第169号 「KOHARU(こはる)」の挑戦 ~幼児2人乗り電動アシスト自転車の開発~



新しいものづくりのブランドが、わが街の若手企業家たちによって
生まれようとしています。


 最近、川口発の新しいものづくりの挑戦が、TVや新聞に度々取り上げられているのを皆様はご存じでしょうか?今号では幼児
2 人乗り電動アシスト自転車「KOHARU」についてご紹介させていただきます。開発にあたったメンバーの皆さんにお話を伺ってきました。


◆ 川口発ものづくりブランドを

 この開発を進めているのは、川口市内の中小製造業者を中心とした異業種連携グループ”川口RINC”。鋳物や機械など、ものづくり産業が集積し高度な技
術を誇る川口ですが、自動車や機械メーカーの下請け企業も多く、不況の直撃を受け地域経済の地盤沈下に苦しんでいます。不況下でも生き残るためにも、「今
こそ技術力をアピールし、独自ブランドを持つべきだ」との気運が盛り上がり、川口発ものづくりブランドの開発が始まりました。川口の中小企業の力で何が作
れるのか、言葉だけではなく、実際に形にしてみようと、2 年ほど前から様々な事業にトライしてきたとのことです。



◆ 幼児2人乗りの解禁?

 今回着目したのは、自転車の幼児2
人乗り禁止問題。昨春、警察庁が全面禁止の方針を打ち出したのを、子育て中の母親からの反発を受け、実施を見送った経緯があります。その後、警察庁は昨年
夏に安全基準を満たす自転車は認めるとの方針を打ち出し、幼児 2
人乗り自転車の解禁が検討されています。新年度には所管する都道府県の公安委員会規則の改正が行われる可能性もあり、このため安全性に配慮した幼児 2
人乗り自転車の開発が加速し、市場の拡大が見込まれているのです。この動きを受け、川口RINCでは、幼児 2
人を乗せても楽に移動ができる電動アシスト自転車の開発に着手しました。そのコンセプトは、「生まれてからずっと乗り続けられる乗り物」。子どもの時は、
チャイルドシートに座って、ママの運転で幼稚園へ。親になったら、子どもを乗せてお買い物。年をとったら、安全に気楽に利用できるような、そんな乗り物で
す。そして、環境にもやさしいエコな乗り物として、最終的には動力源として太陽電池の搭載も検討したい、とのことです。



◆ 「KOHARU」完成

 今回皆様にご紹介させていただくのが、幼児 2
人乗り電動アシスト自転車「KOHARU(こはる)」。女性らしい丸みを帯びたデザインと、バイオレットパールのおしゃれな外観は、お母さん方にも歓迎さ
れそうです。KOHARUは、前方座席に子ども 2
人が乗れるシートが付いています。幼児の動きに目が届く、親の気持ちになった安心設計です。また、屋根付きなので雨の日の走行も気にならず、前方の大きな
バンパーにより転倒時の安全性にも配慮しました。次の展開としては、さらなる小型軽量化をはかり「折りたたみ機能」も持たせたいそうです。



◆ 町工場9社が結集

 今回のプロジェクトに参加したのは、セラミック精密加工、繊維、鋳物、店舗改修、木型、ゴム、塗料販売、塗装、メッキなど 9
社の若手経営者たち。昨年夏頃より異業種の企業が集まって、今まで経験した事のない電動アシスト自転車の製造に着手しました。皆が様々な意見を出し合い、
試行錯誤の末、昨年10月末にようやく完成。11月に東京ビックサイトで開催された、「産業交流展2008」の出展に間に合わせることができました。「自
画自賛となりますが、注目度は会場でナンバー 1 だったのでは」と、メンバーたちは話しています。



◆ 経産省事業にも参加

 この事業は、経済産業省の「産業クラスター計画」にも参加しています。根拠法は特定産業集積法といい、法律の成立と川口地域を指定させるために、当時私
も大いに汗をかかせていただいた縁ある事業なのです。昨年12月には、「クラスタージャパン2008」にも出展しました。この展示会には、大使館や海外企
業の担当者も訪れ、KOHARUは欧州系のメーカーからも注目を浴び、問い合わせや質問が度々あったとのことです。将来的には、海外市場の開拓へと夢は膨
らみます。

川口RINC(リンク)
㈲アステック
㈱シバサキマテリアル
㈱ディスプレイ・イトー
㈱東都ラバーインダストリー
㈲トコーモデル
㈱富田商店
不二工業㈱
友栄塗装㈱
和光技研㈱
デザイナー 下田剛史

問い合わせ:川口商工会議所
電話 048-228-2220

美しいシルエットは技術の証


◆ ものづくりの夢

 KOHARUの商品化のためには解決すべき課題がまだたくさん残っています。二人乗り部分の安全性・車体強度の向上、操舵性など構造上の課題の克服に加
え、今後の規則改正にあわせた設計も求められます。大手メーカーとの開発競争に負けないように、私も経産副大臣の経験を活かし、開発費用の公的助成、意匠
登録や法的事項の解決など、このプロジェクトの成功に向けて全面的に応援するつもりです。今回のKOHARUプロジェクトは、異業種連携が成果を上げた
ケースです。中小企業の連携は、自らの能力を何倍にもする力があることを証明してくれました。何よりKOHARUが町中を走っていることを想像するだけ
で、何かワクワクしてきませんか?我が街の技術力をアピールすることがビジネスチャンスに結びつけられるかどうか、川口発の新しいものづくりブランドを産
むという夢の実現に向けて、皆様の応援をよろしくお願いします。

新 藤 義 孝