自民党「第4回 経済好循環実現委員会」<AI・ロボット技術について、重介護ゼロ社会に向けて>(2015年3月26日)

3月26日(木)私が委員長を務める党の「経済好循環実現委員会」を開催し第4回有識者ヒアリングを行いました。今回はロボット技術の世界のトップランナー新井紀子国立情報科学研究所社会共有知研究センター長、山海嘉之筑波大学大学院教授・サイバニクス研究センター長・CYBERDYNE株式会社代表取締役社長/CEOのお二人をお招きしました。

新井先生からは「AI・ロボット次世代技術検討」と題して次のようなお話を伺いました。
・ロボット・AI(人工知能)の能力は、定型的環境下では最高の人間何10人分にもなるが、非定型的環境下では2歳児以下。
・たとえばアシモはデザインされた環境下では機能するが、原発等想定されていない環境下ではうまく機能せず、また、雪下ろし等もヒューマノイドでは代替困難。
・半定型的環境の中で、ロボット・AIが得意なことを発見し、ロボット・AIが働きやすい環境を整えたときに、生産性が飛躍的に向上する。
・日本は0か100かのビジネスモデル。
・一方、海外企業は「ロボット・AIはできるものはできるが何もかもは無理」という考え方で比較的単純な技術を使ったロボットを活用。たとえばアマゾンでは、倉庫内の棚をロボット化しており、積み替えをするヒトのところにロボットが自動的に寄ってくる。これによりヒトの1/3が不要に。
・ロボットの得意な分野だけに限定し最大限活用できるように、環境構造側を整備していく「ロボットバリアフリー」という考え方。ここで大事なのは、設計段階のデモではなく、検証タスクをしっかりやること。
・国立情報学研究所には「ロボットは東大に入れるか?=ロボットはさまざまなタスクを統合して処理できるか?」という研究プロジェクトがある。私大であれば80%の大学でA判定が出るまでになったが、まだまだ先は遠い。理科の問題を解くのが精いっぱいの今のAIレベルでは比較にならないほどのタスクの統合機能が必要。
・2020年に目指すべきは、自動的にビッグデータを分析し、これまで活用されていない異分野の情報を相互活用する社会。それができれば様々な社会サービスで新たな産業の創出が可能となり、さらにはそのハード・ソフト・環境三つ揃いのシステムを丸ごと途上国にインフラ輸出することも可能。
・超サイバー時代が到来する。銀行の与信審査、天気予報、薬剤師の調剤等統計情報を利用する業務はロボットの得意分野であり、仕事を奪われる可能性。そのような時代が到来した時に、どのように規制設計・社会保障制度・教育の再定義等があるべきか議論していくべき。

山海先生からは、「重介護ゼロ社会への挑戦」と題して次のようなお話を伺いました。
・サイバニックインターフェース、サイバニックデバイスを活用して、介護する人・される人を結び、重介護ゼロ社会を実現すべく挑戦している。
・脳からの電気信号を読み込み、ヒトの行動を補助する「HAL」を開発した。ヨーロッパでは保険適用済み。アメリカ、日本では薬事申請中。
・HALを使うことで「ニューロリハ」という有効的なリハビリや、介助者の負担軽減など病院・患者双方に喜ばれ、しかも公的資金の圧縮が可能。さらに医療、生活、労働各保険を全て扱えるシステムに発展させる。
・HALは世界初のロボットであり、世界的なルール整備ができていなかった。そのため、世界標準規格を定めるISOに自ら(山海先生)入り、主導してルールを策定。日本の技術を世界で標準化し輸出して産業競争力を強化する。
・HALと同様の技術で、モノを持ち上げるのにどれくらいの力が必要かを自動的に判断する「腰につけるロボット」も開発した。スーパーゼネコンの大林組で既に採用され、それを使い1日8トンもの荷物を運ぶことができる。
・また、脳卒中のリスクファクターをモニタリングする装置や、携帯カバー程度の大きさで一日中心電図が測れる機械なども開発中。 
・ビジネスパートナーとなる人材を発掘するため、海外の大学院を回っている。
・国家戦略特区に(株)CYBERDYNEも参加し、アイデアを世界に発信する予定。
・六本木ヒルズではすでに「掃除ロボット」が稼働中。自走ロボット(椅子は移動し、ブラシが清掃する)のモジュール化によるもの。
・福島では、ロボット化生産施設を準備中。
・新産業創出スパイラル実現に向けて、街づくり、都市づくりなどの実際のフィールドでロボット・ハイテクの導入現場をつくってみて、実証結果を人材育成、開発システム、法制度に反映させることが大事。

-配付資料-
【資料】新井 紀子 国立情報科学研究所社会共有知研究センター長 講演資料