第73号 「議論する自民党」-より開かれた政策決定のために



◆ 与党議員の責任の重み

 自民党296議席。公明党31議席。衆議院全480議席中327議席を獲得した自民・公明連立与党は、たとえ参議院で否決された法案であっても衆議院において3分の2以上の多数で再可決することが可能な「力」を手に入れました。
 これは国民の皆様の信任を得られた結果であり大変ありがたいことと受け止めておりますが、同時に野党勢力の退潮は、国会における与野党の伯仲した議論の
減少にもつながってしまいます。私たち与党議員は、数の力に頼った横暴につながりかねない強引な政権運営は厳に慎まなければなりません。
 こうした状況下では、法案成立過程に重要な役割を果たしている自民党の党内議論の重みは一層増大していきます。自民党議員は、自らに課せられた責任の重大さを自覚し、さらに党内での議論を活性化させるよう努めていく必要があります。


◆ 政党政治と党議拘束のあり方

 国会に提出される法案は、政権与党である自民党内であらかじめ検討がなされます。
 各省庁から上げられてきた政策は、総務部会、経済産業部会、外交部会など各省庁に対応した12の「部会」と呼ばれる会議で議論がなされます。そして、政調審議会、さらに法案承認の最高意思決定機関である自民党総務会に諮られ、党議決定となります。
 そうしたプロセスを経て国会へ提出される法案には、特別な場合を除き党議拘束がかかります。その決定には全会一致が慣例となっていますが、郵政民営化法
案の修正案を審議した6月28日の総務会では、反対派の激しい抵抗より初めて慣例を破って挙手による多数決に踏み切り、反対派から「全会一致の前提がない
以上、党議拘束は無効だ」と反発を生じたことは記憶に新しいところです。
 「党議拘束」とは、提出された法案に対して賛成か反対かを党としてあらかじめ決定し、所属する議員の投票行動を拘束することです。政党政治の根幹であり、党全体として議論をして結論を出したという証(あかし)でもあります。
 我が国の国会では法案が提出された時点で党議拘束がかかります。従って皆さんがTVの国会中継でご覧になる委員会審議の場では、各党議員の賛成・反対は
既に決まっており、法案の中身というより、如何に法案に賛成か反対かという自分達の立場や意見を表明している場が委員会なのです。
国会審議の現状は、厳しい党議拘束の下、与党が野党の抵抗を排しながら如何に採決にこぎつけるかという、スケジュール闘争の場になりがちです。
 この度の巨大与党の出現はさらにこの状態に拍車をかけることにもなりかねません。私はこうした現状を打開するための工夫として、委員会審議では党議拘束を外し、与野党を問わず国会議員の自由な意見や提案のもとで法案審議や修正を行えるようにしては、と考えています。
 党議拘束は委員会採決を経て本会議での最終採決時点にかけるものとし、それに先立つ委員会審議ではより議論を深めるために議員活動の自由度を上げてはどうかと思っているのです。

 私は、自民党内にあって「派閥政治の打破」を始め、自民党のシステムを改革することを一貫して心がけてまいりました。 その核心の狙いは、旧来からのしがらみや族議員に代表される利権構造を取り除き、広く国民の声を取り入れた政治を実現することです。
 来月11月15日には結党50年を迎える自民党。良き伝統を受け継ぎながら、新しい時代を切り拓いていく為に党内議論をさらに深め、より開かれた政策立案の機関とするよう微力ながら力を尽くして参ります。

新 藤 義 孝