第165号 日本の元気のために ~経済外交編~



07年10月 北京にて、ASEM(エイセム・アジア欧州会合の略)
第一回中小企業大臣会合が開かれ、私は日本の担当大臣として参加。
川口・鳩ヶ谷の事例を引きつつ、日本の中小企業の能力を世界に紹介しました。


 政治が混乱しています。麻生内閣の支持率急落を受け、自民党内には様々な議員のグループが出来、民主党はチャンス到来とばかりに、さらに政局優先の動き
を強めています。
 私は塩崎さんや茂木さん達と一緒の「速やかな政策実現を求める有志議員の会」の設立メンバーですが、会の目的は、必要と思われる政策を率直に内閣と党に
提案し実行させることであり、報道のような、倒閣運動でも新党準備でもありません。
 世界的な景気後退の大きな波の中で、企業の倒産が増え、失業者が続出しているときに、最優先で行うべきは経済の強化安定と不況対策であり、今は与党も野
党もなく国が一つになって行動する時です。いったい政治は何をやっているのか、とお嘆きの方もおられると思います。これからどんな事態になるのか私も憂慮
しておりますが、難局になればなるほど冷静かつ客観的に良識ある行動をとらなければならないと決心しています。


◆ 日本の経済成長戦略

 政府は景気対策として緊急不況融資を実施していますが、中小企業経営者の方からは、借りても返すあてが無いので融資を受ける気にならない、何より仕事を
増やして欲しい、売り上げを伸ばすことが一番だ。という声を良く聞きます。私もその通りだと思います。今号では日本の経済を成長させるための戦略として、
私が取り組んでいる施策の一端をご報告させていただきます。
 キーワードは、「中小企業」「環境技術」「地域間経済連携」です。



◆ 中小企業大臣会合

 昨年の10月、北京においてASEM(エイセム・アジア欧州会合の略)第 1
回中小企業大臣会合が開催され、私は日本の担当大臣として出席いたしました。
(経済産業副大臣は国際的には閣外担当大臣と位置づけされます。)
 アジア・欧州間の、31カ国の担当閣僚が参加した会議で、私は地元川口・鳩ヶ谷の事例等を引きつつ、日本の中小企業の特徴(高い技術、地域に根付いた存
在、様々な企業群が一地域に集積等)を説明すると共に、中小企業振興が地域経済の活性化や雇用の増加、ひいては途上国の貧困削減にもつながるため、経済発
展段階の異なるアジアと欧州が、両地域のノウハウを共有しながら、域内中小企業振興に向け協力することが重要である旨をアピールしてきました。
 私もお手伝いしていますが、中国などに加えベトナムやインドへ高い技術を持った日本の中小企業の進出を図ることは、我が国の経済成長戦略の大きな柱とな
ります。

ラオス ナム商業・工業大臣と ブルガリア ヤネヴァ経済・
エネルギー副大臣と
ベトナム フック計画投資大臣と 中国メディアからの取材を
受ける新藤副大臣
中国 欧国家発展改革委員会副主任と 会議場の様子



◆ エネルギーフォーラム

 本年 2
月、インドで開催された日・印エネルギーフォーラムに日本政府代表として参加し、環境に関する技術協力について協議してきました。インド側の主催者はノー
ベル平和賞をゴア米・元副大統領と共同受賞したIPCCのパチャウリ博士です。博士より「人口が多く成長率の高いインドにとっては、従来のアプローチを超
えたエネルギー部門の変革や省エネへの取組みが必要である。このフォーラムを通じ、日本との具体的なプロジェクトの推進を期待したい」旨の表明がありまし
た。
 GDP当たりのCO2排出量は、日本を 1
とした場合、ロシアが18倍、インドが7.4倍、アメリカでも2.2倍です。現在でも圧倒的に世界をリードしている日本の高い環境技術とノウハウを、イン
ドに対して提供し協力していく旨を、私はこのフォーラムにおいて約束してきました。
 日・印間で環境ビジネスが成立すれば、設備・機械を造る日本の製造業に発注が増えることになります。その経済効果は、直接海外との取引を行う大企業だけ
ではなく、それを支えている高い技術力を持った中小企業にも及びます。世界的な環境ビジネスの広がりは、身近な中小企業に新たな活躍の場を提供することに
もつながっていくのです。

ノーベル平和賞受賞のパチャウリ博士と会談中ニューデリーにて
ミンダリカ社工場を視察 講演を行う新藤副大臣


◆ APEC貿易大臣会合

 本年の 5 月、ペルーで開催されたAPEC(エイペック・アジア太平洋経済協力の略)貿易大臣会合に日本の担当大臣として出席しました。
 日、北米、南米、東南アジア、豪、中、韓など21カ国の国が参加した会議で日本の提案を行うと共に、WTOのラミー事務局長や、アメリカUSTR(通商
代表部)のシュワブ代表らと有意義な会談を持つことができました。
 私の目的は、自由貿易体制の構築と地域間経済連携の強化です。我が国と各国とのEPA(経済連携協定)は、すでに 8
カ国並びにASEANと締結し、さらに 5
カ国と交渉中です。EPAとは、日本と相手国間との関税撤廃をはじめ、投資のルールや人の移動などの取り決めを行う貿易上の協定です。
 例えばペルーで私が二国間会談を行ったメキシコとの間では、05年 4
月にEPAを締結し、両国間の関税が順次撤廃されています。メキシコはNAFTA(ナフタ・北米自由貿易協定)によりアメリカへ無関税で輸出ができること
から、日本は、自動車や鉄板などアメリカ向けの製品をメキシコ経由で無関税で輸出する事が出来るのです。EPA発効以前と比べ、日本の対メキシコ投資は
242%も増加しました。直接メキシコへ進出した大企業だけでなく、部品などを供給する日本国内の中小企業にも経済効果が波及していることは、言うまでも
ありません。

シュワブ・米国通商代表と意見交換 貿易大臣会合に招待されたラミー
WTO事務局長と意見交換
クリーン・豪州貿易大臣とは本年1月の
インド以来2回目の意見交換
会談を終えアラオス大臣(写真中央)らと
メキシコ ソホ経済大臣とEPAについて
会談 ペルー・アレキパにて
レイセギ・メキシコ経済副大臣と会談
在メキシコ日系企業の皆さんと意見交換 メキシコ元通商産業大臣、
メキシコ財界人と意見交換


◆ 日本と世界をクロスさせる

 日本は、世界が求めている技術・ノウハウを提供し、世界からは、日本へ資源・市場を提供してもらう。日本と世界が互いの足りない点をクロスさせる経済外
交の確立は、これからの”日本の元気”を創ります。それが”中小企業の元気”となり、”くらしの元気”につながっていきます。私はこれからも全力でその実
現に取り組んで参ります。

新 藤 義 孝