第106号 日本のエネルギー戦略を考える


今年で2年目を迎えたクールビズ。エネルギー問題は一人一人の心がけも大切です。


◆ エコ大国・日本に向けて

 産業活動はもちろんのこと、私たちの暮らしは、石油・電気・ガスといったエネルギーなしには1日たりとも過ごすことができません。エネルギーは国家の生命線であり、国の政策の根幹を成すものです。
 我が国は過去に2度、石油ショックに見舞われ、当時は大変苦労したわけですが、その経験を踏まえた上で省エネルギーに努めるとともに、石油から天然ガスへ、また電気については原子力発電を推進するなど、石油代替エネルギーの利用を拡大してきました。
 その結果、例えば省エネルギーについては、我が国はGDP当たりのエネルギー消費効率において、欧米の約2倍、中国の約10倍、世界平均の約3倍の効率
をあげており、世界最高水準の省エネ国家となっています。また、ひとつのエネルギー源に過度に頼ることのないように、石油ショック時には約8割だった石油
依存度を現在では5割を切る水準まで下げています。特に電気に関しては、今や石油は10%程度で、原子力が約30%、天然ガスと石炭がそれぞれ約25%と
多様化が進んでいます。


◆ 日本の深刻なエネルギー事情

 しかし、わが国は依然としてエネルギーのほとんどを外国からの輸入に頼っています。エネルギー自給率(原子力を含まない)を諸外国と比較すると、イギリス104%、アメリカ64%、ドイツ27%、イタリア15%に対して、日本はわずか4%と非常に低い水準にあります。
 
皆様もよくご承知のとおり、ここ数年で、石油の国際価格が2~3倍程度上昇しています。また、この石油価格の上昇を受け、天然ガスその他のエネルギー価格
も上昇してきています。ガソリンや軽油価格等の上昇で、生活や経済活動の一部に影響が生じていますが、しかし、過去の石油ショック時のような状況にはなっ
ていません。電気料金などは、むしろ4月から値下げが行われており、エネルギー問題が深刻化しつつあることにお気づきではない方もいるかもしれません。
 しかし、世界的に見ると、7月にロシアのサンクトペテルブルグで開催されるG8首脳会議ではエネルギー問題が主要議題のひとつに取り上げられるなど、いわば「忍び寄るエネルギー危機」にいかに対処していくかということは、国際的な最重要課題となっています。


◆ 将来にわたる総合エネルギー戦略を

 私たち自民党では、国の生命線であるエネルギーを将来にわたり確保していくため、5月下旬に党としての総合エネルギー戦略を取りまとめました。私も検討会の幹事として、議論に加わって参りました。
 まず、家庭部門、業務部門及び運輸部門のエネルギー消費は、石油ショック前の2倍以上の水準となっており、産業部門も含め、省エネルギー対策を一層充実・強化させる必要があります。具体的には、省エネルギーに関する技術開発を推進するとともに

トップランナー方式:
 自動車の燃費基準や電気機器(家電・OA機器等)の省エネルギー基準を、各々の機器において、エネルギー消費効率が現在商品化されている製品のうち最も
優れている機器(トップランナー)の性能以上にするという考え方です。1999年4月に施行された「改正省エネ法」において導入されました。

、トップランナー方式を拡大・強化する等によって社会に普及させていくことが重要です。
 また、ガソリンや軽油など、ほぼ100%石油に依存する運輸部門に関しては、燃料の次世代化が不可欠です。ガソリンにさとうきび等から製造したエタノー
ルを混合したり、天然ガスから軽油と同等の性状をもつGTLを製造することなどによって、石油依存からの脱却を進めていきます。さらに、次世代自動車と呼
ばれる電気自動車・燃料電池自動車等の開発・普及にも力を尽くしていかなければなりません。


◆ 環境問題への対応も

 さらに、エネルギーの使用による二酸化炭素の排出をできるだけ少なくするために、太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギーの開発・普及が重要です。
また、原子力発電は運転中に二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギー源であり、安全の確保を大前提に、核燃料サイクルを含め着実に推進していくことが
必要です。
 一方、石油、天然ガス等外国に依存する化石燃料については、安価で安定的な確保をしなければなりません。このため、産油国・産ガス国等との関係強化を戦略的に取り組むとともに、ODAの活用も考える必要があります。
 こうした取り組みは、政治、行政、経済界、そして国民が一体となって取り組んでいくことが不可欠です。党の提案を受けて、政府はこの度、「新・国家エネルギー戦略」を取りまとめました。また、日本経団連や経済同友会もエネルギーに関する提言を取りまとめています。


◆ クールビズを推進しよう

 私たち一人一人ができる取り組みとして私が皆様に強くお薦めしたいのが、昨年から始まったクールビズです。上着を脱ぎネクタイをはずすと、体感温度はお
よそ2℃下がると言われています。省エネルギーや環境問題のみならず、以前この「週刊新藤」でご提案したように、服装を自然に無理なく場面や環境に合わせ
ていくセンスアップの一環として、このクールビズ運動を活用してみてはどうでしょうか。私も早速実践しています。
 是非とも皆様一人一人に、ライフスタイルを見つめ直す意味でも、エネルギー問題について今一度お考えいただけたらと存じます。

新 藤 義 孝