第186号 大丈夫か鳩山政権!~ふくれ上がる予算、巨額の国債発行~

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「政治は街から」をモットーに国政の現状、課題、問題点を訴えさせていただいております。お招きがあれば懇談会も実施します。ホームページには動画がたくさんありますので、ぜひご覧になって下さい。


◆ ようやく始まる国会

 政府は臨時国会を26日に招集し、11月30日までの36日間の会期でようやく国会が始まります。36日間の会期といいますが、土・日休日が入り、国会の手続きに則って本会議と委員会を開催すると、法案の実質審議は10日間くらいしかありません。我々は年末まで国会を開き、懸案の議論を行おうと激しく主張しましたが、民主党は全く聞く耳を持ちませんでした。


◆ 民主は代表質問なし

 やっと行われる首相の所信表明に対する各党の代表質問ですが、衆議院では民主党の小沢幹事長は行わないことになり、与党の質問は代表して社民党が行うことになりました。(社民党の重野幹事長は「自分たちは知らない。民主の分まではやらない。」といっていますが・・・)
 新政権のスタートに、与党が政府の方針を質し、国民に向けて説明する機会を放棄することは、立法府の自殺行為だと、私はあきれています。
 これまでの小沢幹事長の党首討論拒否や国会議論軽視など、密室主義・唯我独尊の悪癖が早速現れたか、と先が思いやられます。


◆ ふくれ上がる政府予算

 新年度予算の概算要求が10月15日に締め切られました。なんと過去最大の総額95兆381億円!!
 あれほど批判していた前麻生政権の09当初予算の88兆円をはるかに超える額です。これまでの自民党政府予算を官僚や族議員のお手盛りと厳しく批判し、政権交代により生活者重視の効率的予算をつくるといった選挙前の意気込みはどこに行ってしまったのでしょうか。
 厚労省は子ども手当に 2 兆 2 千億円、年金記録問題対策費に1800億円など09当初予算より 3 兆 7 千億円の増額要求。
 文科省は高校授業料の実質無償化に4500億円。
 国交省は九州・北海道で行う高速道路の無料化実験に6000億円。
 農水省はコメなど農業の戸別所得補償に3500億円。
 一方、防衛費は 8 年連続減、ODAも200億円の減、そして、公共事業費は全体で14%減と大幅な削減となっています。道路整備関連は09当初予算に比べ12%減となり、開通時期が近いものは優先するものの、原則として新規事業は認めないそうです。事業箇所を 2 割減らす方針とのことであり、区画整理など、まちづくり事業は大きく後退することになります。


◆ ムダは省いたのか

 新年度予算の概算要求がこんなにふくらんでしまったのは、民主党の選挙公約を一部実施するため多くの省庁が前年度よりも増額要求となったからです。全てを実施するには、さらに何兆円もかかります。
 民主党がこれまで主張してきた従来の自民党政府予算のムダや不必要なものを省いた上で自分たちが主張する予算を入れ込むならば、こんなことにはなりません。各省の新大臣や副大臣など政務チームは、これまで以上のお手盛り要求をしてしまっていると云うことなのです。
 今後、政府は行政刷新会議で予算のムダ遣いを検証するといっておりますが、これはおかしなことです。
 民主党は、自民党政権によるムダを省くといってきたのであり、まず従来予算のムダと認識していたものを削ってから、自分達の事業を加えるべきなのです。自分で出した要求のムダを自分たちで探すなどと云うことは自作自演であり、私にはとても奇妙に映りますが、皆さまはいかがでしょうか。


◆ 国債発行が50兆円超に!?

 藤井財務相は10月20日の閣議後記者会見で、09年度の税収の大幅な落ち込みにより、今年度新規国債の発行額が50兆円台にふくらむことを認めました。
 しかし、これまでの報道をチェックしてみると、藤井財務相は10月 9 日に、「09年度の国債追加発行は行わない。10年度の国債発行も44兆円以下に抑える。そうしなければ財政規律や国債市場の信任に応えることにはならない。」と言い切っています。
 民主党は衆院選前、「予算の組み替えを行えば赤字国債を増発しなくてもマニフェストで掲げた公約は実行できる」と繰り返し訴え、鳩山首相もこれまで何度も強調してきています。
 ところが鳩山首相は10月14日には一転して、税収減を穴埋めするためには国債増発やむなし、とこれまでの主張をあっさりとくつがえしたのです。
 10年度の税収は景気低迷の影響で25年ぶりに40兆円を割り込むと云われており、そうした場合には新規国債の発行額が税収を上回ることになってしまいます。
 すでに危機的な状況にある日本の財政に対し、国債発行額が大幅に増えれば長期金利が跳ね上がり、経済に大打撃を与えることになるのは必至です。


◆ 景気の二番底を回避せよ

 日本経済は底を打ったといわれておりますが、再び景気の二番底の可能性が懸念されています。
 それも民主党政権が通貨安定策を否定して円高が進み、銀行からの借金返済を猶予する制度を打ち出したことで株安を引き起こし、経済の悪化を誘引してしまったのです。
 さらに選挙公約の実現に執着したお手盛り予算を要求し、巨額の国債発行を容認し、財政再建計画の目標策定を見送ってしまいました。
 そういう状態でありながら、新年度予算の財源捻出のため成立済みの補正予算を 3 兆円近く執行停止させました。
 結果、地方自治体では受け入れた補正予算の内どこが執行停止になるのか各省からの連絡が来ないため、予算が執行できず地域経済が止まってしまっているのです。
 政府の経済運営はエアポケットに入った状態といえます。
 経済以外も、ダムの見直し、CO2の削減目標、郵政民営化の見直しも国会での議論は無く、政府が勝手に決定しています。インフルエンザワクチンの接種回数もわずか 3 日で 1 回から 2 回に変更する始末です。
 鳩山政権の危うさを注視しながら、景気の二番底回避に向けた実効性ある景気対策を早急に実施するよう働きかけてまいります。


 新 藤 義 孝