第99号 これからの街づくりを考える



◆ 人口減少時代の街づくりとは

 昨年12月、日本の人口が国勢調査開始以来初めて減少に転じたと報じられました。総人口のピークは2004年12月の1億2,783万人で、これが2025年には約1億2,000万人、2050年には約1億人となると予測されています。
 少子化に伴って高齢者の比率は増加し続け、2025年には総人口の4人に1人が、2050年には3人に1人が65歳以上の高齢者になると予測されています。人口減少・高齢化社会を迎えて、これからの街づくりはどうあるべきでしょうか。


◆ 身近でコンパクトな街づくり

 都市生活を支える公共施設や大規模な集客施設が無秩序に薄く拡散して立地されると、高齢者を始めとする自動車を利用しない人々が都市機能へアクセスしづ
らくなるなど様々な問題が生まれます。これからの街づくりは、こうした都市機能を中心市街地に集約し、効率的で効果的なインフラ整備を推し進めていくこと
が必要です。地域住民が手軽に買い物に行けるような、住みやすく、コンパクトでにぎわいあふれる街づくりが求められているのです。


◆ 高度成長期に求められたもの

 わが国の戦後の国土計画の皮切りは、昭和37年に策定された第一次全国総合開発計画でした。この計画では、東京などの既成の大集積地以外の開発拠点を全
国に配置し、それらを交通施設によって連携させたり、工場を分散させたりすることにより、地域間の均衡ある発展を図ることを目標としていました。
 当時は池田内閣の所得倍増計画のもと、日本全体が高度経済成長への移行期にあり、より豊かで便利な生活を実現するという国民共通の目標がありました。
 全国総合開発計画はその後、現行の「21世紀の国土のグランドデザイン」まで4回の改定がなされ、利便性の向上という意味ではもはや比較しようもない程
の進歩が見られます。映画も今はショッピングモールに併設されたシネマコンプレックスで一度に何本も観ることができますし、ITの普及によって日用品の購
買程度ならば自宅にいながら何の不便もなくできます。


◆ 地域コミュニティの再生に向けて

 しかし、利便性と引き替えに私たちが失いかけているものも多くあります。それは環境問題や防犯・治安問題であり、地域の独自性の喪失やコミュニティの弱体化なども指摘されています。
 特に地域コミュニティは、郊外への大規模店の出店などによって、魚屋さんや酒屋さんなど昔ながらの街中の商店街の活気が失われるにつれ、ますます弱体化
が進んでいると思います。地域コミュニティを再生するとともにそれを守っていくことが、地域の中でお互いが協力して暮らしていくために重要な課題となりま
す。
 また、平成10年に中心市街地活性化法が制定された際、地域住民や商店街などの協力を得ながら街づくりの課題に取り組んでいく「タウンマネジメント構想
(TMO構想)」というのが脚光を浴びましたが、結果的には必ずしも効果が上がりませんでした。いくつかの反省点がありますが、TMOがあまりにも商業に
特化した構想であったことも原因としてあげられます。
 もっと一人一人の生活に根ざした総合的な街づくりの計画と、それを推進する母体が必要とされているのです。地元自治体の総合力を活用しながら、産業界、
建築主、企業を巻き込んだ街づくりの推進機関が必要です。そして取りまとめ役として、地元の建築家などによる街づくりプランナーを置いてみてはどうかと考
えています。こうしたプランナーが、権限をもって街づくりをコントロールすることによって、街のにぎわいと魅力度が上がるのだと思います。


◆ 「まちづくり三法」の改正へ

 これに関連して、今国会に「中心市街地活性化法」「都市計画法」の改正案が内閣から提出されており、私は3月16日の衆議院本会議で、自由民主党を代表して質問をする機会を得ました。その際に、これからの街づくりには「品格」が必要だということを述べました。
 街の品格とはそこに住む人が自ずと愛着を持ち、住んでいることを誇りに感じられる、そんな魅力のことだと思います。そうした魅力ある街をつくるには、住人が自発的に考えて、自ら実現していけるような仕組みを整える必要があります。
 私は日頃仕事で国内だけでなく、海外の街並みも見て回ることが多いのですが、その際に感銘を受けるのは、決して華美な装飾や大規模なビルによって構成された街ではなく、そこに暮らす人々の歴史や自らの街をつくっていこうという情熱が伝わってくるような街です。
 今回の法改正にあたり、そうした街づくりが進むためのものになって欲しいと考えて質問をしました。幸い経済産業大臣からも国土交通大臣からもご賛同をいただくことができ、思いを強くしたところです。
 これからも品格ある国土づくり・街づくりに取り組んで行きたいと考えています。

新 藤 義 孝