丸・君が代の歴史的経緯や意義について言及されていません。
特に帝国書院は「ほかの国々の国旗国歌を尊重することは現代世界の礼儀となっています。」とするのみで、我が国の国旗・国歌を尊重することには触れられていません。
○自衛隊
「武器を持たないというのが日本国憲法の立場ではなかったのかという意見もあります(東京書籍)」
「海外派遣や装備の拡張が自衛隊の本来の目的を越えているのではないかという意見もあります(教育出版)」など、自衛隊の存在や国際貢献活動は憲法違反とする意見を強調し、東日本大震災での自衛隊の災害救助活動について一切触れない記述となっています。
○領土
教育出版の教科書は、
「竹島については、日本と韓国の間にその領有をめぐって主張に相違があり未解決の問題になっています。また、尖閣諸島については中国もその領有を主張しています」
と書かれており、子どもが韓国や中国の主張にも正当性があると誤解しかねない内容になっています。
○拉致問題
東京書籍の教科書では、
「日本が過去に植民地支配を行い、戦争で大きな被害を与えるなど?耐えがたい苦しみをもたらしたことを忘れてはなりません。日本との関係では拉致問題が残り、北朝鮮との関係は好転していません」と書かれており、拉致問題が北朝鮮との関係修復の障害のように子供が理解する可能性があります。
○外国人参政権
「日本で生まれ生活していることやその歴史的事情を配慮して、人権保障を推進していくことが求められています。(東京書籍)」
「日本に住む外国人には、選挙権や被選挙権などに制限があります。これらについては、違憲ではないかとする訴訟がしばしば起こっています。(教育出版)」など、在日外国人に参政権を与えないことは差別であると子供が理解しかねない書きぶりとなっています。


◆ 「歴史」教科書の問題記述

○南京事件
 学習指導要領では、「軍部の台頭から戦争までの経過と、大戦が人類全体に惨禍を及ぼしたことを理解させる。」となっていますが、日教組の教育方針「日本の軍隊による中国への侵略・加害の視点での記述。」を取り入れた教科書もあります。
 東京書籍では、「女性や子どもなど一般の人々や捕虜をふくむ多数の中国人を殺害しました。」(本文)「この事件は、南京大虐殺として国際的に非難されました。」(側注)
など、事実の裏付けを伴わない記述が並んでいます。
 私は自民党の有志議員と共に「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」を設立し、活動しています。
 13年前の設立時の会長は故・中川昭一さんで、幹事長が安倍晋三さん、私は幹事を務めておりました。


◆ 日本の前途と歴史教育を考える会

 最初に取り組んだのは、誤った報道に基づく「従軍慰安婦」記述の取り消しであり、平成16年度検定による現行の中学校の社会科教科書では、すべての検定教科書から記述がなくなっています。
 今回ご紹介した問題点は、この「議員の会」と、自民党・文部科学部会が作成した調査資料(私のHPでご覧下さい。)から抜粋したものです。
 私たちは、歴史・公民教科書の検定合格 7 社のうち、東京書籍・教育出版をはじめ既存 5 社の教科書には多くの問題があると考えています。
 対して新しく参入した、自由社と育鵬社の教科書は、改正教育基本法に基づき、道徳や公共の精神、国や郷土を愛する心を育む点を考慮したもの、と評価しています。


◆ 法の理念にかなった教科書採択を

 ところが、埼玉県内の現行歴史教科書は100%東京書籍、公民教科書も川口市が教育出版で、その他は全て東京書籍が採択されています。
 まさに横並びの教科書選定と言うしかありません。採択の法律権者は各自治体の首長が任命する教育委員ですが、実際の選定作業は、現場教員が中心の下部機関(各教科ごとの教員による専門委員会、校長などによる教科書選定委員会)が行い、2? 3 種の推薦教科書を教育委員会に報告し、それを承認する形で採択することが慣例のようです。
 私の地元・川口市では 8 月 4 日に教育委員会が開催されます。5 人の教育委員には、下部機関の集約意見を参考としつつ、持てる権限と責任により、自らの判断で教科書選定に当たってほしいと思います。
 今回は新学習指導要領のもとでの初めての教科書採択であり、改正教育基本法にかなった教科書が採択されることが極めて重要です。
 私は地元の市長や自民党市議会議員団に現状を説明し、連携をとりながら関係者の理解を得られるように活動しております。
 同様のことを「議員の会」や自民党組織を通じ全国展開し、より良い教科書採択を働きかけております。
 教育の成果は、いまの子どもたちが成人して社会の主軸になる20年後、30年後に表れます。この国の将来のために、良い心の種がまかれるよう心から願っております。



 新 藤 義 孝