週刊新藤第254号 被災地に寄り添う復興予算とするには〜衆院・行政監視委員会ようやく開催〜

開会までに40日を要して、衆議院の行政監視小委員会をようやく開催出来ました。審議前の被災地事情視察で得た予算・制度の改善点を交え、復興予算の適正化に向けた取り組みをご報告します。


◆ 開会までに40日かかった小委員会

 10月23日、前回民主党の欠席により流会となった衆議院「行政監視に関する小委員会」をようやく開催することが出来ました。
私は委員長として議事進行にあたりました。冒頭、開会までに40日もの時間がかかったことに遺憾の意を表明するとともに、被災地の皆さんの想いと増税を受け入れた国民の気持ちに沿った復興予算とするための建設的な審議を行うよう出席委員に要請をいたしました。
この小委員会は「自由質疑」という一問一答形式で行われ、政府側には大臣の出席を求めず、副大臣以下局長など実務者が答弁します。
小委員会での質疑をもとに、私が委員長を兼任する親委員会の「決算・行政監視委員会」では、予算の組み替えや増減、予算計上のルールなどを改善するよう、政府に対し法律に基づいた「勧告」を出来る強い権限を持っているのです。


◆ 被災地視察に全党が参加

 10月11日の小委員会が流会したため、私は復興予算の使われ方を現地で検証しようと被災地視察を計画いたしました。
民主党が参加しやすいように、委員会の正規視察ではなく、有志視察とし各党に呼びかけたのです。
するとそれまで協議に応じなかった民主党が、視察前日の夕方になって参加を決めてくれました。
こうして、10月17日、委員会所属の全党が参加して、宮城県内の被災地に行ってまいりました。
新幹線で一ノ関まで行き、その後は気仙沼→石巻→女川間の山中を抜けながら、車で300キロ移動するというハードな行程です。
しかし、移動の車中で各党理事達とみっちり意見交換が出来、問題意識を共有し、信頼関係を作れたことはとても良かったと思います。


◆ 仮設から本設時にさらなる予算が

 気仙沼ではまず仮設商店街を訪問し、急きょ立ち会ってくれた市長も交え関係者と意見交換をしました。
商店街の復旧はグループ補助金という制度が頼りですが、申請しても要件が整っていないとの理由で 6 割が却下され、補助を受けたい人は未だたくさん残っています。
そして市長や関係者からは、
震災後、仮設を立ち上げるのも大変だったが、ここは一時的な復旧であり、本当にお金がかかり大変なのは本設の商店街を造る時だ。場所の移転も含め、早くて数年先になるが、被災地以外に予算を使ってしまったら、本格的な復興時に予算や制度が残っているのか、とても心配だ。
との切実な指摘がありました。


◆ 私有地のかさ上げは補助対象外

 気仙沼では街全体が60cm〜 1 m地盤沈下しており復興のためには「土地のかさ上げ」が不可欠です。
しかし、現行制度では私有地のかさ上げは補助対象となりません。
これは被災地全般に言える基本的な問題であり、多くの方から支援策を求める強い要望がありました。
復興を早めるためには別途有効な対策が必要であり、委員会審議の重要なポイントになりました。


◆ 個人医療施設の再建補助が手薄

 気仙沼では、津波でさらわれた診療所を移転し再建した所にも行き、院長先生に事情を伺いました。
診療所の再建には建築費だけで約9000万円かかったそうですが、厚労省の補助単価では3000万円の評価にしかならず、補助額はその 1 / 2 、1500万円です。
診療所にはCTやMRI、内視鏡検査機などもありましたが、約5000万円かかった設備費は補助対象になりません。
院長先生からは、約 1 億 4 千万円かかった再建費への補助金は一割程度しかなく、自己負担が大きい。震災前の診療所にローンが残っていたり、高齢で銀行ローンを組みにくい場合など、再建をあきらめ他の病院の勤務医となる人が増えている。
とのことでした。
東北はもともと医療の過疎化が指摘されていましたが、震災により医療不足が深刻化しているのです。
今後の復興に際し、診療所を集合させた医療モールや、復興住宅の中に診療所を設置するなど、公的な復興事業に医療施設を盛り込み、手厚い支援が出来るような工夫をしなくてはならない、と委員会メンバーは問題点を共有しました。


◆ 捕鯨拠点整備が優先されるべき

 気仙沼から 2 時間50分かけて、牡鹿半島の先端にある石巻市の鮎川漁港を訪ねました。鮎川は日本の捕鯨拠点 5 箇所のうちの一つですが、津波で全壊した場所です。
捕鯨企業 2 社がグループ補助金を受け、クジラの解体施設がようやく完成したところでした。
しかし、未だ港の防波堤は崩れたまま、地盤沈下で道路は海に没し、ガードレールが海中に見えました。
鯨肉の保管に必要な製氷装置も壊れたままであり、漁港の復旧は全く不完全だ。今年は運良く台風が来ていないが、台風が来れば船も港も大打撃を受ける、とのことでした。
石巻捕鯨産業の加工・流通機能が復旧していない中、南氷洋の調査捕鯨に23億円もの補助金をつけることは本末転倒であることを、私たちは改めて実感しました。


◆ 街全体の基盤整備予算確保が重要

 最後に鮎川から山越えで一時間、女川町で町長から話を聞きました。
この町は70%の建物が津波によって消失した最大被災地です。
地盤沈下と大潮の影響で、現在も町内が冠水中であり、津波被害の爪痕が生々しく残っていました。
これから、土地のかさ上げ、区画整理、港湾整備など街全体の基盤整備を行うが、住宅など上物整備と合わせ、巨額の予算と長い時間がかかる。全国の皆さんにお世話になっている立場なので、復興予算の使途にコメントしづらいが、本格復興時に予算がない、制度が終わっているということだけはやめてほしい。
復興予算は年度内執行が前提で、その年に事業が終わらないと補助金を返還することになる。行方不明者の相続が終わらなければ事業執行できない場合もあり、予算繰り越し制度の弾力的運用も検討してほしい。
町長から切実な訴えがありました。


◆ 被災地に寄り添う予算とするには

 発災から一年七か月が過ぎ、被災地はいまだ苦しみが続いています。
現状の支援制度の改善や、土地のかさ上げ補助など根本的な問題解決に向けた新たな仕組みを望む声が渦巻いているのです。
23日の行政監視小委員会では、こうした現地事情も踏まえ、復興予算についての質疑を行いました。
この審議は、与野党対立の場ではなく、政府の責任追及のみの場であってもなりません。
もちろん沖縄の道路整備や北海道の刑務所予算など、不適切な便乗予算は厳しく追及いたしました。
しかし、復興予算を提出した政府だけではなく、賛成した我々国会にも責任があります。
今、重要なのは、被災地復興のために増税までして作った予算は、被災地の皆さんのために使う、というルールを確立させることです。
しかも、今後の本格復興時には、さらなる予算が求められています。
政府が 5 年で19兆円と想定した復興費用は既に17兆円を計上し、用意した財源を使い切る寸前です。
被災地以外での予算執行を早急に見直し、未執行で不適切な予算は執行停止の上、必要な予算に振り替える必要があります。
また、復興予算は被災地の実情を考慮し、悲しみに耐え大変なご苦労をされている方々に寄り添うようなものに改善するべきです。
決算・行政監視委員会は、今回の委員会審議をふまえ、政府に対し復興予算の適正化に関し改善を「勧告」するべく検討に入りました。
政府が行う仕事をチェックし、必要な改善を求めることは、国会の持つ基本的役割なのです。
私はその委員会を預かる委員長として、与えられた権能を最大限に果たすべく活動しております。


新 藤 義 孝