特定産業集積の活性化に関する臨時措置法案(質疑) 衆議院商工委員会-6号  1997年3月21日

特定産業集積の活性化に関する臨時措置法案(質疑)
140-衆-商工委員会-6号 1997年03月21日

○新藤委員 この今回の特定産業集積の活性化に関する臨時措置法案、私もみずからの政治活動の中で大変に中小企業、また国内の産業の育成、活性化、この点については大きな関心を持っておりまして、過日、予算委員会でも、分科会で大臣には質問させていただきました。また重なって恐縮でございますが、何点かお考えをお聞かせ願いたいというふうに思います。これまで各委員の方々からも何度も質問が出ております。私もこれは触れざるを得ないわけでございますが、まずは、産業の空洞化についてでございます。
 私は、このときにも、空洞化と申しましても二つあるなと思っております。一つは、いわゆる生産機能が海外展開をするという、国際分業化時代を迎えての生産拠点の海外移転、こういうことだ。それからもう一つは、内なる空洞化として、国内にある中小製造業の縮小化、こういうものがあるのではないかというふうに思っております。
 海外シフトの方はもういろいろ言われておりますからあえて数字も挙げませんが、この内なる空洞化につきましても、中小企業の事業機会の縮小というのは、中小企業等の開発業率、こういう数字を見ますと、八九年以降、廃業率が開業率を上回っている、こういう実態が出ております。そして、製造業全体の雇用は今後五年間で百二十四万人の減少になるだろう、こういう予測が出ておるわけでございます。
 この点も踏まえて、実際の、現在の産業空洞化の現状についてへどうなっているのか、また、問題点の御認識、どこの部分をされているのか、大臣からお聞かせいただきたいと思います。

○佐藤国務大臣 今おっしゃるように、中小企業といっても大変すそ野が広い、幅があるわけでございます。今言われている空洞化現象、これはやはり工業、この方面が主に言われておりまして、この法律も商業的な中小企業者よりか工業的なと、こういうふうに力点が置かれていると思うのです。
 そこで、よく申すように、やはりこれまでの認識というのは、海外に行く、そういうことによって雇用が喪失するという、これが非常に今問題視されているわけです。昨年の通産省の方の調査でも、このままでいくと、五年間、ですから二〇〇一年ですか、これに百二十四万人ぐらい減少する。この減少は当然へ当時の一ドル百十円ということではじいたのですが、これが今みたいな円安の百二十円になっても余りこうした傾向は変わらないだろう、こういうことでございます。
 そこで、企業が最適な事業環境を求め国際展開を図っていくということ自体は評価できますが、今のように、我が国の高コスト構造や制度的規制ということが要因で、本来ならば日本の国内において比較的優位を保たれるような産業までどんどん行く、こういうことでございまして、今委員御指摘のように、日本から外に行く、アメリカのように入ってくるものが多いかというと、それが十三分の一ぐらいしか入ってこない、こういうところに非常に問題の深刻化というのがうかがえるわけでございます。
 そういうことを踏まえて、新たな雇用の担い手となる新規産業の創出、それからそれと並んで高コスト構造の是正等による我が国の国際的に魅力ある事業環境、こういうものの整備が急務だな、こういうふうに認識しているわけでございます。
    〔委員長退席、小川委員長代理着席〕

○新藤委員 それに加えて、私は、またここで自分なりの定義をさせていただきたいと思いますが、日本の企業の中で中小企業はいわゆる全事業者の九九%、全従業員数の七八%、生産額ですと、いろいろな統計がありますが、半分から半分ちょっと過ぎたあたりの人間が従事をして生産活動を行っている。この中小企業が集積をすると、国ではいわゆる産業集積と言うし、我々は、地域では地場産業という言葉になるわけでございます。
 この地場産業というのは、私は地元は川口でございますし、子供のときからの触れ合いの中で、もうどう転んでもこれは産業だけの問題ではなくて、要するに地域のコミュニティーなんですよね。やはり地域の行政の方向性だとか町の運営についても一番関心を持たざるを得ないし、持って町の運営にまで携わっているのが地場産業の経営者の皆さんです。そして、そこに携わっている従業員の皆さんも、そういう町への帰属意識とかこういうものは非常に高くなっているわけなんです。
 私は、産業従事者が多いからというだけではなくて、やはり日本の独特の中小企業、地場産業というものに対して、これはもうコミュニティーである、町づくりの一環なんだ、こういうふうにぜひ位置づけなければならないと思っています。そして、中小企業が全くクールに事業の採算性だとか立地の有利性だとか、そういうものを考えながら適宜動くようなことになれば、それは町自体のコミュニティーもおかしくなっていくようなことになるのではないか。
 ましてや、ここのところ、日本経済が穏やかな回復基調にあるということでもう何カ月も言われておりますが、実態として、大企業に比べて中小企業の回復度合いというのはまだまだ追いついておりませんし、現実の問題で、中小企業経営者は、今回の空洞化に伴い、大企業が海外進出して、そして前だったら景気がよくなれば発注が戻ってきたのが、今はその後発注するべきものが外へ行ってしまっている、こういう中で非常な経営不安を感じておる。この中小企業がしっかりしてくれないと、日本の国の本当の大もとがぐらぐらになるのではないかというふうに私は思っております。
 そういう意味で、中小企業の現状の経営状況だとかそれから今後の景気回復の見通し、これについて、国の方では、政府ではどうお考えなのか、お聞かせ願いたいと思います。

○石黒政府委員 お答え申し上げます。
 中小企業をめぐる景気認識といいますか、状況認識という御質問だと思いますけれども、委員御指摘のありましたように、我が国経済が緩やかな回復の動きを続けている中で、依然として厳しい状況にあるものと認識をいたしております。
 個別具体的に少し申しますと、生産は上昇傾向で推移しているものの、大企業に比べましてそのテンポは緩やかであり、依然として生産水準には大きな差が見られております。また、設備投資につきましても、中小製造業にも回復の動きが広がりつつございますけれども、これを商業にとってみますと、中小商業の設備投資は引き続き低調なものという状況にございます。
 今後の見通しといたしましては、生産の動き等、足元に明るい材料が見られるものの、中小企業の景況感は足踏み状態にあるという認識でございまして、まだ依然として不透明感が残っているという認識をいたしておりまして、引き続き慎重に状況を見続けていかなければいかぬというふうに考えております。

○新藤委員 当然のことながら、これは厳しい状況であるということでは国内で違う認識を持っておる方はほとんどいないのではないか、こういうふうに思いますけれども、そこで、結局そういう事態を打開するための今回の臨時措置法案だというふうに思っております。
 そして、加えて、今回私が大変ありがたいなと思っているのは、橋本総理もいつもおっしゃっておりますが、いろいろな演説をされたり、それから所信表明でも触れられておりましたが、今後の日本経済の発展を支えるのは物づくりなんだと。そして、先ほど大臣は、古きをたずねて新しきを
知れ、こうおっしゃいましたが、まさにそのとおり、日本の歴史を振り返ってみると、我々の国の発展は職人の物づくりの腕によって支えられてきた、こういうことだと思っております。
 そういう意味で、よく総理がおっしゃるのは、大田区には、NASAのスペースシャトルの部品を開発したんだ、おれがいなければあのスペースシャトルは飛ばなかったんだということを、ちょうど打ち上げのときに総理は技術者の皆さんと話をしていたのだ、大分自慢されてしまったんだよという話も聞いておりますし、加えて、昔、江戸から明治にかかるときに、大砲だとか、要するに西洋技術を日本に入れてきた。勝海舟なんかがいろいろな技術をとってきて図面をかいたわけなんですが、しかしそのときに、その図面を見て鋳物でその物をつくったのは川口の鋳物屋さんだったんだよなんていうので、私も地元でございますから、総理が、こっちから言ったわけではないのですが、触れていただいた。事ほどさように、とにかく自分たちで物をつくれるというここの部分は大変に大事なわけでございます。
 そういう意味で、今回は、産業集積といっても産地の集積、それから大企業の下請企業群による企業城下町的な集積、それから幅広い基盤的な技術の産業集積、金型だとか鋳鍛造だとかそういうようなものです。こういうものの部分に目を当てて、光を当ててくれたという意味で、大変に私は評価をしているのでございます。
 そこで、そのことはもう少し後で聞きますが、ただ一つ言わせていただきたいのですが、大変に政府としては、今回物づくりに力を入れるのだ、中小企業頑張れよ、元気にしろと言っていただいているのですが、これまでの経過を見て、通産省が、または日本政府が、そういう地域のコミュニティーだとか物づくりだとか、それから地域産業集積だとか、そういうものを大事にしているんだ、すごい力を入れているんだ、こういうふうに果たして国が自分たちのことを思ってくれているのかなということになりますと、もちろん政府は一生懸命やっているに決まっているのです。だけれども、現場の地域の皆さんと話をしていく中で、我々は国に支えられている、国がバックアップをして、そういう自分たちの苦しい操業環境の改善だとか技術開発にすごい力が入っているのだとは、そこまでは思ってないのではないか。私は思っていないというふうに聞いております。
 この部分で、ぜひやはり、これからこの法案をいろいろなふうに運用していくに当たって、もっとこの物づくりの基盤の重要性、総理がおっしゃるだけじゃなくて、どんどんとそういうことをアピールしていく必要があると思うし、その対策についても幅広く積極的に普及をするように努力をする必要があると思うのですが、今後具体的にそういった観点からどんな行動が考えられるのか、お答えをいただきたいと存じます。

○稲川政府委員 御指摘のございました物づくりの基盤の重要性など、この法案のコンセプトになっておりますものにつきましては、法律成立後、早急に活性化指針という形で策定をいたしまして、その中で具体性を持って世に明らかにしてまいりたいと考えてございます。
 また、この法律の運用あるいは各種施策の利用方法につきましては、都道府県あるいは地域の支援機関などが実施します説明会を通じまして、積極的に普及、広報に努めてまいりたいと考えてございます。さらに、その他できる限りの機会をとらえまして、物づくりの重要性、基盤の重要性とともに、政策のPRを行っていきます。
 また、現場からの政策ニーズ等の生の声が政策の実施に反映されるように現場との情報交換、交流ということを配慮してまいりたいと思っております。

○新藤委員 そういう、何というのですか、気合いの問題もあると思うのですよ。気持ちの問題でございまして、これは私も地元へ帰っては、どんどんと国が本気で取り組んでいるよ、こういう話をさせていただこうというふうに思っておりますし、それは通産省としてもぜひ、余計なことを申し上げて恐縮なんですが、大体通産政策というのは自分でやりませんので、自分で事業を持って直接執行するわけではありませんで、あくまで実業のお手伝いの部分でございますから、そういう意味で、やはり制度だとか法令だとかそっちの方が強くて、自分のプロジェクトだという意味合いが、我々が受ける感じとしては若干低いわけでございます。ぜひここはそういったことを積極的にやっていただきたい、こういうふうに思います。
 そして、今回私が法案を評価するというのは、いわゆる産地だとか特定中小企業集積に加えて、幅広く基盤的な産業集積に対してお手伝いをする、こういう部分を加えたところを評価しているということなんですが、産業政策上の講じられる支援策、通産省として目いっぱい結集したというふうに聞いております。ぜひそこの部分で少し具体的に、どんな内容にそういうことを言えるのか、お聞かせをいただきたいと存じます。

○稲川政府委員 この法案におきましては、産業インフラの整備、研究開発、人材育成の促進、さらに三つ目には新たな事業展開への投資促進という三本を柱といたしまして、省を挙げまして地域の産業集積の活性化に政策を重点化しております。
 この結果、具体的には、この法案の適用を受けます集積のみを対象とした予算措置としては八十一億円を計上いたしてございます。研究開発施設・機器、人材育成施設、賃貸工場等の産業のインフラ整備、それから中小企業の新商品・新技術開発、人材育成への支援等が内容でございます。
 そのほか、地域における研究開発の重点的支援、技術を核とした新たな事業のもととなる特許技術流通促進、産業集積の活性化のために活用される関連予算を含めますと、総額で二百二十五億円の計上になります。
 また、都道府県知事による計画の承認を受け、新たな技術開発や新分野への進出を行おうとする事業者に対しましては、こうした予算面以外にも、新たな設備投資に係ります特別償却制度、政府系金融機関からの低利融資や債務保証など、各般の支援措置を手当てしております。
 さらに、建設省の道路整備事業、それから労働省の雇用・能力開発施策、文部省の文教施策など、関係省庁とも密接な連携を図りつつ、総合的な施策を講じまして、その効果を最大限に発揮するように政策を構築いたしてございます。

○新藤委員 すばらしい内容なんだと思いますが、これに加えて、本法案が目的とする産業集積の活性化ということで、事業者の活動、特に、先ほども申し上げましたように中小企業の活動がポイントになるんだ、こういうことでございます。
 やる気のある中小企業を元気にしていくような、そういう対策を行っていくことが大事であると私は思うのですけれども、これもやはり厳しいですよね。九〇年から九四年、ここの部分の製造業全体の出荷額、これがマイナスの七・五%。これに対して、いわゆる今回の基盤的技術産業と言われるような金型製造業、これはマイナス二三%。それから電気メッキなんかも一三%ということで、非常にこういう基盤的技術産業の部分、それは大半が中小企業というか、ほとんど中小企業ですから、そういうことで逆に弱まっているということなんだと思います。
 そこで、この法案の中で、中小企業の支援の援護策というか対策、ここの部分はどんなふうになっているのか、お聞かせをいただきたいと存じます。

○田島政府委員 お答えを申し上げます。
 何とかの産業集積といいましても、そこに実際に御商売をやっておられる方の大部分は中小企業者でございます。そういったことから、そういった中小企業の皆様方に元気を出していただいて、積極的な事業展開をやっていただくということが極めて重要でございます。こうした観点から、この法案におきましては、県が活性化計画をつくられるわけですが、それをベースに研究開発とかそういった積極的な事業展開を行われる中小企業者の皆様方を、予算や税や財投を総合的に活用して
御支援を申し上げる、こういうことにいたしております。
 多少具体的に申し上げますと、新たな技術や商品の開発などに取り組む中小企業の皆様あるいは組合等に対しまして、補助金、低利融資、設備投資減税などといった御支援を申し上げる。そういったことに加えて、組合やあるいは地場産業振興センターあるいは公設試験研究機関等が、人材育成とか販路開拓とか、そういったことをやって中小企業をお手伝いするというような事業に対しても助成をするというようなことにいたしておるところでございます。

○新藤委員 いろいろなことをお考えいただいて対策を打っていただくということでございますので、引き続き、これはもうやってみなきやわかりませんので、どんどんとやっていこう、こういうことだと思います。
 そこで、少し総括的にお話をさせていただきますと、今回の空洞化の問題というのは非常に深刻である、こういうふうに思っているのです。その大前提というか一番の問題は、何といっても高コスト構造でございます。ですから、この我が国の高コスト構造に耐えかねて、技術力もあり競争力のある企業、国内にもいられるはずのものまでが外に出ていってしまう、これは非常に問題なんでございまして、しかし、それは別の観点から、土地それから税制、流通機構、こういうものを総合的に今回の橋本総理の掲げる六大改革の中でやっていかなきゃならない。まさにそれは日本の弱みでもありますので、この弱みを直すための高コスト構造是正だ。それにも中小企業の浮沈は非常にかかっている、こういうことだと思うのです。
 しかし、これともう一つ私は着目しなきゃいけないのは、優秀な技術力を背景にして、大企業ではできない、それこそ本当の職人芸でずっと積み上げてきたものの集積によって、あの会社じゃなきやできないとか、あのおやじじゃなきやできないよ、こういうような優秀な技術力が日本にはあるんだ、それが橋本総理いわく我々の国の財産なんだ、こういう日本の強みだと思うのです、この技術力というのは。これは世界じゅうのだれもが認めていただけるところではないかな。この技術力をいたずらに外に出すんじゃなくて、どうやって国内でそれをうまく活用できるようにするか。そこの部分の、いわゆる研究開発力だとか技術力だとか、それから集積することによっての恩典を与える、こういう意味で私は今回の特定産業集積活性化臨時措置法案というものが生まれたんだなと自分なりに解釈をしているわけでございます。
 いずれにしても、この問題は非常に総合的な観点から対応していかなきゃいけないのじゃないか、こういうふうに思うのですけれども、考えてみると、先ほど予算の割り振りが、今回の法案で直結予算が八十一億、新法関連で二百二十五億ということで、これは胸を張ってお答えになられたのでしょうが、考えてみると本当に小さい予算ですよね、国の産業を生かすというのに。今財政構造改革元年でありますから、余り大それたことを言つちやいけないのでしょうけれども、そもそもが、通産省の予算が三千四百億ぐらいですか、中小企業関連で千二百億、ここをもうちょっと何か枠組みを変える必要があるんじゃないか。私は、もっとどんどんとこういう部分については予算をつぎ込んで、そのかわり、確実にみんなが喜ぶように、また収益が改善できるような、そういうきっちりとした対策を打っていく必要があると思うのです。
 ですから大臣には、とにかく豪腕大臣でございますから、確実にこの法案を早期に制定するとともに、この運用をどんどんと矢継ぎ早に、先ほどのいろいろな御質問の中にもありましたけれども、計画をつくったり周知徹底したりしなきゃいけないわけですから、こういう部分を実施をお願いしたいというふうに思うのです。こういった、ちょっと大ぶろしきになっちゃいましたが、日本の産業空洞化対策、これをどうやって総合的に対策をやっていくおつもりなのか、これはぜひ大臣にお答えをいただきたいと存じます。
    〔小川委員長代理退席、小此木委員長代
    理着席〕

○佐藤国務大臣 きょうのテーマである物づくりということ、いろいろな表現をされたわけでございますが、確かに物づくりという表現自体、私は今の時代にいかがなものかと思っているのです。と申し上げるのは、先ほどからのお話のように、やはりこういうものをつくったという職人というか技術屋が、誇りそして喜びというものをどう感ずるかということなんです。今までは確かに、あの仕事はあれしかできない、おれしかできない、こういうことだった。その考え方が、ややもすると徒弟奉公みたいな考え方につながり、それがいわゆる三K、こういうことにおいて今若い世代の人というのがそういうものに定着しないのではないだろうか、とう思っております。
 そういうことで、今のお話のように、これからどういうふうに日本の産業を持っていくかということになると、まさに今中長期的展望として我々が考えている経済構造改革、これを六つの改革の中でもって優先的に私は考えるべきではないだろうか、こう思っているのです。
 御存じのように、昨年の十二月に経済構造の変革と創造のためのプログラムを閣議決定したわけですが、その中には具体的に新規産業を生み出すという観点、もう一つは国際的に魅力ある事業環境をつくり出す、二つに分けて、新規産業、これが非常に国内に関係あるわけですが、それに関しては、個別産業分野ごとのニーズに対応した規制緩和、人材育成、技術開発、こういう総合的な施策をするということ、そして新規産業創出にかかわる共通の課題を解決するための資金、技術、人材面の施策、こういうことを推進していくことにしてありますし、今申しました国際的に魅力ある事業環境の創出という点では、高コスト構造是正のための規制緩和、そしてまた企業と労働に関する諸制度の改革、その中には御存じのように持ち株会社の解禁だとか税制の見直し、こういうものが入っておりますし、また、地域の産業・技術集積の活性化、こういうような施策を進めていこうということでございます。
 それで、この法案の着実な実施によって、今申したように、今までと違った新しい意味の物づくりというもの、これがやはり国の基盤となってきて、そして国際的に魅力ある産業の集積地域もできる、活性化してくる、かように思っているわけでございます。

○新藤委員 これは、理論といっても難しいのですよね。非常に難しいと思います。お考えはそのとおりだなというふうに思うのですけれども、特にこれからのこういう通産省政策を進める上でも、本法案には入っておりますから、私はこれをもっと追求すればいいなと思っているのですけれども、いわゆるインフラ整備において建設省と連携するのだ、それから、技能の継承支援という意味では労働省ともやりますよ、こういうふうになっております。
 それから、先ほどの中小企業庁長官のお話のように、何か学校に行ったらこういう汚いところということで、あれは逆に、それこそ文部省との連携プログラムの中で、私は今教育の問題について、これは文部省の教育改革プログラムのところで言っているのですけれども、僕はあっちで発言しているのですけれども、子供たちに、こういうような技術力があるんだよ、こんな人たちが一生懸命働いています、これを社会科見学をやったり、中学、高校ぐらいになったら、あなたの身近にあるこれは、我々の技術によって実はこんなふうにしてやっているのですという、こういう部分は、子供たちに就業機会の枠を広げるという意味からも、ぜひこれは文部省だって入れていかなければいけない話なのではないかな、こういうふうに思います。
 それに加えて、私、最後の質問にさせていただきますけれども、これは直接通産省だけで片づかない問題でもあります。しかし、あえて言わせていただきますと、結局のところ、今までの我が国の産業立地政策というのが、要するに全総以来、
大都市での工業、産業の立地の抑制と地方への分散、こういうものを大前提にして、制限に関する法律があったりとか、要するに企業の集積、産業の集積は人口集中につながる、これを均衡ある国土の発展ということで分散させようということでやってきたのだろう、こういうふうに思っております。
 しかし、結果的には本当の地場でやっている人間までがいられなくなってしまって、特定産業集積地域の中においても空洞化が発生してしまっているのですよ。これは、やる気のある企業とそうでない企業がある、技術力のある企業と、そうでない追いつかない企業がある。当然、淘汰はあります。そういう中で産業集積地の強みというのは、結局、そこならば工場操業関係に対して非常に周辺の理解が得られやすいということがあります。それから、関連の工場群や企業がいっぱいあって、ねじ屋から部品屋から、いろいろな作業がトータルでその地域でできるというので便利なんですよね。だから集まってくるわけなんです。
 だけれども、これからそういう中で淘汰が行われて、さあ土地があいた、それは決して大きな土地ではありません、何方平米とかというような土地ではないのです、せいぜい二、三千平米から、大きくても五千平米ぐらい、そんなようなレベルの土地があいてしまった。しかし、そこは国の都市計画というか、大都市圏には工場は要らないよという前提において、そこに入れないわけですね。今ある会社、工場をもうちょっと増改築する部分では大分緩和されてきたと思っています。だけれども、せっかくその産業集積地の中で、そこではまだ操業ができるにもかかわらず、別の企業が、ああそういう地区なら私も行くよと。大体、都市周辺で近いから便利だというのも、これまた立地が集積した原因でもあるのですから、そういういいところなら行くよといったときに入れなくなってしまっているわけなんですよね。ですから、やる気のあるところまで完全に外に出ざるを得なくなってしまう。それは産業集積のメリットを生かせなくなってしまうのですよ。
 だから、そういうことを考えると、ぜひ住工共存というのを前提に置いて、今度やる五全総の中においても、この工業立地、産業立地に関しての土地利用のあり方をもう少し見直してもらいたいな、私はこういうふうに思うのです。
 工業地域に当たり前のように――工業地域ならば当たり前なんです。だけれども、大体、地場産業とか中小企業が集積しているというところは、意外と準工業だとか、もともとから集積しているのですから、その集積しているところを現行追認型で都市計画が用途を決定しているわけですよ。だから準工業の中で、どっちでも建てられるようなところに産業集積というのは意外とあるのですよ。ここのところは今の考え方を切りかえないと、もう完全にアウトになってしまうわけなんです。
 そういう意味で、ちょうど今、国でも大分そういう方向になってきているのですよね。産業構造審議会の産業立地部会、「今後の地域産業政策・産業立地政策の検討の方向」というようなことについては、工業再配置促進法、工業等制限法、工場立地法、こういうものを含めて、企業活動のグローバル化、我が国産業の空洞化懸念を背景としつつ、地域における内発的、自律的発展の支援を重視する方向へ見直しを行うこと、こういう方向が出ております。
 今回の法案を実効あるものにしていくためには、結局我々が集積をして、この町は産業集積の町なんだ、自分たちがこういうふうにやってきたところに新しい仲間も入れられるんだよ、やる気のある人がもっと固まっていくよ、こういうことになるきっかけにもなるんじゃないかというふうに思うのです。
 とにかく、中小企業対策とか産業政策というのは、全部に適用できる政策というのはあり得ないと思うのですよね。だって自分たちがやらなければ、結局、国や我々はお手伝いするだけなんですから、そのやる気のある人たちに対して、もっと特段のいろいろな配慮をしていく必要がある、このように思っております。
 そういう意味で、くどくどと申し上げておりますが、この法案を機に、さらにその辺の産業立地政策上の今後の方向性は、私は住工共存と言っています。人によっては住工共生と言っております。国にはこういう言葉があるのかどうかわかりませんが、私が一つ聞いているのは、住工混在というのは聞いています。住工混在地域は、うまくやれば住工共存地域になれるわけでございまして、これがうまくいくと、本当の意味で中小企業が元気になれるのではないか、こういうふうに思っておりますが、ぜひそういったことで御見解をお聞かせいただければありがたいと存じます。

○佐藤国務大臣 おっしゃるように、この住工共存というのは、大変我々も関心を持っておるところでございます。
 今、新藤委員言われましたが、やはり物づくりの場合には、私、歴史的に見て、いわゆる城下町と言われている、それからまた産地、厳密に言うとやはり違うと思うのですよ。それからまた、何にもないところにこれから新しい産業というものが生み出されて集まる、こういうようなことがある、こういうふうに分類できるのじゃないだろうかと思います。
 そこで、今おっしゃるように、住工、そこに新しいものが割り込んでいけるというけれども、そういうのが、例えば城下町だとなかなか入りにくいけれども産地なら入りやすいとか、いろいろな問題があると思うのです。
 そういうことで、今の御指摘の点、私たちにも非常に関心がございまして、具体的な施策については御指摘の点も踏まえて今後引き続き検討してまいりたい、かように考えております。

○新藤委員 やや時間が余っておりますが、今回のこの新しい法律、ぜひとも実効あるものにしていきたいと思っております。これは政府にお願いするのではなくて、我々が地元へ帰って、こういうことで国も真剣に地域の中までおりてきて考えているんだよということを、これは我々もPRしたいと思いますし、それを仕事のベースの上に乗っけていきたいと思っております。
 そして加えて、各省との連携をうまくとっていただいて、手続だとか、もうこれは事務的なものになってしまいますが、意外とそういうことがうまくいかないと実効が上がらないわけでございまして、それは私が言わなくても、技術的な問題ですから政府の皆さんがよく御存じだと思います。
 我々も目いっぱいにお手伝いをしていきたい、こういうふうに思っておりますし、そういう意味でこの法案の成立を御期待を申し上げるところで質問とさせていただきます。ありがとうございました。