自民党「第9回 経済好循環実現委員会」<大学改革、女性活躍推進について>(2015年5月12日)

5月12日、自民党「第9回 経済好循環実現委員会」を開催しました。
資料を掲載しましたので、よろしければ是非ご覧ください。

(議 題)
「大学改革について」 橋本 和仁 東京大学大学院工学系研究科教授
(1)講演資料「イノベーションの視点からの大学改革」
(2)参考資料

「女性活躍推進について」 宮島 香澄 日本テレビ放送網株式会社解説委員
講演資料「女性の活躍推進~何が壁となっているのか~」

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(概要)
平成27年5月12日、党本部で私が委員長を務める経済好循環実現委員会を開催し、第9回有識者ヒアリングを行いました。講師には大学改革をテーマに橋本和仁 東京大学大学院工学系研究科教授、女性活躍推進をテーマに宮島香澄 日本テレビ放送網株式会社解説委員のお二人をお招きしました。 


◎橋本和仁東大教授からは「イノベーションの視点からの大学改革」と題して次のようなお話を伺いました。
○東京大学の教授、産業競争力会議の議員、総合科学技術・イノベーション会議の議員という3つの立場でお話をさせていただく。 
○まず前提として、大学には色々な使命があり、イノベーションとともに人材育成全般が重要であるとの認識であること。
その上で、イノベーションには次の二つの視点がある。
(1)政府では、産業競争力強化の観点からイノベーションが重要であると認識しており、大学としても国家の大きな使命に対して役割を果たすべきであること。
(2)現在、大学の財務状況は極めて厳しく、国費に限界があるため、大学の財源多様化が必要だが、イノベーションは大学の財源多様化の最大ツールとなること。

○今日は大学改革の為の新法を作る必要性についてお伝えしにきた。文科省でもまだ検討中であるが、その必要性について先生方にご理解いただきたい。
○第2次安倍政権発足以来、イノベーションが重要政策と位置づけられ、CSTIの司令塔機能強化、研究開発法人の橋渡し機能強化などが進められてきた。
今はイノベーションの2つの視点での大学改革を進めているところ。
(1)イノベーションの芽出し機能としての大学を活性化させる、
(2)アメリカではベンチャーがイノベーションに重要な役割を果たしているが、シリコンバレーの近くにスタンフォ-ド大学、バークレー大学があり、我が国においてもこのような大学を作る。

○企業では国費の5~7倍の研究費。その9割程度が既存技術の改良。将来に向けた非連続的な研究への投資は1~2%。このため大学の研究への期待は大きいが、企業は大学を投資先として認知していない。投資先としての魅力がない。日本の基礎研究の国際競争力は低下、若手大学教員の雇用環境も悪化している。 
○大学側の言い分は、運営費交付金が毎年1%減額され教育・インフラの劣化が激しい、次々スキームが変わる研究費の申請に研究者が追われている、などを理由とし、現状は大学経営陣、研究者、行政、社会、全てが不満を持つ状況。70年代のアメリカも同じ状況にあったが、大胆な大学改革でこれを克服、国際競争力のある大学にした。日米大学の差は株式を持てるかどうか。  
○ こうした状況を受け、産業競争力会議のWGで議論した上で、大学の機能分化、運営費交付金と競争的資金の一体的改革、グローバルで競争する世界水準の研究大学づくり、地域イノベーションの参謀となる拠点大学づくり等について昨年文科省に検討を依頼。
○今年の4月文科省から検討状況の報告。基本的な考え方として、日本を「世界で最もイノベーションに適した国」にするため、「知の創出機能」を競争的環境の下で最大化すること、「国立大学経営力戦略」(仮称)を今夏までに策定し来年からはじまる第3期中期目標期間にそれを実行すること、自ら改革する国立大学をメリハリを持って重点支援することを示した。 
○「国立大学経営力戦略」(仮称)には、運営費交付金に3つの重点支援の枠組みを新設、若手活躍組織への転換、規制改革による自己収入拡大、特定研究大学・卓越大学院・卓越研究員の創設、大学改革と競争的研究費改革の一体的改革などを盛り込む方向。
○運営費交付金の一定割合を地域活性化型、特定分野重点型に配分すべき。
○グローバル競争対応の制度として、特定研究大学、卓越大学院、卓越研究員の三つの制度が必要。 特定研究開発法人は国費を集める発想から国費を減らし、自ら稼ぐタイプへ。 
○「特定研究大学」については、①国立大学のうち世界水準の研究を行う「特定研究大学」を指定する制度を創設。②海外大学のベンチマーク化・目標設定、海外・学外関係者を含む第3社評価など厳格な学内評価システムの確立。③教育研究組織の整備は大学院設置基準等によらず柔軟に行えるように。④一定の収益事業の解禁、財産処分収入の活用、余遊金の運用、授業料設定の弾力化など財政基盤確立のための自律的運営を促す規制緩和を行う。
○特定研究大学を成功させるため、法改正が絶対に必要。例えば、東京大学で形成されたベンチャー企業は時価総額が1兆を超えるが、一切大学自体は株式を持てない。国からお金が出ない以上、自ら稼ぐしかないがそれができない。
○ 国立大学の第3期中期目標計画が来年の4月からスタートする。それまでに所要の法改正が必要。国費依存度を下げ世界と戦うシステムを作るため、新法・「国立大学改革法(仮称)」の制定をお願いしたい。 文科省にもここまで突っ込んで話していないが、ここでお話しすることで、先生方のご理解を頂きたい。 
○まとめとして、大学の国際競争力の強化のために財政基盤の確立が重要。それによって若手にとって研究職を魅力あるものとする。それが地域イノベーションをメインとする大学の活性化にもつながる。 そのための制度として特定研究大学、卓越大学院、卓越研究員などがある。 


◎宮島香澄日本テレビ放送網(株)解説委員からは「女性の活躍推進」~何が壁となっているのか~と題して、次のようなお話を伺いました。
○ 女性の活躍は日本の未来のために必要。先日示された年金や財政再建の試算でも女性の活躍を進めることが前提に。男女の分業が良かった時代もあったが、「女性に適する産業が発展」、「共働きで消費が拡大」、「多様性により企業業績がアップ」といった状況を考慮し女性の活躍が望まれる。
○M字カーブは改善傾向だが、責任ある立場にある女性はまだ少ない。補助的雇用では能力のある女性を社会に活かせない。教育投資の損失でもったいない状況。一方で、女性達の反応として、なぜ女性だけが両立しなくてはいけないのかという声も。働ける人のみ働くのではなく、皆で働くため労働法制で働き方の自由度を上げ、残業時間の上限、仕事のインターバルの確保を。政治家・官僚が先頭を切って、ワークライフバランスを実現すべき。
○24時間働ける優秀な男性社員を集めることができるマッチョ企業は、制度を整えても女性活躍の問題に真剣に取組もうとしない。このような企業では男性だけでなく家庭にいる妻の活躍をも阻害。また、配偶者の転勤・単身赴任が女性活躍の阻害要因との共通認識を持ち、アプローチを考える必要。 
○仕事継続のための両立支援は必要だが、バリバリ働くか、細く長く働くかを迫るような、現在の女性限定の支援策には問題あり。負担はあってもキャリアロスを少なくする働き方、本人の意欲を低下させない働き方を実現する必要。短期間の勤務でも正当な評価、非正規雇用の待遇改善が、母子家庭の貧困を防ぐうえでも重要。
○配偶者控除の103万円は壁ではなく階段であるが、女性への就労抑制効果は否定できず、子育て支援や結婚控除という観点への改革が必要。税制においては、例えばベビーシッターに対する税額控除も。 
○女性の昇進意欲は、今の管理職モデルに前向きでないだけであり、新しい管理職像が必要。また、子供のころの教育やリーダー経験の差も大きい。上司・親・教育関係者の意識改革が必要。 
○地方創生の観点では、若い女性が人口増減に影響を与えるため住みやすい、働きがいのある雇用環境が必須。地域間に女性雇用への意識に差があるが、女性活躍を進める地方の方が伸びていくのではないか。無償奉仕に頼ってきた地域活動の見直しも必要。
○実際子育と仕事の両立にはPTA、学童保育等こまごまとした負担が多くある。家事支援サービスなどニーズを反映しやすい企業の参入や規制緩和を進めるべき。

以上。