第74号 マスコミ報道のあり方に想う-ある番組の取材を通じて


 
26歳の最年少議員、郵政民営化特別委員会で質問に立った女性議員など、自民党の新人議員がマスコミで話題になっています。応援、批判、様々なご意見が出
ているようですが、私はこのしがらみに縛られることのない新世代の議員たちに大いに期待しています。その自由な個性を伸ばして、巨大政党となった自民党に
おいてさらに党内論議を深める力になってくれるのでは、と思っています。また、若い人たちが政治に関心を持つようになる架け橋となることを願っています。
 さて、この度の総選挙戦は「劇場型」などと呼ばれ、「刺客」「くノ一」などといった刺激的な言葉も飛び交い、かつてない程のマスコミの注目を浴びまし
た。良きにつけ悪しきにつけ、マスコミが政治に及ぼす影響は非常に大きいものがあります。今回は、私が今まで政治家として活動してきた中で、マスコミの報
道や取材のあり方について感じたことを少しお話させていただきたいと思います。

 
今までに私も何度もテレビ出演や、新聞雑誌等の取材を受けてきました。しかし大抵において、制作者サイドはその意図に沿って取材内容を取捨選択して報道し
ます。私の経験では、取材された側の意が充分に尽くされた報道は希なのです。私はそこに、取材する側とされる側の「信義」、報道する側とそれを受ける側の
「信頼」の問題を感じないではいられません。

 先日、とあるテレビ局から私の国会事務所に取材申し込みの電話がありました。「数日後に放映したいので、取材に応じられる日を連絡下さい」ということでした。
 前号でもご案内したように、私は今国会で郵政民営化特別委員に任命されており、委員会審議等でどうしても時間が取れそうにありません。対応した秘書がそ
のように伝えると「取材を拒否されたと見なし、番組でその旨を放送します」と言われたのだそうです。秘書はすっかり慌ててしまい、報告を受けた私は、委員
会の合間を縫ってテレビ局に電話をしました。
 先方の取材内容についてコメントしていると、どうも電話の音がおかしいことに気づきました。不審に思い尋ねてみると、「実は電話の内容を録音しています。後ほど言おうと思っていたのですが…」との返事。
 これはまさに双方の信義の問題です。取材内容の録音は相手の了解を得るのが倫理的に当然であると告げると、相手もそれを認め「今回の取材はなかったものといたします」ということで決着しました。

 私はふと、NHK番組改変についての朝日新聞報道問題を思い起こしました。そして、私も報道陣から録音をされる対象になったのかと改めて認識し、身が引き締まる思いがしました。
 思い起こしますと、かつてある国を訪問した際に、日本の事務所や家族にした電話を全て録音されていたこともあります。呼び出し音の後で、明らかに電話の
トーンが変わるのです。友好的な関係を結んでいる国においてもこうした現実があります。加速する情報化社会の厳しい側面を見た思いがしました。 

 個人情報保護法の施行によりマスコミの方の取材や報道への規制も厳しい現状があるのかもしれませんが、法体系の整備もさることながら、信頼と安心のできる社会に向けてモラルを高めていくことが大事なのだと感じた一幕でした

新 藤 義 孝