週刊新藤第207号 準天頂衛星「みちびき」の打ち上げ~G空間プロジェクトが目指すもの~

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9月11日、種子島宇宙センターに出張し、準天頂衛星「みちびき」の打ち上げに立ち会ってきました。その時の動画と資料を私のホームページに載せてありますので、ぜひご覧ください。


◆ 「みちびき」の打ち上げに立ち会う

 9 月11日、私は種子島宇宙センターに出張しました。準天頂衛星「みちびき」を搭載したH2Aロケットの打ち上げに立ち会うためです。
 「みちびき」は日本初の測位衛星です。現在米国の衛星から得ているGPS情報を補強することで、位置測定精度を従来の10倍以上に高める事が出来るようになります。
 私は、政府がこの衛星を打ち上げる根拠法となる、自民・公明・民主各党で議員立法した「地理空間情報活用推進基本法(2007年 5 月成立)」の提出者です。法案とプロジェクトの内容は、週刊新藤第130号(07年 5月)をご覧下さい。
 そして、現在までこのプロジェクトを進めてきた自民党の推進部会の事務総長を努めております。


◆ 自民党部会の事務総長として

 今回の打ち上げは、構想段階から10年以上が経過する中で、いよいよ実際に衛星を打ち上げて実験を開始するという、夢の実現に近づくものです。
 私自身は2006年から自民党部会の事務局長に就任し、成立が難航していた法案の成立に汗をかかせていただきました。
 法案成立の 3 ヶ月後に経済産業省・副大臣に就任し、省内に民間企業が参加する「地理空間情報研究会」を作り、この衛星を使った利・活用アイデアやビジネスモデルの検討を行い、報告書をとりまとめ政府に提言しました。
 副大臣離任後は、自民党部会の事務総長として戻り、現在まで各省庁間の予算要求のとりまとめや産業界との窓口役として活動しています。
 この仕事を所管する省庁は、内閣官房・文科省・国交省・経産省など14省庁に及び、民間では経団連を中心にたくさんの企業が参加、学者や科学者の皆さんなどを含め、実に裾野の広い壮大な仕事なのです。
 これまでに投入した予算は約750億円ですが、国家プロジェクトが構想から法案作り、実証実験を行い最終的に実現するまでには、規模に比例して時間と予算がかかる、という当然の事柄もご理解いただけると思います。今、政府では仕分けという名の下で科学技術予算を縮減し、マニフェストの財源探しに躍起となっておりますが、目先にとらわれ我が国の将来の希望やチャンスをつぶしてしまうことのないよう、強く訴えていかなければなりません。
 ちなみに、参院選の自民党マニフェストでは、この地理空間情報プロジェクトが 3 カ所出てきます。このプロジェクトの重要性と可能性の証となるものです。一方で、残念ながらこのプロジェクトはほとんど国民に認知されていません。そもそも「地理空間情報活用推進事業」などという長い名称は、誰も覚えられませんし、イメージがわきません。


◆ 世界初の試み、「G空間プロジェクト」

 私は政府にこのプロジェクトに愛称を付けるよう提案しました。その結果決まったのが「G空間プロジェクト」という言葉です。
 Gは「ジオスペィシャル」=地球空間を表す言葉の頭文字のGです。
 G空間プロジェクトとは、衛星測位と地理情報システムによってもたらされる位置情報を、いつでも・どこでも・誰もが利用できる社会作りを目指すものです。
 こうした取り組みは世界初であり、日本独自のアイデアなのです。
 「みちびき」は電波状況の改善のためだけに宇宙に放たれたのではありません。より正確な衛星測位情報と電子基盤地図を活用し、我々の暮らしをより快適・効率的にする「G空間社会」の実現のために打ち上げられたのです。
 このG空間情報を活用することで、これまでとは違う高い次元の様々なサービスが期待できます。


◆ 海洋資源探査・地震・津波予知

 日本はEEZを含めると世界第 6 位の海洋国土面積を持つ海洋国家であり、海洋資源を有効に活用することは更なる発展には不可欠です。
 沿岸水域やEEZを完全にカバーする地理空間情報を整備し、正確な海底地形やこれまでの資源探査の成果を蓄積したデータベースを構築できれば、海洋資源の探査・開発や地震・津波の検知など、多くの目的に使用できることになります。 


◆ IT農業で課題を克服

 農業の分野でも威力を発揮します。例えば田植機に農作業を記憶させて自動的に田植えを行ったり、農薬や肥料のデータを記録することによって使用量の最適化・効率化を進めることができます。
 後継者不足・高コストなどの問題を抱える日本の農業にとって、G空間社会の到来は救世主になる可能性があるのです。


◆ 暮らしを変えるG空間プロジェクト

 この他に、G空間社会に向けて以下のような実証実験が計画されています。
○航空・鉄道・船舶等の交通・運転ナビゲーション
○屋内外における個人用のナビゲーション(屋内・地下街などGPS受信
 できない場所での情報提供)
○子供やお年寄りの位置確認(防犯・治安対策の向上)
○遭難救助、危機管理(地震・火山噴火など災害の予知、監視、また災
 害時の避難誘導等)
○高精度時刻(電子商取引などを支 える高精度の時刻サービス)


◆ G空間プロジェクトが目指すもの

 G空間社会の実現に向けた最大の課題は衛星 2 ・ 3 号機の打ち上げです。準天頂衛星は 1 機で 8 時間日本上空をカバーできるため、24時間カバーするにはあと 2 機必要です。
  1 機あたり350億円程度の開発費をさらに削減するため、設計仕様の見直しは不可欠です。
 一方、現政権は 2 ・ 3 号機の打ち上げ方針を未だに明確にしておりません。私は自民党の推進部会や超党派の宇宙議連での活動を通じ、政府に対しプロジェクトの着実な推進を強力に働きかけてまいります。
 宇宙利用分野は、世界共通の産業成長分野でもあります。米国の「GPS」に加え、EUは「ガリレオ」、ロシアは「グロナス」、中国は「北斗」という全地球測位システムを相次いで開発整備中なのです。
 この地理空間技術は、国際社会において、ナノテク・バイオと共に将来が期待される三大重要科学技術分野とされています。
 宇宙開発を巡る熾烈な国際競争の中、日本は独自の斬新なアイデアによる「G空間プロジェクト」を早期に実用化するべきです。
 日本の技術で世界に貢献し、人々の暮らしや社会を変える、という夢の実現に向け、しっかり取り組んでまいります。


 新 藤 義 孝