平成9年一般会計・特別会計等予算(質疑)衆議院予算委員会第六分科会-1号 1997年03月03日

平成9年一般会計・特別会計等予算(質疑)

140-衆-予算委員会第六分科会-1号 平成09年03月03日

○新藤分科員 自由民主党の新藤義孝でございます。
 きょうは、産業政策にかかわる、特に中小企業の関係についてお尋ねしたい、このように思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、全体の経済概観でございますが、日銀の金融経済概観によると、我が国の景気は穏やかな回復を続けており、民間需要は底がたさを増している、こういうことでございます。そしてまた、ちょうどきのうの日経新聞を見ますと、上場企業は四年連続の増益だ、今期の経常利益も八・九%アップだ、こんなふうに出ております。要するに、経済的な見地からいうと、景気は底がたさで少しずつでも回復しているのだ、こういうことになるわけなのでございます。
 それに対して、では本当の地場の、地域で営業活動をされている中小企業の皆さんたちはどうなのか。私は、地元の企業、川口でございますが、大変中小企業の集積の多い町でございます。皆さん方とお話ししている中で、景気がよくなったなという話は一度も聞いたことがないわけでございます。
 そういう中で、よく調べますと、大企業の回復に比べて中小企業の回復のテンポというのはまだまだだと。中小企業庁の調査によっても、平成八年の七月から九月期以降足踏み状態が続いているという、大企業の回復、日本経済の回復基調に対してこんな状況が出ております。また、製造業の工業生産指数を見ても、平成二年を一〇〇とした場合に、大企業が一〇二、中小企業が九五・二だ。こういうことで、数字を見ていくと、言われている全体の経済の話と中小企業との間には相当な隔たりがあるのではないか、このように思っております。
 これについて認識を聞こうかなと思いましたが、しかし、これは大体こういうことなわけでございまして、これを前提にして先に進めたいと思います。
 こういうことで、中小企業はまだまだなのだ、何とかしてあげなければいけない、させていただきたい、こういうふうに思っているわけなのですけれども、そういう中で、特に私が今心配しているのは空洞化、これもよく皆さんから御指摘いただきます。空洞化も、やはりちょっと調べますと、設備投資面においても、今回中小企業の先行性というのは失われている。それから、要するに企業マインドでいえば、今までの不況は、どんなに苦しくても頑張っていれば、景気が回復すれば親企業からまた発注が戻ってくる、こういうことだったと思うのですが、今回ばかりは、皆さんからお話を聞いていると、なかなか戻るのは難しいのじゃないか、こういうようなことも聞いております。
 これの背景になっているのは、やはり大企業の海外進出。これは八五年のプラザ合意以降どんどん進んできておりますが、家電製品の海外生産比率で見ると、八五年から九四年までの十年間で、カラーテレビは三八%から七八%に海外で生産が進んだ。ビデオが六・三%から五三%、冷蔵庫が一八%から四四%と、こういうふうにすごい勢いで海外展開が大企業で図られておる。そうすると、初期のころは別にして、もう最近では海外での生産の品質だとか生産体制がしっかり整ってしまってくると、一番最初のころに大企業が海外へ出ていって、そして製品調達は国内の下請だとか部品メーカーに発注していたものも、これも含めて海外に行ってしまっているのではないか。そういうことで、企業の収益は上がっているのだけれども、中小企業に仕事の戻りが来ないのじゃないかという心配につながっているのではないか、こういうふうに思うわけなんです。
 ここで、ちょっと能書きが長くなって恐縮なんですけれども、私は中小企業ということに対して少し自分なりの定義がございます。大企業に対する中小企業ということではなくて、中小企業というのは、まさに地域産業、地場産業化しているわけでございます。それは、商売だけの問題ではなくて、地域と密接に結びついた企業というものは、これはもう完全にコミュニティーの一部になってしまっている。例えば、町会運営だとかそれからいろいろな行政に協力をしたり、町を運営していく中に本当にすばらしいほどに地場産業の、地域集積をされた産業の皆さん方が、自分たちの仕事だけではなくて、町の問題として産業が集積しているということでございまして、私は、地場産業は地域コミュニティーだ、こういうふうに思っています。ですから、空洞化等々で中小企業の業績が回復しない、元気になってもらわないと町自体も意気消沈していってしまうということになる、私はこのように思っています。ですから、単に産業政策上だけではなくて、我々の地域のコミュニティーの問題としてやはり中小企業の振興というものを強力に考えていくべきだと思っておるわけでございます。
 そういった観点から、いわゆる中小企業、我々は地場産業と言います。お国の方では、地域の産業集積、地域集積産業と言うわけでございますが、この問題に対して通産省としてはどういった対策を講じようとしているのか、御見解をお聞かせいただきたいと思います。

○稲川政府委員 御指摘のございました大企業の海外展開に伴う空洞化によりまして、産業集積、地域のコミュニティーに大変大きな打撃を与えております。
 我々、二つの産業集積を念頭に置いて検討を進めてございますが、一つは自動車、家電などの量産型産業、いわば基幹産業を支えてまいりました足元にあります鋳鍛造、メッキ、金型、試作品製造などのいわゆる物づくりの基盤でありますサポーティングインダストリーの集積でございます。いま一つは、産地などの形態で地域経済の自律的発展基盤でありました地域の中小企業の集積でございます。この二つの産業集積を念頭に置きながら空洞化問題を検討しているところでございます。
 他方で、先ほど不況を耐えれば発注が戻ってくるかという先生のお話がございましたが、我が国の産業構造、大変大きな変化をいたしてございまして、我が国製造業への需要は、むしろ最終消費財よりも資本財、生産財へと変化をしておりますし、また、大量生産の一般仕様品から小ロット生産の特殊仕様品へ移行することなどの傾向が見えてございまして、資本財、生産財や研究開発、試作を中心とする分野に需要自身が大きく変わりつつあるという認識がございます。このため、我が国地域の産業の空洞化を防止しますためには、この需要構造の変化、産業構造の変化に対応しつつ新たな活力を生み出すことが必要でございまして、そのために、技術水準を上げる、あるいはネットワークの形成を広げる、新分野へ進出をする、こういったことのための基盤整備を通じまして、地域の産業集積の活性化を図ることが不可欠
ではないかというふうに考えてございます。
 このため、今国会に特定産業集積の活性化に関する臨時措置法案を提出いたしましたところでございまして、この法案によりまして、産業インフラの整備、研究開発、人材育成の促進あるいは新たな事業展開への投資促進などを柱といたしまして、地域における取り組みへの体系的な支援を推進したいと考えてございます。特に、建設省の道路整備事業あるいは労働省の雇用・能力開発施策、さらには文部省の教育研究施策など、関係省庁とも密接な連携を図りまして総合的な施策を講じ、その効果を最大限に発揮するよう政策を構築いたしてございます。

○新藤分科員 今の特定産業集積の活性化に関する臨時措置法案、これは大変すばらしい法案だと思うのです。
 そこで、大臣にお尋ねを申し上げたいと思いますが、私、この中小企業の問題は、これはこれからの政策すべてにかかると思うのですけれども、めり張りをつけた運営をしていく必要がある、このように思うのです。要するに、一律、中小企業なら中小企業という枠ですべての皆さんに等しく渡るようにしようと思うと、これはどうしても最大公約数のものになってしまう。やる気のあるところと、それからそうでないところと、これはやはり差はつけていく必要があるのではないかというふうに思うのです。
 先ほどサポーティングインダストリーの問題にちょっと触れていただきましたが、まさに私たちの川口はそういう、素形材の鋳物を中心として、それに関連する機械や木型関係がずっと集積しておるわけですね。こういう町で、自分の町の売り込みをしてもしようがないのですが、国の政策によらずに、川口版ニューディールなどと申しまして、公共施設に自分たちの製品をどんどん使ってくれということで独自にキャラバン隊を組んで何かやったりとか、いろいろなアイデアを自分たちで出しながら地域でやっております。特定産業集積の活性化に関する臨時措置法案、ぜひこれをどんどん進めていただきたいのです。
 何か、聞いている話では、地域指定を二十地域ぐらいして進めるのだということなんですが、そこで大臣にぜひ御見解というか御決意のほどを御披瀝いただきたいのは、大変にらみのきく、実力、剛腕大臣でございますから、私は、これの肝心なところは、通産省だけの政策ではなくて、もし事業者が魅力を感じるとするならば、先ほど申しました地域コミュニティー、町の運営の中での話だとするならば、要するに、いろいろな関連施策、よその省庁との連携によって総合的な町づくり事業の中に組み込められるかということだと思うのです。産業関連のインフラの整備、それからいわゆる労働関係の条件整備、こういうものが通産省主導にして強力に総合的なものになったときに、今回の中小企業に関するてこ入れ策が功を奏するのではないかな、私はこう思うのでございますが、ぜひ御決意のほどをお願い申し上げます。

○佐藤国務大臣 新藤さんにお答えいたしますが、今委員のおっしゃるとおりだと思うのです。
 ただ、中小企業といっても、いわゆる工業部門と商業部門、これは大分違うと思うのです。今のお話のように、新藤さんの地元川口というと、鋳物の町ということで町ができ上がり、そこにおいて新しい技術が生まれ、まさに政治も経済も鋳物で育ったなというような気がしております。
 それで、これから私の方で御審議をお願いする地域産業集積活性化法案、これは今おっしゃるように、俗に言うめり張りをきかしていかなきゃいけない、それから地域の特性をそれぞれ生かしていくということが大変大事だと思うのです。ですから、この中においては、技術開発、販路の拡張、人材育成というのを三本柱として幅広い支援を展開していく、各地域の中小企業がその必要に応じて支援策を組み合わせ、新たな事業の展開に活用していけるよう最大限の工夫をしたものであります。
 こうした施策だけではなく、中小企業対策を使いやすいものとし、中小企業の方々のさまざまな悩みや課題に的確にこたえ得るよう、まず窓口機能の強化ということ、そして民間や大学の人材を活用した広範かつきめ細かなアドバイス事業の推進ということ、開発初期段階の技術シーズの助成の対象化ということで、平成九年度の予算においてはこういった施策の充実を図っていきたいと思うわけでございます。
 全く委員の御指摘のとおりでございます。

○新藤分科員 ありがとうございます。いささか私どもも、町の中で自分で目の当たりにしておりますので、しかし、これは私たちの町だけではないと思いますので、御賛同いただいたと思っておりますが、ぜひ今後ともよろしくお願いを申し上げます。
 それから、余り時間がなくなってきましたので、もう少し大臣にお尋ねしたがったのですが、ちょっとこれは、規制緩和のことについてはまた次の機会に回させていただきます。
 そして、一つ大事な問題として、空洞化の進行、それから規制緩和、これとあわせて時短問題が大変大きな問題になってくる、このように思っております。
 中小企業にとって、単純に操業時間が短くなってよかったなと喜ぶかというと、実態はなかなかそうではないわけでございまして、収入が減ったらどうしようと働いている方は思うし、それから雇っている方は、今までより時間数が減った、少なくなったから、じゃ賃金アップしろよと言われてもこれまた苦しい、こういうところだと思っております。
 そういう中で、今回は、いわゆる二年間の指導期間というものを設け、時短促進法の廃止期限を二年延長するんだ、こういうことで法案も出ております。私も、この時短の意義とか、それから国際世論の中で国是になっている、こういうことも含めて重々承知をしておりますけれども、この場合に幾つかの問題が出てくると思われますので、具体的にどう対処するのか、これは中小企業庁にお伺いしたい、このように思っております。
 まず、二年間の指導期間において具体的にどういう指導が行われるのか、そして、労働省の関係で中小企業庁としてはどんな役割を果たしていくおつもりなのかということでございます。それから、下請の中小企業が時短を進める場合には親企業の発注のあり方というものが、やはりこれは決めておかなければいけないと思うんですが、親企業さんに関してどういう指導が行われるのか。それから、この週四十時間労働に対する賃金の扱いの問題、これも労使間の問題なんだ、労働省ですよということかもしれませんが、しかし、中小企業庁としてこの部分にどういう御指導をされるおつもりなのか。それから最後に、やみ残業というのがあるわけでございます。いわゆるやみ残業というものが一般人から告発されたときに、仮にそういうことがあったときに、中小企業の経営者が直ちに罰則の適用を受けないような措置が法的に講じられているのかどうか。これはあってならないことなんですが、ただ、実態上時々聞く話でもあるわけでございまして、この辺についてお答えをいただきたいと思います。

○田島政府委員 労働時間の短縮の問題、私ども、ゆとりと豊かさの実感できる社会といったようなことからも、それから中小企業者の人材の確保という観点からも、大変重要な問題と考えてございます。
 ただ、中小企業の皆様方、一生懸命に時間の短縮には取り組んでいただいておるわけでございますけれども、先ほど先生お話ございましたように、今景気の観点からも構造的な対応という観点からも、大変厳しい状況でございますものですから、来年の四月から四十時間制に移行するという場合に、それができるだけ円滑に移行するようにということで、政府によってきめ細かい援助、指導ということを規定する時短法という、これは労働省の法律でございますが、この改正案を今国会に御提案を申し上げておるところでございます。
 また、来年度の予算案におきましては、四十時間労働制への移行に取り組む中小企業者の皆様に
助成金を創設するということで、いろいろな環境整備というようなことについても御支援を申し上げるということになっておるところでございます。
 いずれにいたしましても、引き続き労働省とよく相談をして進めたいと思います。
 先ほど先生からお話のございました点につきまして、やや具体的にあれしますと、指導、援助のところは、先ほど申し上げたように、時短法を改正しまして、二年間は指導、援助に徹するということで円滑な施行を図るということでございます。
 それから、下請の関係につきましては、下請振興基準というガイドライン、私どもございますが、その中に、例えば、夜遅くに発注をして朝一番で持っていらっしゃいといったようなことはやはり適切ではありませんよといったようなことを盛り込みまして、いろいろな機会、大企業の下請の窓口の担当者等々に対する研修の機会等を通じて周知徹底を図っておるところでございますし、引き続きそういった努力をいたしてまいりたいと思います。
 賃金の扱いのお話もございましたけれども、この点につきましては、労働省の御意見にもございますが、時間当たり賃金単価が下回らないというようなことでありますれば、大変いろいろ厳しい状況にございまして生産性も上がっていないという中小企業の対応の一つのやり方として、労働基準法上も認められるのではないかというようなことでございますので、そういった取り扱いをやむを得ない場合はしていただくというようなことを考えておるところでございます。
 やみ残業の問題、最後に御指摘ございましたが、当初の二年間につきましてはそういったことも含めて御指導をし、できるだけそういうのが守られる状況を実現するということで対応いたしたいと思います。
 いずれにしましても、労働省とよく、私どもも中小企業の実態を御理解いただきながら進めてまいりたい、こういうふうに思ってございます。

○新藤分科員 ただいまの問題は、ちょこちょこっとやる問題ではないわけでございまして、一つ一つが非常に重要な問題だろうと思います。
 そして、例えば下請発注基準についても、これはこれまでも、時短を除きましても今まで親企業と下請の関係というのは幾つもあったわけですね。だけれども、現実にはなかなかそれが行き届かないというところがあるわけで、あくまで実業の世界の話になってしまいますから、よく注意深く見ながらやっていきたいと思っております。
 特に、賃金の扱いの問題は、これは質問ではありませんが、賃金の問題については、ややこしいんですけれども、基本的には労使間の話し合いで解決すべきだ。そして、賃金が合理性があるものであれば、時間当たり賃金が減少しないと、労働時間の変更との関係から見て合理性があるものであれば、労働基準法の適用上問題とならない。うんと難しいんですけれども、要するに、ある範囲までは減っても問題にしないよということかなと思っております。しかし、なかなかこのようにはいかないんじゃないかな、やってみてからの話なんですけれども、これは今後の課題ではないかなというふうに思っております。また、次回、改めてこれはじっくり詰めていきたい、こういうふうに思っております。
 そして、最後の御質問をさせていただきますけれども、今まで中小企業をめぐる情勢ということで、空洞化の問題であるとか時短の問題に少し触れさせていただきました。これとあわせて、もう一つ別の観点から、今度は中小企業を支える人材の確保、こういう観点から質問させていただきたいというふうに思います。
 特に、中小企業の町工場、こういうところについては、今までの高度経済成長を支えた、そして最先端の技術を保有していた町工場というのはいっぱいあるわけなのです。この特殊技術というのは工場の職人によって引き継がれてきた、こういうふうに思っております。要するに、こういう技術というのは特殊なものですから、中には職人芸のようなものもございます。こういうものも含めて、長い年月をかけて、最先端の機械をもってもなかなか代替できないような技術を持ったところまであるということでございます。
 しかし、そういう中で、私のところの町の川口なんかでは特に鋳物に顕著なのだと思うのですけれども、若い人がなかなか入ってこないということでございます。本当の基礎的な素形材ですから、高度経済成長を支えた部分なのだけれども、今いわゆる三K職場ということで若者から敬遠されてしまっている。やる気を出している若い人というのは、結局工場を継ごう、工場をやっていこうと思っている方でございまして、この工場で働いてやろうという気持ちを持った若い人が少ないのではないかな、こういうふうに思うわけでございます。
 橋本総理がよくおっしゃる、私はお聞かせいただいているのですが、私たちの国は職人の国家だ、物づくりの国家だ、技術を持った人の手によって国が支えられてきたのだ、こういうふうにおっしゃっております。それでは、この部分を具体的に、特に製造業にかかわる技術者の確保そして育成、これをどうやって図っていくのかということなのです。若い人が入ってきてくれないというのは、社会全体における物づくりの現場に対する評価の低さ、これが反映されているのではないかな、総括させていただくと私はそんなふうに思っております。
 これに加えて、やはり工場で働く技術労働者が自分の仕事に誇りを持って、そして子供にこの仕事はぜひ継がせたいのだ、やらせたい、こういうふうに思わせるような気風が今の日本に欠けているのかな。要するにホワイトカラーとか大企業志向、こういうことなのかなというふうに思うのですけれども、気持ちだけではなくて、やはり私は、実際にこういう人たちに誇りが持てるような、そういう社会的なステータスと処遇を、技術を持ったことによって与えられる処遇について、もう少しきちんと形をつくっていく必要があるのではないかな、こういうふうに思うわけであります。
 そういう観点から、現在、技術労働者に対してどういう育成策を行っているのか、また、その育成策が社会的なステータスを得られるようなシステムになっているのかどうか、そこのところをまずお伺いしたいと思っております。
 それから次に、ドイツのマイスター制度、要するにこれはドイツ固有の技術労働者のシステムなのですが、これについてどんな評価をしているのかということをお聞きしたいと思います。
 それから最後に、若手の人材を確保しなければいけない、これはだれもがわかることなのですけれども、このために、やはりすばらしい技術者にきちんと日を当ててあげる、それから待遇を考えてあげる。それとあわせて、そういう人たちが今こんなことをやっているんだということを子供たちに教える必要があるのではないか。これも、教える必要があるのではないかと言うと、いいですねと言うけれども、施策が具体的にないのですよね。だから、こういう部分は特に文部省と協力して、子供たちの中にボランティアの気風を生み出すということと働く喜び、そして技術のすばらしさ、こういうものを子供のときから啓蒙していく、そして触れさすことができる、そういうことをやってみたらどうかな、こういうふうに思うのでございますが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

○田島政府委員 先生御指摘のとおり、戦後我が国の製造業の成長を支えてきたのは中小企業でございますし、なかんずく、生産の現場で働いてくださっておられる技術者あるいは技能者の皆様方に大きく依存しておるということをよく認識をいたしております。
 一方で、御指摘のように、空洞化の進展等々、物づくりの基盤が失われつつあるという懸念もあるところでございます。技術者、技能者については、例えば鋳物工でございますけれども、五十代後半をピークに、年齢が下がるにつれて技能工が
少なくなっているといったようなこともございまして、高齢化が進む中で若者の製造業離れ等が進む、今まで培ってきた技術を次の世代に継承することも難しくなっておるというような状況ではないか、こういうふうに思っております。私どもの国の製造業の発展にとって、やはりゆゆしい問題でございます。
 技術者、技能者に対する問題、先ほども御議論ございましたけれども、今国会で御提案を申し上げております集積活性化法といったような法律、その他各種の技術開発の施策等々、産業そのものがやはり活性化をする、元気のある形になるといったこと。それから、中小労働力確保法という法律もございますけれども、職場環境を改善をしていくといったような努力、不断の努力というのが大切でございますし、こういったこととあわせて、現在私どもも、これからさらにどういった対応をしていったらいいのかというようなことを調査検討に着手しておるところでございます。
 この場合に、物づくりの大切さが理解をされるということ、これが大変大事であるということもよく認識をいたしておりまして、私どももいろいろな有識者、学識経験者等々からの御意見なんかも徴しておりますけれども、そういった中でも、技術に対する社会的評価の問題あるいは物づくりに対する社会的評価の問題が重要だという御指摘も賜っております。
 したがいまして、産業界で活躍をされておる立派な技術者や、あるいは熟練の技能者の皆様方の実際のお話を、学生はもちろんのこと、一般の方々、子供さんに至るまで、いろいろなお話をしていただいて、物づくりのすばらしさとか楽しさを理解していただくといったような機会をふやすことも大変重要であると思っておりますし、こういった観点も含めまして、私ども通産省も、局も含めて、いろいろな機会をとらえて、物づくりの大切さについて講演とかシンポジウムとか、そういった努力をいたしておるところでございます。
 いずれにいたしましても、先ほど申し上げたように、今勉強に着手したところでございますが、中小企業庁もいろいろな補助金等々もございますので、そういったものを活用しながら、あるいは大学校の制度といったようなものも活用しながら、人材育成に係る施策の充実等々に努力をしてまいりたいと思っております。