第139号 圧力なしでは解決しない拉致問題



◆ 拉致は「人権及び国家主権の侵害」

 現在、日本政府が認定した北朝鮮による拉致被害者は17人にのぼり、30年が経過しているにもかかわらず、帰国した方は5名に過ぎず、残りの方は救出さ
れないまま今日に至っています。拉致された人々や家族の気持ちはまさに身の引き裂かれる想いに違いありません。北朝鮮は残りの12名については「8名死
亡、4名は入境せず」と説明し、拉致問題は解決済みとして何ら誠意のある対応を示していません。
 国民が理由もなく他国の手によって拉致されることは犯罪行為や人権侵害という域を超えて国家主権の侵害と認識すべき問題です。これを見逃すようであれば、わが国は国家としての基本を失うことになります。
 北朝鮮は拉致という国家ぐるみのテロ行為を行い、またわが国を射程に置いたミサイルを配備し、核施設を開発しています。さらには、北朝鮮工作船の日本近
海における不審な活動、麻薬や偽札の密輸、朝鮮総連を介した反日活動など枚挙に暇のない疑惑が存在し、わが国に重大な脅威を与えています。
 私たち国会議員は立法府に籍を置く者として、国家の尊厳および国民の生命・身体・財産を守るという義務を負っています。私たちは何としても拉致された日本人を救出するために、取り得るあらゆる行動をとり、粘り強く解決に向け活動することを誓っています。


◆ 川口には被害者が7人

 
今月18日、私は、川口市出身の政府認定拉致被害者である田口八重子さんや特定失踪者のご家族を、大野官房副長官、中山総理補佐官とお引き合わせし、拉致
問題の早期解決を求める要望書を提出するお手伝いをさせていただきました。この川口の街には、田口さんの他にも拉致の可能性を否定できない6人の特定失踪
者がいます。
 田口さんが拉致されて29年。ご家族は「拉致問題は2002年に当時の小泉総理が訪朝し5人の拉致被害者が帰国するなどの展開を見せたが、その後何の進
展もない。私たちもだいぶ歳をとってきてしまった。北朝鮮との交渉は政府のすることであり、私たちは問題を風化させないよう声を大きく上げていくしかな
い」とやるせない心情を訴えていました。
 今回の要望には、岡村幸四郎・川口市長や、「拉致問題を考える川口の会」の代表を務める前原博孝・川口市議会議員らも同行しました。同会では毎月第1日曜日に川口駅前で拉致問題解決に向けた署名活動を行っております。
 私もこれまでに街頭やホームページ上での署名活動など、お手伝いをさせていただいております。去る7月には川口の会の皆さんとともに1万2千件分の署名を内閣官房拉致問題対策本部に提出いたしました。


◆ わが国政府の取り組み

 現在、わが国は北朝鮮に対し、国連が決めた贅沢品の輸入禁止措置に加え、全品目の輸入禁止や北朝鮮籍船舶の入港全面禁止など独自の厳しい措置をとってい
ます。かつて北朝鮮から日本へあさりや松茸など約200億円の輸入がありましたが、今はゼロとなっています。中国産と偽って北朝鮮産のあさりを輸入しよう
とした日本の水産企業に対し首謀者に懲役2年、罰金1,500万円という重い刑罰を科した事例もあります。
 この日本独自の経済制裁は10月13日までの期限でしたが、9日の閣議で半年間の延長を決定しました。20日以内に国会承認を受ける必要があり、その所管は私が副大臣を務める経済産業省です。
 当面の懸案事項は、米朝の交渉が進み米国の北朝鮮に対するテロ支援国家の指定が解除され、北朝鮮への国際圧力が弱まってしまうことです。わが国は、朝鮮
半島の安定は、拉致・ミサイル・核の3点を同時に解決することで得られるというスタンスを絶対に崩してはなりません。また、この3点の前進が見られなけれ
ば、米や油などの支援を再開させてはなりません。
 要望活動を行ったのと同日18日午前に、私も所属する超党派の国会議員による「北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟」(=
拉致議連 会長:平沼赳夫・衆議院議員)の総会が開かれました。同議連では、年内に議員団を米国に派遣することを正式に決定しました。これは、米国で北朝
鮮へのテロ支援国家指定を解除する動きがある中で、逆に制裁解除を行う際には、日本政府に認定されている拉致被害者全員が解放されることなどを条件とする
法案について、議会に提出した下院議員らと面談の上、この法の成立に向け働きかけを行おうとするものです。


◆ 解決に向けて粘り強い努力を

 福田総理は拉致問題を自らの手で解決するという強い意向を示しています。独裁国家相手の交渉は結局最高権力者の意志ひとつということになり、ブレない非
常にタフな交渉が必要です。最初に被害者が帰国して以来目に見えた進展がないため、中には圧力を弱めて北朝鮮を対話のテーブルに呼び戻せという意見を聞く
ことがありますが、それこそ相手の思うつぼになってしまいます。
 政府が引き続き粘り強い交渉を進めていくためには、私たち国民が拉致問題に関心を持ち続け、世論を盛り上げていくことが最も効果的です。拉致問題は、人
ごとでも遠い街で起こったことでもありません。「めぐみさんは生きている」をスローガンに活動を続ける「家族会」を応援するとともに「拉致問題を考える川
口の会」の活動に皆様の暖かいご支援を賜りますようお願いします。

新 藤 義 孝