自民党「第6回 経済好循環実現委員会」<都市農村計画について、ドイツの「フラウンフォーハー」モデルについて>(2015年4月9日)

4月9日(木)私が委員長を務める党経済好循環実現委員会を開催し、6回目の有識者ヒアリングを行いました。講師には、後藤 春彦 早稲田大学大学院教授と、片瀬 裕文 経済産業省産業技術環境局長を講師にお招きしました。

◎後藤春彦教授からは「都市農村計画法(仮称)」と題して次のようなお話を伺いました。
・今年3月19日政府の地方分権改革会議・農村部会が「都市・農村の土地利用に係る法体系の統合など国土全体の利用のあり方を議論し中長期的利用に係る制度全般を見直すべき」との報告を出した。
・これを受けて、農地転用許可に係る事務・権限の地方への移譲を含む分権一括法案がこの3月20日閣議決定され、まさに今、日本の都市・農村の土地利用に関する法体系統合が緒についたところ。
・産業革命以降の近代都市計画は、成長と産業化を前提とし集積のメリット=「規模の経済」による論理が強く働いており、「ゾーニング」という区画された土地に均質な機能を貼り付ける手法を採用した。
・欧州各国の都市郊外・農村地域には「田園」と呼ぶに相応しい質の高い空間が広がっている。これは都市・農村の総合的計画により創造し、育まれ、守られてきた空間。「計画なくして開発なし」とされ、前提として計画的土地利用法制が存在する。
・一方わが国の都市郊外は個性や魅力に乏しく、計画性の低い雑然とした空間が広がる。都市が収縮しはじめると未利用地がまだらに散在する空間となる。
・都市郊外では都市計画法の規制が緩く、近郊農村では農振法・農地法が専ら農用地の保全を主とし、都市・農村の間には土地利用計画を進める仕組みが存在しないことが原因。
・市街化区域・農用地区域の外では用途の指定もゾーニングによる土地利用計画もないため、規制が緩いところから開発が起きて隣地に広がる。

「都市農村計画法(仮称)」を必要とする背景については、
・本来都市と農村は一元的で包括的な法体系であるべき。
・人口減少・超高齢化社会を迎え、各地域の実情に応じた主体的土地利用を行い総合的なまちづくりを推進することが望まれる。
・土地利用全体について人口フレームから経済的需要に基づいたフレームへ枠組みを変換する必要がある。
・更に、転換期にあたり企業の農業参入、農業の6次産業化、グリーンツーリズムの転換など産業競争力強化が求められている。
・これらは、地方分権の進捗、地方創生の推進、地方自治の強化と連動して進むことが望ましい。                     

◎片瀬裕文 経済産業省 産業技術環境局長からは、「ドイツのフラウンホーファーモデルとわが国のイノベーションシステム構築について」と題して次のようなお話を伺いました。
・イノベーションには基礎研究、応用研究、開発、実証、事業化の各段階それぞれに多数の主体が係わる長いプロセスが必要。
・スピントロニクス(固体中の電子が持つ電荷とスピンの両方を工学的に利用、応用する分野のこと)の具体例では、
 1957年 英国・ケビン卿が磁気抵抗効果現象を発見。
 1995年 東北大宮崎教授らがトンネル磁気抵抗効果を発見。
 2004年 産総研が酸化マグネシウム結晶素子で巨大トンネル磁気抵抗効果確認。
 2004年 産総研・キャノンアネルバの共同研究でHDD磁気ヘッドの量産化技術を開発し、2007年からテラバイト級HDD磁気ヘッドの製造装置を独占。
 2006年 産総研・東芝のMRAM(パソコン等の将来メモリ。パソコンの消費電力が9割減)共同研究開始。
 2014年 東芝で量産化決定、サムスンと一騎打ち。

・応用研究、開発・実証の段階には「死の谷」、事業化にあたっては「ダーウィンの海」(競争を勝ち抜く必要)がよこたわる。
・イノベーションの次の段階への移行は、公的研究機関による橋渡し(ドイツ型)、ベンチャー企業による橋渡し(米国型)、共同研究による橋渡し(世界共通)によって実現する。
・「フラウンフォーハー」は、
 ○好調なドイツ経済を支える「イノベーション・エコシステム」において「産学の橋渡し」機能を担う公的応用研究機関。
 ○年約2700億円の予算。うち7割が外部資金で企業の資金獲得を最も重視。
 ○ドイツ経済の屋台骨をなす中堅中小企業に対しきめ細かな研究開発サービスを提供。世界的ニッチトップ企業への成長の技術的基盤となっている。大企業の新製品開発においても重要な役割。
 ○ドイツ国内に67の研究所、職員数2万3千人。人員・予算規模は産業界のニーズ増大に対応する形で近年拡大。2012年ドイツの「最も魅力的な職場ランキングNo.1に。

・日本は、産総研、NEDOを先行的に改革し「橋渡し」機能を強化する。産総研はフラウンホーファー型に改革。NEDOの研究開発マネジメントをDARPA(米国防高等研究計画局=インターネットやGPS衛星システムの実用化に成功)型に転換。
・企業内部にはない技術を公的機関、大学やベンチャー企業等から取り込む「オープンイノベーション」を推進するため、平成27年度から企業の大学・特別試験研究機関等との共同・委託研究費について税額控除率を12%から30%に大幅拡充、研究者のクロスアポイントメント制度の導入などの強化策。
・残る課題の、基礎研究力の強化・大学改革と「死の谷」「ダーウィンの海」を乗り越えイノベーションサイクルを回していく仕組み作りとして、「オープンイノベーションアリーナ」の形成を推進する。
・すでに2010年度から筑波に産学官の研究者を結集してナノテク分野の研究を集中的に行う「つくばイノべーションアリーナ」があり、名古屋大学にも産総研・窒化物半導体研究センターを設置しGaNパワーエレクトロニクスの早期実用化を進める。
東京都北西部を中心とした地域産業支援機関「TAMA協会」の中小企業のグローバル技術連携での成功事例もある。
・地方自治体が地域の実情を正確に把握し、将来像を客観的に予測したうえで自発的、効率的に政策立案する際、その戦略立案の礎となりイノベーションサイクルを支えるインフラとして有効な「地域経済分析システム」の構築・実証を急ぐ。

以上が概要です。
よろしければ資料をご覧下さい。

-配付資料-
後藤 春彦 早稲田大学大学院教授 配付資料「都市農村計画法(仮称)」とは何か
片瀬 裕文 経済産業省産業技術環境局長 配付資料「ドイツのフラウンホーファーモデルと我が国の新たなイノベーションシステムの構築について」

開会挨拶

講演の様子

左から片瀬 裕文 経済産業省産業技術環境局長、私、後藤 春彦 早稲田大学大学院教授

委員会終了後、事務局と打合せ